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僕らの未来に正義は無い  作者: 智恵理陀
第三部『生徒会選挙編』:第一章
62/90

一ノ伍

「よお」

 軽々と机を運ぶ新蔵が通りかかった、力仕事をするならば彼ほど頼りになる人物はいないね。

「兄者ー!」

 アンナは何をしてる最中? でも場の雰囲気を明るくするには彼女ほど適した人物はいないね。

「やあやあ、お疲れ様」

 数人の中に裏萩さんを確認するや彪光はすぐに合流。

 既に裏萩さんにスカウトされた生徒らが作ったビラ、彪光は早速読んでみるも即座にそれを丸めてゴミ箱に捨てる。

「え、ちょ、ちょっと!」

 ビラ作成に関わったと思われる生徒が思わず声をあげるも、彪光は睨みつけて黙らせる。

「選挙に勝つならビラも気合を入れないと」

「そ、そうね!」

 彪光の味方として裏萩さんがフォローに入られちゃあ、生徒らも文句は言えず。

 僕と新蔵は机を並べたりしつつ話し合いをちゃっかり聞くとした。

「マニフェストは大きな文字で、着色も明るめなのがいいわ。フォントも全部同じでは工夫が無く退屈、目に留められない。どこを強調したいのかをはっきりさせるためにもフォントは大事よ」

 的確な指示だね。

 それにいつの間にかいた音々子さんは持参したノートパソコンですぐに事前に作っていたのであろうビラの見本を作成して皆に見せていた。手際の良さはこの中では一番の模様だ。

 おお……と文句を言おうとした生徒は素直に従っていた。僕も見たいな。

 それほどまでに出来のいいビラなのか、ここからではパソコンの画面が覗けなくて見れない。

「manifest!」

 アンナは僕らに駆け寄るやその一言。

 外国人ならではの僕には真似できないような発音でマニフェストと発言。

「ナイスナイス」

「Manifest~!」

「イエスイエス」

 二人とも仲が良いのは分かったからマニフェストって言葉だけで盛り上がらないで。

「Manifest! Manifest!」

 あとマニフェストをジャブする毎に言わないでよ、用途がまったく違うよ。

 机を並べ終えて、椅子も配置して着席。

 それにしても選挙協力者は予想よりも少なく八人、僕らがいなかったら三人でやってくつもりだったのか?

 選挙はこれくらいの人数で大丈夫なのかな。

「選挙活動場所の登録は済ませた?」

「あっ、まだでした……」

「選挙勝つ気あるの? いくら有力視されていても準備がおろそかでは勝てないわよ? わかってるの?」

「はい……ごめんなさい」

「登録用紙を用意して急いで活動できそうな場所を探しに行くわよ」

 しょんぼりと縮こまる裏萩さんは恐る恐るポケットから登録用紙を取り出した。

「選挙の規約はちゃんと読んだ?」

「えっと……はい!」

 流し読みしたんじゃないの? と問いたくなる。

 妙な間が気になるよ裏萩さん。

 ここに残る人は音々子の指示に従ってビラの用意や他の立候補者の情報、資料整理をと彪光は言うので僕はちゃっかり彪光の後ろをついていった。

 なんかビラとか資料とか整理するの面倒そうなので、それよりも面白そうなものが見れるかもしれない彪光の後ろを密かについていくほうがいい。

 数メートルついていったところで、

「何してるの?」

 普通に彪光に気づかれたけど。

「……護衛」

「馬鹿なの?」

「すみません」

 ため息をつかれた。

 僕は彪光の隣へと移動し一緒に歩行、別についていっても構わないだろう? と彼女に笑顔を見せると再びため息をつかれた。悲しいなあ。

「君達って付き合ってるの?」

 僕達を見て何を思ったのか、裏萩さんはそんな質問を投げかけた。

「は? つ、付き合ってないわよ!」

「妻です」

「何言ってるのよ馬鹿!」

「嫁です」

「黙れアホ!」

「人生の伴侶です」

「口を閉じろこのクズが!」

 彪光の反応はすごく面白い、まだまだいじりたいけど開いていた扇子を閉じて僕に向けてきたので身の危険を感じて僕は口を閉じた。

 笑顔は絶やさず、彪光を見つめる。

「付き合ってないにしてはお似合いのカップルって雰囲気出てるわ」

「でしょー?」

 僕はそう言った途端に頬に扇子がめり込んだ。

「痛い痛い痛いっ」

「こいつはね、私の飼い犬よ」

「わんっ!?」

 それはおかしくない?

「なるほどぉ」

「なるほどぉ……じゃなくてですね!」

 困ったもんだ、僕の地位の向上を検討していただきたい。

 それから彪光が向かった先は校門、選挙活動場所として既に登録したと思われる生徒達が校門の左右に立って話し合いをしていた。

 左右から感じられる緊張感、立候補者と思われる生徒は特に視線を交差させていた。

「やっぱりここはもう無理ね。違う場所を探しましょう」

「さっき通った広場は?」

「誰かいたような気がしたけど、一応行ってみましょう」

 広場は人の通りが激しくて選挙活動するなら校門の次にいい場所だ。

 当然誰かが登録してるとは思ったが、校門にいる生徒のように選挙の話し合いをしている生徒はいなかった気がした。

 広場に行ってみると、やはりそれは気のせいではなく、しかし二人の男女がお互いに広場の中心で睨み合っていた。

「立候補者しら?」

「うん、そうよ」

 上着は袖を通さず肩にかけ両腕を組む威圧感たっぷりの男子生徒。

 額には鉢巻き、古の一文字。

 おそらくは、

「彼が古戦谷君」

 ですよね、分かりやすい。

 そして彼と向かい合ってなにやら独特な――よくある特撮ものの左手を右斜め上に上げたポージングをしている女子生徒。

「彼女が浜角さん」

 そうですか、とても個性的な人のようですね。

 浜角さんの首に巻いてる薄いマフラーは風に靡かれているもよく見れば近くで団扇を使って扇いでいる生徒が一人。

 この二人が裏萩さんの他に有力視されている生徒二人か。

 様子見すべく近づかずじっと見ていると彼女は更にポージングを変えて、これまた特撮もののヒーローが戦うような姿勢に。

 周囲を歩く生徒達の視線なんてまったく気にせずに、彼女は古戦谷君へ威嚇。

 二人は何故にここで対立しているのだろう。


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