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僕らの未来に正義は無い  作者: 智恵理陀
第一部『継承編』:第二章
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二ノ壱

 一週間の経過と共に学校はいつもよりも騒がしくなった。

 あたりを見回せばそれはすぐに解る、生徒会選挙が始まったからだ。

 とはいえ僕らにとって生徒会という存在は今や敵、どの生徒会長候補が好感持てるとかあの人が生徒会長になったらこの学校は良くなるなとかいう思考を持ち合わせたとしても意味など無い。

 現在は四月中旬、五月下旬には二年と三年の生徒会長が選ばれてその後に一年の生徒会長を決めるらしい。

 二年、三年の生徒会長候補をまったく知らない一年生にどれほど自分らの情熱と応援したくなる公約を訴えて、一年の票をどれほど集められるかが重要だとか。

 最近はよく生徒会長になったら何々をするとか、何々な学校を目指すと立派な文章が綴られた活動内容のビラを受け取ったのが度々あった。

 近くにはマイク片手に訴える候補者がいたりでどんな顔ぶれかと見てみると中々の美人揃い。

 まあそれはいいとして、学年毎に一人の生徒会長ね……。

 確かに人数の多い学校ではこういう方法は有効かもしれない。学年毎に生徒会長がいて、仕事を分担していけば、ぱっと見て人、人、人の群を成すマンモス高でさえなんとかなるのだろうね。

 気になるのは総生徒会長とかいう存在で、それは既に決められているらしいが公表されていないので誰なのかは解らない。

 担任曰く、全ての生徒会長が決定してから総生徒会長も公表されるため、少なくとも後一ヶ月以上は解らないって事だ。

 身近に総生徒会長がいて気づかないうちに隠し部屋を見られてたりしたら困るなあ。

 隠し部屋に行くのならば警戒して行かねば。

 といっても第二資料室へ入るのも、窓の鍵を開けておいて外から入れるようにしたので見つかる可能性も低くなったがね。

 茂みに脚立を隠しておいていつでも脚立を使ってすばやく窓から侵入可能、脚立には紐を括りつけていて侵入後は紐を引っ張って回収。

 更には周囲にセンサーを仕掛けており、人が探知されたときは壁に設置しておいた注意して探さなければ見つけられないくらいの小さな装置が赤くなり、人気が無ければ青、念には念をってやつ。

 これも彪光の案で何をやるにしても抜け目が無い。

 さてさて、この一週間はサークルを手に入れたにも関わらず他のサークルに殴りこむ事も無く特に大胆な活動はなされていない。

 とても良い学生生活を保てている、素晴らしいね。

 僕が先生だったらよく出来ましたの判子を押してあげたいくらいだ。

「監視カメラの設置は済んだ?」

 けれども何やら判子を押すにも保留にするべき行動を着実に行っている。

 嵐の前の静けさ、そんな言葉が今の状況なのかもしれない。

「は、はい……全て終わりました」

 なんていうか、この一週間で大きく変わったのは音々子さんが立派な奴隷として働いてる事。

 最初の内はささやかな抵抗をしていたりもしたが、その度に彪光はにゃんにゃんフォルダと口にして、音々子さんは半泣き状態で従うの繰り返し。

 調子に乗った彪光は何かとぺちぺち扇子で叩いたりで見ていられない。

 三日ぐらい経つと抵抗すらしなくなって、そんな音々子さんを見ていたらあまりにも可哀想なので僕は友達と触れ合うように接しているが、彪光はそんな僕を見て苦い顔をする。

「音々子さん、キリがいいしここらで休憩しません? ほら、お茶も用意しましたよ」

 壁に立てかけていた丸型テーブルを部屋の真ん中に置いていつでも一息つけるようにしておいた。

 お茶を沸かすポットも茶葉もあってこの部屋は本当に何でもある。

 音々子さんの努力の結晶といったところ。

 コップは流石に四人分なんて無かったので、音々子さんがわざわざ僕ら三人分のコップを用意してくれてありがたかったが、彪光は当然の配慮よ! と扇子を開いて言ってたっけな。

「駄目駄目、そんなんじゃ」

 すると彪光はいきなり僕へ駄目出し。

「いい? この子にはね、もっと罵って言わないと駄目なの! ほら、休憩を与えてあげるわクズが! さっさと座りなさい!」

 彪光は扇子を閉じて硬さを引き出し、音々子さんの顎を扇子で持ち上げてそう言うと、

「は、はい……ご主人様……」

 頬を赤らめて音々子さんは素直に従う。

 どこか嬉しそうなのは気のせいではないようだ。

「調教するの苦労したんだから!」

 調教ね……。

 ま、まあ……そういう人ならば仕方が無いけど、僕は言いづらいから罵る役割は君に任せるよ。

「ウチは殴るの、ちょっと痛すぎるカラ快感無いラシイでアルね」

 そっち方面の人でもアンナの拳は流石に快感を得られないようだ。

 ならば彪光の扇子で頬を叩く行為が丁度良いのかも。

 現に目の前でやられてなんだか気持ちよさそうな表情をしている音々子さんがいる。

「それで監視カメラなんて仕掛けて何するつもりなんだ?」

 四人が席に着いたのを機に、今の状況を見て僕は自分だけ置いてけぼりな状態だったので言ってみた。

 どこから手に入れてきたのかは知らないが、どうせ良からぬ方法で手に入れたに違いない。

「別に監視カメラを校内の至る所に仕掛けただけよ、生徒会が活動する時に役立つわ」

「ふうん、生徒会の活動を妨害とか?」

「うん、そうよ」

 当てずっぽうで言ったのに当たっちゃったじゃないかもう。

「で、でも生徒会を敵に回すのは……」

 音々子さんは乗り気では無く、僕も同感である。

「見つからなければ大丈夫よ」

 僕はどうするべきだろう、彼女の将来を考えてゆっくりと時間をかけて慎重に説得するかもしくはこれが僕らのサークル活動なんだと開き直って彪光の言う準備とやらを手伝うか。

 無論、前者である。

 とはいってもどう説得すればいいのかが大きな課題として立ちはだかっている。

 そりゃあ悪戯とか可愛い領域から脱していないならいいけれど、監視カメラを仕掛けて更にアンナがいる時点で悪戯なんていう領域は既に脱している。

 もしもアンナを悪いように使うのならばそれだけは全力で阻止しなければ病院送りの大量生産になりかねない。

「余裕を持ってゆっくりやりましょう、ね?」

 ね? じゃないよ。

「他のサークルからの攻撃も視野にいれておかないとね、第二資料室の鍵はかけておいたほうがいいかしら」

 窓から入れるし、それもいいかもしれない。

 音々子さん曰く、第二資料室は鍵の紛失すら気づかれないくらいに利用も少ないのでこのまま鍵をかけて自分達で鍵を所持していれば開かずの間になるわけだ。

 一々ここへ来るのは外から遠回りする事にはなるが、この隠し部屋が見つかる可能性は極力低くなるね。

「ダイジョブね、アンナ皆倒すヨ」

 うん、すごく心強い。

 心強すぎて別に攻撃されてもアンナがいれば大丈夫だよねなんて言いたくなるが、多勢に無勢という言葉があるので無茶は言えない。

 彼女とて何人もの相手を一度に出来ないと思うし。

「アンナ、貴方は確かに強いけどなるべくは見つからずに出来るだけ対抗するような状況は避けたいのよ」

「他のサークルにも目をつけられたら連鎖が止まらないですしね」

「ならいっそのことひっそりとここでお茶を飲む会みたいなのはどうかな?」

 その時、言下に彪光は口へと運びかけたお茶をテーブルへと勢いよく置いた。

 お茶が飛沫として飛び、テーブルはお茶塗れに。熱いお茶の雫を受けた音々子さんは何故か気持ちよさそうだ。

「そんなおじいちゃんおばあちゃんみたいな会にしてどうするの? ん? ねえ、何か言ってみなさいよ。贓物ぶちまけてみる? ねえ」

 ごめんなさい、反省していますのでどうかその扇子で頬に減り込ませるのは止めてくれませんかね。

 ごめんなさいを連呼すると頬から扇子を離して彪光は扇子を広げて扇ぎながら再び口を開いた。

「これからの行動としてはね、先ずは立候補者達の妨害をしましょう」

 相手の事を考えると中々に賛成しかねる……。

「流石です、ご主人様!」

「あやみちゅ、ワタシもガンバよ!」

 どうしてこうも僕は肩身が狭いのかな。

 この中で僕は一番常識を保っていられていると思うのにさ。

「それに音々子、貴方は情報集めが得意なのよね?」

「はい、そうですご主人様」

「ならば公認サークルのほうで何か困っているサークルがあったら探して。それと目安箱の監視も忘れずにね」

 その意図が解らず僕は質問をしてみる。

「聞いていいかい? 何をするかをさ」

 公認サークルってのが引っ掛かる。

 また何かあくどい事でもやらかそうっていうんじゃないだろうね。

「目安箱が置いてあるのは解るわよね?」

「ああ、廊下にあったの見た事あるけど」

「今は生徒会の奴らはまだ決まってないけど、立候補者達や生徒会補助役員って奴らが目安箱を管理して活動してるのよ。だから生徒会役員が決まっていなくても目安箱は置かれてるの」

 なるほど。

 でもどうして目安箱の話を?

 そんな視線を投げ掛けてみると彼女は溜息をついてから口を開いた。

 その溜息はそろそろ感づけよって意味なのか、説明が面倒なのかは定かではない。

「生徒会の目安箱に投げ込んだものを先に私達が回収して解決してやるの。もちろん物理的な妨害もするわよ。同時に問題を解決して公認サークルとつながりを持てれば動きやすいもの。仕事を無くしてやれば形無しよ!」

 つまり生徒会への妨害と公認サークルとのつながりを兼ね備えての行動というわけか。

 これなら公認サークルには迷惑どころか助かるだろうし、生徒会も仕事が減って実は妨害じゃなくて手助けなんじゃないかと言いたいが、言ったところで悪い方へと方向転換したら困るために僕は口を塞いだ。

 しかしながら物理的な妨害とは出来れば常識を逸脱するものではないようにしてもらいたい。

「もう大体は作戦も練ってるしね。音々子、とりあえずさっきの件、頼むわよ」

 悪い方へ方向転換は既になされているようで、僕は溜息をついた。

 そういう事ならお安い御用、そんな背中を見せてパソコンをすぐさまに操作する音々子さんは格好良くも見えるが、今までなんていうか悲しい部分ばかり見てたせいで残念だなあという感想。

 何がどうなってあんな、所謂マゾ体質になってしまったのだろう。

「とりあえずはそうね……目安箱は三年が担当しているものがいいわ。あのクズに痛い目みさせてあげるわ」

 あのクズとやらは彼女が以前に話していた元二年生徒会長であろう。

 今は選挙に立候補して三年生徒会長はもはや当確が目に見えているんだっけ?

「後は私が調べておきます、今日はもうお帰りになられても大丈夫ですよご主人様」

「そう、ならば帰るとしましょう。あとは任せたわよ、上手く出来ればご褒美もあるわ」

「あはぁ、頑張りますぅ……」

 ご褒美とは何なのかは知らないが知りたくも無く想像したくも無い。



少し書いていてプロットの時よりもちょっと歪曲しちゃった感じで、テコ入れするかもしれませんが見直しも済んだので一先ず投稿いたします。うーん、まあいいとは思うんですが。。。はい。

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