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僕らの未来に正義は無い  作者: 智恵理陀
第三部『生徒会選挙編』:第四章
85/90

四ノ陸

 立会演説会はついに明日。

 今日がラストの選挙活動だ。

 そして昨日から学校で噂されているのは、裏萩さんを襲撃した人達が名乗り出たという事。

 その人達については公表されてはいないが、昨日朝から授業に出なかった生徒が何人かおり、その生徒ではないかとある程度特定されていた。

 そんでもって詳細は音々子さんが調査済み。

 あの人は本当に万能で頼りになる。

 裏萩さんに届いた脅迫状の件は、襲撃者が名乗り出た事によって効力は失われつつある。

 裏萩さんは冷静になって選挙に集中するだろうね。

 彪光はまた何か裏萩さんに仕掛けて天生ちゃんとの接触の機会をうかがうつもりか。

 選挙は明日で終わりだ、この際選挙の終わりと同時に僕達が襲撃について調べるのもやめにしたほうがいいんじゃないかと思ってきた。

「襲撃者と生天目天生との接点は?」

「まったくありませんね……」

 予想通りだ。

 襲撃者をいくら調べても天生ちゃんとの接点は絶対に浮かび上がるはずが無い。僕ならそういう風にするし、何より襲撃者を選ぶ上で自身との接点がある人物は避けるはず。

 僕達は音々子さんのパソコンのモニタに釘付けとなって、資料を流し読んでいった。

「一つ襲撃者の共通点があるとすれば、皆が優秀な生徒だという事ですかね」

「この学園にいる不良は一人も使ってない、と。ふぅん……?」

 彪光は扇子を広げて、

「不良との関わりは避けた?」

「でもどうしてそんな事を?」

「さあ、私に言われても」

 自分にとって使いやすい生徒を選んだ、とか?

 襲撃者がわざわざ名乗り出るってのも妙な話だが、強引にこの事件を終わりにするべく皆を名乗りださせたとも考えられる。

 そのためには弱みか、何かしら言う事を聞かせるものが必要だ。

 ……相手の弱みを握り、襲撃させて最後は名乗りださせる。

 この行為が何を引き起こすか。

 調べる側は先ず、困惑を引き起こすね。

「それぞれ裏萩さんへの、そして選挙の方針についての不満があったようで一致団結して襲撃を行ったらしいです」

「そういえばなんか詳しくまとめてありますけど、どうやって調べたんです?」

 画面には文字がびっしり、一人一人の発言なども詳しく書かれていた。

「世の中には盗聴器というものがあるのよ」

「流石よ音々子」

 流石じゃないんだけど!

「ありがとうございます彪光様」

 誇らしい笑顔を浮かべないでよ音々子さん。

「それでですね、二年の本間桃香が今回の件の主犯らしくて、怪我をさせたのも襲撃を企てたのも自分だと言っているらしいです」

「……主犯がそんな安々と白状するものかしら。あの時は辺りは暗くて誰がどうやったのかも解らないしきぐるみをかぶってたんだから誰がやったかは解らないのに」

「確かにそうだよね」

「ショージキモノネー、イー人ヨー」

「そいつに私は怪我させられたの」

「ホワッ!? KILLネー!」

 KILLやめて。

「この件は彼女の処分で収まりそうですね」

「腑に落ちないわ」

 そうだね。

 少なくとも僕達や虎善さんは納得しない、がしかしこれ以上探ろうにももはや行き止まりにたどり着いてしまっている。

 しかも偽者かもしれない答えを与えられて、このまま終わる雰囲気だ。

 これは止められない。

 選挙も明日で終わり、丁度よく、都合よくこの事件も終わる。

 まったく、最悪な気分だ。

 惜しいとこまではいっている、後一押しが欲しいけど相手は絶対にヘマをしない。


 ……相手?


 ……ああ。

 僕は今、天生ちゃんを思い浮かべてた。

 無意識にこの襲撃事件の黒幕は彼女だと、どうしてか決めつけていた。

 彼女かはまだ解らないのに。

「生天目天生もこれ以上は動かないでしょうね」

「彼女の監視をしておくのも可能ですが」

「一応、お願い」

 もし今後やり取りをするとすれば直接ではなく携帯電話とか、かな。

 携帯電話を奪おうって提案はやめておく、経験からしてろくな事にならないからね。

 それに証拠を残してはおかないと思う。

 これにてこの襲撃事件はお手上げ状態で、襲撃者も名乗り出て終了です。

 脳内アナウンスは僕にそう語りかけた。

「じゃあ、選挙活動しましょうか」

 というわけで。

 次は選挙準備室での活動。

 裏サークルと選挙活動を同時に行うのは大変だ。

 隠し部屋から出るのでさえ一苦労だよ。

「裏萩には選挙に集中してもらいましょ」

「そうだね、それがいい」

 脅迫状を出して嗾けたりして裏萩さんが取り乱したら大変だ。

 もう立会演説会のためにも、この選挙を無事に終えられるためにも僕達から何かしらの手出しをするのは無い。

「裏萩、今日は最後の活動よ。明日のためにも気合入れなさい」

「う、うん! 頑張るわ!」

 彼女が広場での演説を行っている間、新蔵とアンナは一応警護をすべく周囲で待機。

 生徒会の人達も周囲にいたので誰かが襲撃しようものならすぐにでも捕まるが、襲撃の心配はもう無い。

 犯人は捕まった、今のところ事件の結果はこうなのだ。

「是非に私、裏萩智瀬に清き一票をお願いします!」

 裏萩さんもはきはきとした勢いのある口調で調子は良さそうだ。

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