狂う
狂う
それは、学校の昼休みのこと。
男女二人が屋上で会話をしている。
死について。
人間について。
そして。
許されない行為について。
語っている。
「こんにちわ」
「ああ、後輩君」
「先輩」
「何?」
「どうして、屋上でまるで死にたそうな顔で柵もないギリギリのラインでその、危うしい場所をキープしているんですか?」
「はッは、それはね後輩君。・・・自殺するに決まっているからじゃないかな」
「決まっている、ですか?」
「そう、決まっている」
「へえ、僕、はじめて自殺する光景を見ているかもしれません」
「そうかもしれないね。後輩君には、殺し、皆殺し、半殺し、ぐらいしか、わたし、見せていないもんね」
「ええ。あッ、でも、あれも見せてもらいましたよ」
「・・・・・・?」
「虐めも見せてもらいましたよ」
「ああ。はッは、あれは、見せたっていう範疇に入らないわ。でも、傑作であったのは確かだったけれど」
「僕。感動、しましたもん」
「そう。わたしも感動したけれど、でも、涙はでなかったわね。やっぱり、私は後輩君と違って、まともな人間、かもしれないわね」
「ご冗談を、先輩」
「ふふ、冗談よ。後輩君」
「はい」
「まあ。でも。私より後輩君のほうが、いささか常軌を逸している、と、思うけれどね」
「そうですかね」
「ええ、そうよ。あの時だって」
「あの時?」
「ほら、貴方が母親を殺したあの時よ」
「・・・・・・母親ですか。はッは、先輩。僕には親なんていませんよ、特に母親はとくに、生まれてから、一度もいません」
「そうだったかしらね」
「そうですよ。そうなんですよ・・・だって、だってね。だってだってだって、だって・・・」
「おやおや」
「だって、僕の母親は・・・あー、ああああ。ひゃはッははははははははははは、僕の母親はね。だって、人殺しですもん。僕を殺そうと、包丁、で突き刺したり、中指、を切り落としたり、耳たぶをそり落としたり、まったく、まったくまったくまったく、まったくもって僕の母親は、この世にはいませんよ」
「狂う後輩君もいいけれど、しかし、趣旨を間違えないでね。今現在、私は自殺をする場所にいるのだから、ね」
「・・・ひゃはははっは。そうでしたね」
「はッは、でも、素敵ね。後輩君」
「有難うございます」
「いえいえ」
「・・・おや? チャイムですか」
「そうね、一回目のチャイムね、じゃ、これをみて、後輩君は帰りなさい」
「はい、そのつもりです」
「はッははははははははははは」
「ひゃははははははははははは」
「・・・・・・終らなくちゃ、はやく、こんな世界終わらなくちゃ」
「来た」
「ああ、あれが、あれになるんですね」
「・・・どいてください」
「失礼」
「先輩、お手を」
「あら、紳士的ね」
「嫌だ、あーああああああああ、嫌だ、終らなくちゃ、終らなくちゃ。終焉にしなくちゃぼく、ぼく、もう駄目」
「ふふ」
「先輩笑って、どうしました?」
「いや、いやね。多分、後輩君の思う想像通りの、死、はお見せできないかもしれないわね」
「・・・そうですか。そりゃ、残念です」
「残念ね、わたしも残念よ」
「怖い、怖い怖い恐怖、落ちることできない。やっぱり、死にたくない。生きたい。そうだ、そうだよ、イジメっ子を殺せば、はッははは、一件落着じゃないか。はッは、じゃ、いいや。自殺なんて、馬鹿らしいよ」
「ふふ」
「僕は、いき・・・る?」
彼女は彼の背中を静かに押した。
その光景をみた、後輩君、は思い出した。
「ああ、殺しね」
彼女は彼をぶっ殺した。




