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僕らの未来に正義は無い  作者: 智恵理陀
第二部『異餌命編』:第一章
30/90

一ノ参

「今回は慎重に行動しないとね」

「どうしてよ」

「相手の顔が解らない上に相手はネットをよく使うからさ、ネットって結構怖いよ」

 音々子さんはキーボードに指を走らせて、画面を見せてくる。

「これですね、この学校の裏掲示板は」

「へえ、これが裏掲示板ねえ」

 どこにでもある無料で作れる掲示板だが書き込みはかなりの量だ。

 背景は黒で、あまり良い印象が沸いてこない。

 その中に画像付きの書き込みがいくつかあり、音々子さんはそれをクリック。

「これが総生徒会長の顔をばらした隠し撮りの画像で、こっちが生卵画像」

 生卵画像は撮られたのは数メートル後方かな、僕達の後姿も映っていた。

「書き込みは多いけど、画像付きの書き込みをしたのは一人……? かな」

「ぱっと見でよく解ったわね。君ネットよく使うほう?」

 音々子さんは意外そうに僕を見る。

「少々」

 パソコンの画面で細かい字を見るのは見慣れてます、はい。

 必ずこのような書き込みが多々あるものを見ると書き込まれた人のIDなどを見てしまうのが癖になっている。

「ふふっ……」

 隣から笑い声。

 ミシッ、ミシッと何かが軋む音。

 恐る恐る、僕はお隣さんを見てみると――彪光は笑っているものの目が笑っておらず、感想を述べるならば恐ろしいの一言。

 持っている扇子は悲鳴を上げるように軋む音を立てている。

「お、落ち着いて……」

「私は落ち着いているわ。ええ、そうとも。落ち着いているとも」

 扇子を今度は音々子さんの頬にめり込ませてぐりぐりと回していた。

「あ、あぁ……うぅ!」

 やめてさしあげて、と言おうとしたけど音々子さんにとってはご褒美のようなので言うのはやめておいた。

「彪、光様ぁ……こ、これ」

 音々子さんは画面に人差し指を伸ばした。

「……これは」

「『異餌命』って名前ついてるね、メンバーかな?」

「『また近いうちに行動を起こします』だって」

「その前に殺すわ」

「やめてっ」

 彪光の思考が刺々しくなってるな。

「音々子さん、異餌命の専用サイトがあるらしいんですけど見つけられます?」

 彼女はブラウザをいくつか開き、キーボードに打ち込んだりサイトを開いていく。

「簡単には出てこないわね」

「専用サイト……? 気になるわね。今日中に見つけなさい、このメス豚が」

「は、はい! ハァハァ……」

 罵倒されて嬉しそう。

「それで、今日はどうするんだ?」

 退屈そうにアンナと指相撲をする新蔵。

 アンナは楽しそうだけど。

「異餌命のサイトについては音々子に任せるとして、私達は総生徒会長を尾行しましょう」

「尾行? 異餌命のメンバーが総生徒会長の近くに潜んでるかもしれないからか?」

「ええ、そうよ。図体の割りに物分りがいいわね」

 図体と物分りは関係無いと思うけど。

「尾行も難しいんじゃない? 生徒会関係者は朝の件もあって警戒してるしさ」

「そうね、しかしそれは異餌命も同じ事。どうやって総生徒会長に仕掛けようか考え中のはず。先ず私達は尾行で様子見、奴らもおそらく尾行で様子見。ばったり異餌命のメンバーらしい奴に出くわすかもしれない」

 異餌命のサイトが見つかれば行動を把握できて動きやすい。

 もしかしたらリーダーの情報も得られるかもしれない。

 解らない今有効なのは異餌命の行動を予測して、異餌命と同じような行動をする事でより見つけやすくする――ってわけね。

 異餌命が素直に総生徒会長を尾行してくれてればいいのだけど相手の顔が解らないからなぁ。

 彪光の案も決して悪くは無いが判断は難しい。

 まあ少しでも異餌命に属してる生徒や行動を目撃できれば上々といったところだ。

「彪光様、生徒会の情報を集めてきたのですが御厨夏江みくりやなつえの奴、選挙活動中ではありますが総生徒会長の警護もするらしいですよ」

「ふぅん、選挙活動中なのに随分と余裕ねえ」

 御厨夏江さんは虎善さんと深い繋がりがある。

 虎善さんと行動を共にするのは彼女にとって選挙では強力な宣伝になる、警護をしてるとなればまたそれも宣伝の一つとして有効。

 三年生徒会長は決まったも同然だね。

 度々発表される支持率では多くの候補者の中でも一人だけ頭が出るくらいに支持率も高い。

 彼女が意図して宣伝を兼ねた活動を行っているかは定かではないが、僕の印象では御厨さんはそういう疚しい考えを持たずに行動していると思う、あの人の事を深くは知らないけどね。

「ならまた奴の妨害でもしようかしら」

 前回は園芸部の顧問がつけていた指輪が園芸部の管理する花壇のどこかに落としたのを探すべく、御厨さんは花壇に出向いたけど僕らが掘った落とし穴にはまって全身泥だらけになって彪光は大笑いしてたっけな。

 サークル最初の活動があれだもんなあ……。

「もう止めなよー。これじゃあ異餌命と同じだよ?」

「……それも、そうね」

 よかった。

「今回で最後にするわ」

 よくなかった。

 彪光は音々子に視線を送ると、彼女は頷いて傍らから四角い白い箱を出してきた。

「……これは?」

「腹パンボックス」

 ……非常に開けたくない箱だ。

「中に強力なバネが仕組まれた固いボクシンググローブが入ってて、開けたら垂直に飛び出すんじゃなく、途中で止まる取付蓋に引っ掛かるようになって角度を変えて腹部にいくようにしてあるの」

 音々子さんは自慢げに言う。

 非常にくだらないんですがこれ。

「威力はすごいわ、クセになるくらい」

 クセになるのは貴方だけだと思うんですがこれ。

 てか試したんですか?

「予定をちょっと変更して、先ずは御厨を探すわよ!」

 なんだかなー。



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