サンタは今宵何を思うのか
「なるほど。お前は本当にマフラーをつけた女の子に会ったのか」
腕を組んで俺の話を聞いてくれた宮徒さんに向け、小さくうなずく。2人しかいないロッカー室には、重い空気が流れている。ちなみに、俺も宮徒さんも私服に着替えた後だ。
「優奈って言ってたんですけど…あの子が幽霊だなんて」
そうだな、と宮徒さんは顎に手をあて考え込む。考えているのは宮徒さんだけ。俺は、優奈が死んでいたことを理解しようとするだけで精一杯だ。
「そういや俺、ここらへんで死んじまった子知ってるぞ」
「誰?!どんな子ですかっ!」
思わず強い口調になってしまう。宮徒さんの表情に影が落ちた。もしかして、知り合いだったのかな。
「いや、知り合いってほどでもないんだが…常連客だったんだよ」
そう言って話を切りだした。
「クリスマスの日に、屋上から落ちて死んじまったんだよ。両親の仕事が上手くいってなくてな。プレゼントをあげられなかったって母親が大泣きしていたから、よく覚えてるよ」
『捕まえようとしたんだけど、失敗しちゃったんだ~』
『ごめんねって笑うだけで』
『あまり上手くいってないみたい』
宮徒さんの説明と、優奈の話が一致していく。結局、俺も優奈のお母さんも、後悔することしかできない。ぐっと両手に力が入る。
偽物のサンタにさえ、なれなかった。
「…宮徒さん、俺、来年もこのバイト来ていいですか」
「ん?俺は助かるからいいけどな。なんでまた?辛いって嘆いてたよな」
その質問を受け、口角が上がっていくのを感じる。きっと、俺は今笑っているんだろう。
来年、またサンタがやってくるこの日。優奈はきっとまた会いにやって来るはずだ。そうだ、来年はもっとちゃんとした物を渡してやろう。俺の手作りなんかじゃなくて、優奈の欲しい物を。
俺は顔を上げ、はっきりとした声で言った。
「俺はあの子だけの、優奈だけのサンタですから」
25日に日にちが変わり、雪雲の隙間から日が差し込んだ。街を、マンションを、花束を、日差しは明るく照らしていく。昨日までなかったウサギの人形も同じように照らされていた。ウサギの右手の方には、カードが1枚握らされている。
「メリークリスマス、優奈!また来年、あの場所で」




