【第9話】僕らが暮らす惑星
朝食後、僕は、机の上に僕の身分証を置いて、マイカちゃんの横に座る。
「じゃあ、これから、通信講座を始めるね。まずは、この世界について勉強していこうか。」
「うん。私は、この世界について何も知らないんだ。だって、そういうことを勉強しようとした時に奴隷にされて、あの村にやってきた。それから、勉強する暇もなく今に至るんだ。
だからね、トモエ君。私文字の読み書きもできないんだ。」
「そうなの?じゃあ、文字の勉強もしていこうか。
それじゃあ、ここに書かれている事も読めないよね?」
「うん、まったく。だからトモエ君が読んでくれるとありがたいな?」
「わかった。それじゃあ今日のところは、検索で表示された文章を読み上げていく形でいい?文字の勉強については、後でゆっくりとやっていこう。
じゃあ、まず初めに、この世界について読んでいくね。」
「うん。お願いします。」
こうして僕が、検索した結果を読み上げていく方式になった。
「まずは、今僕たちがいるこの世界からだ。
この世界の名前は、『唯一無二の世界』という。」
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【唯一無二の世界】
すべての世界の中心に存在している世界。
各世界は、唯一無二の世界を中心に爆発的に広がっている。この影響で、唯一無二の世界に近い世界ほど時間の流れは速く、遠いほど時間の流れが遅くなっている。
また、遠ざかるほど世界の年齢が高くなり、その分文明が発達している。
ちなみに、世界の終焉とは、『流れる時間がゼロになった時を言うが、最も古い世界(世界年齢は約1,500億歳)でもまだ滅んではいない。
唯一無二の世界自体の世界年齢は約2,000億歳であり、その間数多の文明が興っては滅んでいくという歴史を繰り返している。
この世界の生い立ちについては、『創造神話』によって知る事ができる。
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「トモエ君?」
「何?」
「『創造神話』って何?」
「ちょっと待ってね。・・・これだな。じゃあ読むね。」
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【創造神話】
聖魔創世記録年鑑と呼ばれるモノがある。
世界のすべての事象を記録し、保存しているモノ。その記録に触れる事が出来るのは、一部神に選ばれた者のみとされている。
太古の昔。
そう。
神話の時代よりも遥か昔、数多に存在する世界の1つが生まれ落ちた。
何もない虚無の世界に、世界の始祖となる者が生れ落ちる。
このモノが誰だかは、聖魔創世記録年鑑にも記されていない。そもそも、この始祖たるモノが聖魔創世記録年鑑を創り出したため、あえて記録に記さなかったからだ。
ある時、始祖は自身の力の一部を分け与え、虚無からまず生命の源である『空間』が創造され、創り出された空間を連続で複写・配置した事により『時間』の概念が創造された。
空間は時間の経過と共に摩擦を生みその摩擦がいつしか引き寄せられる力『重力』を創り出す。重力に引き寄せられるように、遍く生命の根源である力が創造され、何時しかそれは2つの大きな流れ『天脈』と『地脈』となって世界を循環しだす。
天脈と地脈は、数多の生命を創り出していく。
世界の中心にありて、すべての世界の力を微量に吸収し続ける世界があった。
すべての世界から力を分け与えられたその世界は、いつしか『唯一不変であり、すべてを創造する混沌の世界』という意味で『唯一無二の世界』と呼ばれるようになる。
そんな世界にも、生命は誕生する。
それは、世界の理であり、誰もが侵すことのできない事象でもある。
『唯一無二の世界』では、天脈と地脈が、星の中で融合・分離していくうちに、7つの力『光・闇・風・水・火・地・無』の概念が創造された。その力はいつしか魔素となり、魔力の元なって世界を循環する。そして、この星に創造され落ちた生命は、遍く魔素を取り込み進化して(育って)いく。
世界に生まれ落ちた数多の生命体によって、唯一無二の世界の大地に文明が興き、そして滅んでいく。その繰り返しが幾億年続き、現在の世界では、魔法化学文明が興っている。
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「難しい言葉で書かれていたけれど、意味は分かった?」
「ん~~~。ぜんぜん!!トモエ君は?」
「僕も意味は解らないね。まあ、神話なんて代物は、大体こんなもんだ。地球にある神話でも、こんな感じだったろう?」
「そうだったかな?私は、あまりそこら辺の事は嗜んでいなかったからね。」
「まあ別に、『こんな感じでこの世界は生まれました』って、言っているから、あまり詳しく知らなくても生きていけるよ。
じゃあ、次は、今僕たちが暮らしているこの星の事だな。」
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【第3惑星ネオアース】
この世界には、1つの恒星を回る10個の惑星と、その惑星を回る衛星しか存在していない。惑星の1つ1つ、各衛星(発見されているモノに限る)には、それぞれ名前が付けられている(詳細は別項目)。そのうち、生命体が存在している惑星は、第3惑星『ネオアース』のみとなる。
天空に瞬く星々は、この世界に存在する惑星や衛星以外は、すべてほかの世界が、世界間を隔てる壁(空間)を超えて瞬いて見えるだけであり、召喚術式を以ってしか壁を超える事はできない。
1つ。召喚術式は、神自らが対象を指定して召喚する『神威召喚』。
1つ。神の力借りて特例条件下の元、対象を指定して召喚する『勇者召喚』。
1つ。対象を指定せず、あらゆる世界から召喚を試みる『無条件招換』の3つがある。
どの召喚方式を取っても、この世界から見れば、観測不可能な異世界からの召喚のため、『どの世界から召喚されてきた』のかを知ることはできない。つまり、一度壁を超えてほかの世界に迷い込んだ場合は、元の世界の座標(厳密に言えば、元の世界の座標と、住んでいた惑星の座標)が解らないため戻す事ができない。
そのため二度と元の世界の戻る事はできない。
《ネオアースの詳細》
(1)赤道上の”直径”は約4万㎞
(2)海6:陸地4の割合で地表面に存在
(3)陸地の約60%は未開拓地
(4)地軸が23.4度ずれているため、緯度によっては四季が存在している
(5)赤道上に環を持っており、衛星は12個(大きさ順にゼウス・ヘーラー・ポセイドン・デーメーテール・ヘスティアー・アポロン・アレス・ヘルメス・ヘーパイストス・アテーナ・アプロディーテ・アルテミス)ある。それぞれの公転周期は20~50日。
《大陸の名称》
=ウストジャポネス大陸=
日本列島を地質学的に分類する『フォッサマグナ』の西縁『糸魚川静岡構造線』の西側の本州のような形状をしている。ただし、全体的に縦長(南北)に延ばされたような形をしている。大陸中央部を横断する山脈の南北では、気候が大幅に異なっている。
=エストジャポネス大陸=
日本列島を地質学的に分類する『フォッサマグナ』の西縁『糸魚川静岡構造線』の東側の本州のような形状をしている。ただし、全体的に横長(東西)に伸ばされたような形をしている。大陸のほとんどの地域が北半球に属しており、また南北に長いため、大陸内での気候の変化が激しい。
=フォースアカディア大陸=
四国のような形状をしている大陸。ウストジャポネス大陸都は、セテゥー内海で隔てられている。大陸全体が、熱帯雨林に覆われている。
=ナインカレッジ大陸=
九州のような形状をしている大陸。大陸中央部に赤道が走っているため、アフリカ大陸のように赤道付近は熱帯雨林が広がり、その南北に砂漠が広がっている。
=ノスシアス大陸=
北海道のような形状をした大陸。ちょうど日本海の位置にある。ただし、全体的に横長(東西)に伸ばされたような形をしている北半球最大の大陸でもある(大陸の広さは、オーストラリア大陸とほぼ同じ)。
=セテゥー島嶼群=
セテゥー内海に浮かぶ島嶼の総称。その島の1つ1つが国家として独立している。
=南海洋島嶼群=
南海洋(北部4大陸付近)に浮かぶ島嶼の総称。その島の1つ1つが国家として独立している。
=チャイコリアス大陸=
南半球にあるネオアース最大の大陸。
地球で言えば、中国大陸と朝鮮半島、ベトナムの国土を切り取ったような形をしている。
全陸地の約50%を占めている大陸(大陸の広さは、ユーラシア大陸とほぼ同じ)。大陸中央部に南極点があることから、大陸面積の約6割が荒れ地と砂漠、氷結地となっている。
《海洋の名称》
=北洋海=
北極点を中心とした北半球最大級の大洋。北洋海全体の約70%は氷で覆われており、船での通過はできない。
=ジャポネス海=
エストジャポネス大陸・フォースアカディア大陸・ナインカレッジ大陸・ノスシアス大陸に囲まれている海。
=パジリク大洋=
エストジャポネス大陸と大陸・ノスシアス大陸に囲まれている北半球最大規模の海洋。
=フォッサマグ大洋=
『糸魚川静岡構造線』の走る盆地や川などが巨大化したような形状の海。そのため、両海岸付近は切り立った断崖絶壁な部分が多い。海峡のように南北に走っており、最も広い部分で約300㎞、狭い部分で200㎞ある(平均幅は約250㎞)。
=セテゥー内海=
ウストジャポネス大陸とフォースアカディア大陸の間に広がる海で、無数の島嶼『セテゥー島嶼群』が浮かんでいる。
=南海洋=
北部4大陸とチャイコリアス大陸とを隔てている大洋で、世界最大級を誇っている。北部4大陸付近には無数の島嶼が存在している。
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「これが、この惑星に関する事柄だな。暦関係とかはまだ話していないが、一応この惑星内の大陸の関連はこんなものだ。」
僕は、いったん話を区切って、マイカちゃんに話していく。あまり一気に詰め込んでも、覚えれるものではない。現に、マイカちゃんは、少し沸騰してきている。
「やっぱり、ただ聞いているだけでは頭に入らないよ。板書しながら聞く学校の授業って、理にかなっていたんだね。」
「そうだな。僕はまだ『書かれた文字を読んでいる』から、頭に入りやすいけど、マイカちゃんはただ聞いているだけだからね。
少し休憩を挟んだら、とりあえず文字の勉強でもするか?」
「そうだね。文字の読み書きをしながら、この世界について勉強しようかな。そうすれば、読み書きの練習もついでにできるからね。
所で、今私たちがいるこの場所。さっきトモエ君が話してくれた大陸のどこらへんなの?」
「ああ。その事か。実は、僕にも、ここが何処なのかも解らないんだ。このスマフォの中には地図検索アプリが入っていないしね。僕が持つスキルでも、ここから最寄りの町が『パリダカ』っだってことだけで、何処の国にその町が属しているのかも解らないんだ。現地に行けば解ると思うけどね。
まあ、あまりそこら辺がわかっていても、異世界生活は面白くないから、別に構わないんだけどね。」
「トモエ君って、昔からそうだよね。」
マイカちゃんの言葉に、少し苦笑をする僕。まあ、昔からそうなので、何も言い返せれない。
「じゃあ、10分くらい休憩を入れたら、簡単な文字から勉強していこうか。」
「はい。トモエ先生。よろしくお願いします。」




