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サンタは今宵何を知るのか

「なあ、お母さんはまだ来ないのか?心配とかしてるんじゃないか?」

「いいから!1つ教えて」

 優奈に連れていかれたカフェは、店内を小さいライトで控えめに照らす、雰囲気の良い店だ。外は都会の中としては珍しく、ツタに少し覆われていたり、花が植えてあったりと良い意味で目立っている。

 深夜になったせいか、店内に人はいない。俺たちは右端の席に座り、話を続けている。

 先ほどから気になっていた優奈の母さんについて聞くと、優奈の表情が一転して、真面目な顔になった。そのさっきまでとは違う感じに、思わず緊張して唾を飲み込む。

「サンタさんって、何者なの?」

「え?…うーん、子供に夢を与える人、かな」

ちょっとカッコつけすぎたかな、と優奈の表情をのぞき込むが、一切笑っていなかった。

「なら、ならどうして、サンタさんは私にだけ夢をくれなかったの?」

「え?」

「サンタさんは、1回も私の所にだけ来てくれなかった!他の子たちの所には来たのに!なんで私だけ!お母さんに聞いても答えてくれなかった!ごめんねって、悲しそうに言うだけで…」

 大きな瞳から幾つも涙をこぼし、震える声で叫ぶ優奈に、俺は何も言えなかった。悲痛な叫びが静かな店内に響き渡る。

「サンタさんのあなたなら分かるでしょ?捕まえようとしてもダメだった。だからあなたに聞くしかないの!答えてよ!」

 そう言って押し殺した声で泣く優奈に、俺はたった1つ浮かんだ答えへの質問をした。小さい声しか、出せなかった。

「…優奈の両親は、何してる人?」

「え…」

 顔を上げた優奈の顔は、涙でぬれている。なのに、両親の話になると、少しだけ笑顔を浮かべた。

「2人とも自分で店を出してるんだけど、それほど売れてないみたい。でもね、お母さんもお父さんも優しいんだよ!あんまり贅沢は出来ないけど、家族でいると嬉しいの!」

 そんな優奈の笑顔に、俺は応えられなかった。優奈からの質問の答えはもう出ている。「両親の稼ぎが少なくて、プレゼントを買えなかったから」。サンタなんて元からいないんだと、言ってしまえばいい。

 でも、目の前で笑っている少女に、そんな事が言えるだろうか?サンタはいると信じ、両親を愛する少女に、2人のせいだと言えるだろうか?

 俺は、言えない。言える筈もなかった。

「…ごめん。本当に、ごめん」

 だから、謝る事しかできなかった。真実も嘘も言えずに、優奈の想いを一身に受ける事しかできない。

「何でよ、何で謝るの…?」

 下を向いて泣き崩れる優奈に、何か言おうとしても言葉が出てこない。この十何年、どれだけ寂しかったんだろう。毎年当たり前にプレゼントをもらい続けていた俺には分からない。分かろうとしても、表面だけの理解になってしまいそうで嫌だった。

 プレゼントという夢を貰えないで、一体どれだけー

「…あっ」

 その時、1つだけアイデアが生まれた。あれなら。あれなら、女子が受け取っても困らないと思う。我ながらいいアイデアだ。

「なあ、優奈!」

「…何?」

「俺と会ったケーキ屋に来てくれないか?ちょっと準備があるから俺は先に行くけど、後から来てくれ!」

 俺の提案に優奈がゆっくりと、しかしはっきりと首を縦に振ったのを見て、俺は立ち上がる。目指すはケーキ屋。カフェを出た後、俺は勢いよく地面を蹴った。


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