身体は子供、場所は異世界
ここはどこだ?
気が付いた時、俺は雑踏の中に立っていた。
石畳みの広い道のど真ん中だ。
周りを行きかうのは見慣れない服を着た、やたら背に高い外国人ばかり。
なんだか歴史の教科書に載ってた中世の人々みたいだ。
ただ教科書の絵と違って、やたらと刺青をしている人が多い。
ほとんどの人は手の甲に刺青が見えるし、腕を剥き出しにしている人の中にはその腕にびっしりと刺青をしている人までいる。
他にも顔や足に刺青をしている人も、うわっ、あの人顔中に刺青してるよ。なんか怖い顔してるし。
じっと見つめすぎたのか、その人は不快そうな顔をしてこちらを睨んだ。
「おい坊主、そんな所にぼけっと突っ立ていると往来の邪魔だ。遊ぶなら他所に行け」
「あっ、ごめんなさい」
反射的に謝って道の端に寄った。
確かに道が広いといっても馬車なんかも通ってるんだ、邪魔にもなるな。
しかし道の端に寄ったものの他所に行きようがない。
あらためて周りを見渡しても見覚えのない建物が並んでいる。
日本でないのは確かだろうけど。
そんな事を考えながらぼーっとしていたら怖い顔の人が近づいてきた。
「もしかしてお前迷子か?」
「ええ、まあどうもそうみたいです」
大の大人が迷子とか恥ずかしいので、愛想笑いをして誤魔化してみる。
「そうか、きつく言ってすまなかったな」
おや、顔が怖いだけで案外優しい人なのかもしれない。
「あの、ここはどこでしょうか?
できれば交番の場所を教えてもらえると助かるのですが」
「コウバン?衛兵の詰所のことか?それなら俺が連れて行ってやろう。
ここは商売街と住居街の間だが、坊主はどっちに住んでる?」
おお、やっぱり親切な人だ。人間見かけで判断するのは良くないな。
見ず知らずの人にも優しく・・・
待てよ、俺も似たような事をした覚えがあるぞ。
雪の降る並木道で迷子の少年に声を掛けて、それから・・・
ババッ。
背中に手を回して触ってみるがどこも痛くない。刺された痕もなさそうだ。
確かにあの時致命傷を負ったと思ったのにどういうわけだ?
というかこの刺青は何だ?
俺は左手に見たことのない刺青があるのに気が付いた。
周りを歩く人たちや、目の前で心配そうにこちらを見ている男がしている刺青と同じ様な紋様の刺青だ。
着ている服も同じ様な服を着ているし。
手足もなんだか可愛らしく小さい。
もしかしてこれは、俺の身体が俺の身体じゃないんじゃないか。
やたら背の高い人ばかりいるんじゃなくて、俺の身長が低くて。
この男が俺の事を坊主と呼んで心配してくるのも、俺が本当に子供の姿をしていて。
俺は今あの少年の身体なんだとしたら辻褄があう。
ということはここがどこなのかも検討がつく。
「おい、大丈夫か坊主?急に体中をまさぐり出して、どこか痛いのか?それとも落し物でもしたのか?」
「そんな事より聞きたいことがある!」
「お、おう。何だ」
「ここは何という世界の何という国だ?!」
「そこまで分からないほど迷子なのか。ここは魔紋の大地アヴァロンの西方諸国が一つオベイロンだぞ」
やっぱりそうか。
あの少年は言っていた。
「異世界で国を作れ」と「今の身体では行けないから代わりに自分の身体をやる」と。
つまりこれは。
「異世界転生キター!」
こうして俺の異世界で理想の国を作る冒険の日々が幕を開けたのだった。