第31話:宇宙の愛は俺の愛
ついに完結!そしてラストに書こうと決めていたネタも入れました!
ではエピローグもありますが一応最終回・お楽しみください♪
ついに鍵が6つ揃ったジンはいよいよ超魔王イヴの部屋に愛するヒナを取り戻すために向かうのだった。悲しき母子の闘いがいま始まろうとしていた。
超魔王の部屋の鍵を開け、中に入るジン。だが部屋の中は暗く一寸先も見えなかった。
「邪魔するでぇ~」
「邪魔するなら帰ってぇ~」
「あいよ~……って帰るかボケェ!」
ついツッコミを入れてしまったジン。その瞬間明かりが点き、辺りを見渡すと炬燵でぬくぬくしている女性がいた。
「うふふ。ジン、あなたは覚えてないでしょうけど久し振り~。ジンのママですよ~♪」
「おいおい、ラストバトルがこんなノリでいいのかよ……」
正直ジンは超魔王がいきなり不意打ちを仕掛けてきたり、真・魔族六将軍などが現れたりというお約束の展開を予想していたのにこれはまさに予想外だった。
それに実の母がここまで若いというのも予想外だった。『変身』系能力でも持っているのか超魔王イヴの外見は狐のような耳と尻尾を生やし、着物に身をつつんでいた。
「うふふ~。妾はこれでも超魔王イヴ・クイックで間違いないわよ。かつてダパディちゃんと結婚してあなたを生んだ実の母。それにしても妾に似て美しい顔に育ってるじゃない。カッコいいわよジン♪」
「いや、それよりなんで母さんはヒナとリースさらったり、赤ん坊の俺を捨てて家を出て行ったりしたんだよ。俺なんか今日まで母さんがいないものとして育ったんだぜ」
改めて見てもイヴは美人だったがこの超魔王の部屋は壁一面がピンク色で炬燵の他にも冷蔵庫や台所、風呂やトイレまで完備してある部屋で、脱ぎ散らかした服やお菓子のゴミがいっぱいだった。
こんな部屋ではどうやってバトルへと流れを持っていくのかジンには思いつかなかった。
「実はねぇ。ジンが特級厨師になったのを風の噂で聞いてね。いつか手料理作ってほしいな~って思ってたの。だから作って♪」
「なんか話についていけないんだけど。つまり世界征服をしようと思って邪魔になる勇者を殺そうとか考えてたわけじゃないのか?」
「なんで?そんなことするわけないじゃない。妾はジンのママなんだよぉ~」
「あぁーわかったわかった。じゃあ作ってやるからちょっと待ってろ」
ジンは備え付けられていたキッチンで早速調理を開始する。
「そういや母さんは狐なのか?その耳とか尻尾とか」
料理の最中気になったことを聞いてみる。
「大魔王のヒイロちゃんが狼なんだから超魔王の妾が狐でも不自然じゃないでしょ?ヒイロちゃんなんて色からして狐っぽいのに狼と名乗ってるんだから」
まぁ、『能力』は選べるものではないし別段不思議でもないと思いジンは調理に戻る。
だが超魔王イヴにはその常識も当てはまらないのだが……
焼っこう♪肉を焼っこう♪アレレ今日も~私~作っちゃった、黒コゲ肉♪
「超ウルトラ上手に焼けましたー!」
「ジン、いまのって肉焼き歌?ずいぶんと後ろ向きな歌詞つけるわね」
「母さんったら俺をそこらの達人と一緒にしないでくれよ。超達人の俺はどんなやり方でも成功するんだぜ!」
ジンが作ったのはこんがり肉。冷蔵庫には肉しかなかったのでその中で一番上等な肉の『アプトノケロポポスの肉』をこんがり焼いた超ウルトラこんがり肉だった。
食事中
「さてお腹も膨れたことだし、勝負といきましょうか♪」
「ああ……ってなんでいきなりそうなる!?俺を呼んだのは息子の手料理が食べたからだったんじゃないのかよ!」
「うーん、当たらずとも近からずってところね」
「それは答えとは全然違うってことかよ……」
「簡単に言うと妾の寿命がもうすぐ尽きそうだから最後にジンに名誉をあげようと思ってね」
「名誉?というか母さんそんなに若くてきれいなのに病気か何かか?」
イヴは血色も良くジンにはとてもイヴが死ぬようには見えなかった。
「問答無用。さぁ始めるわよ、いつでもおいで。なんて言って妾からかかって行ったりして♪」
イヴはそれまで隠していた力を解放し、それにより発生した突風にジンは吹き飛ばされた。
「おい母さん!せめて理由くらい言えよ!なんで突然バトルなんだよ。それとさっさとヒナを返せ」
最初の流れからヒナはどこかで無事なのだと思っていたがイヴの突然の手のひらを返したような態度にジンはヒナの身の危険を感じていた。
「あなたはこのまま死んでも超魔王と闘って散った勇敢な勇者として語り継がれるし、勝ったら勝ったでまさに英雄の中の英雄になれるわよ。これはつまり母の愛なのよジン。
勇者に必要なのは正義の心や友情みたいな不確かなものでなく、圧倒的な強さを持った敵が必要なの。
敵がいなければ輝けないんだから。これまでも古代都市イツワの英雄を焚きつけたりしてみたのもジンの修行になればと、思ってのことなんだよ。会わなかった?」
だが残念ながら古代都市イツワの英雄はジンとは会わず、ヒイロに敗れ改心してあの世へと旅立っていた。
そしてそう言いながらもイヴはジンを狙って拳をぶつけてくる。
「ぐはっ!……わかったよ母さん。来る者には『いい度胸だかかってきな』と言い、去る者には『生きて帰れると思うなよ』というのを地で行ういじめっこの俺を本気にさせて後悔すんなよ!あと古代都市の英雄には会ってないけどな」
ジンの髪は白くなり、黒かった瞳も真っ赤になる。ジンの本気『ベクトル能力』を発動させた証。
「じゃあこっちも本気でいくわよぉ~」
ジンはイヴが先ほどから拳での攻撃しかしてこないのでこのままベクトル変換で反射すればあとは一撃で決めるつもりだったのだがイヴの拳は反射できなかった。
「痛ぇぇぇー!なんで反射できねぇんだ?触れたものを全て反射するはずなのに!!」
「うふふ~♪教えてあげるわジン。それは触れてないからなのよ。あなたの能力は体の表面に触れたものを反射するような膜を張ってそれに触れたものを反射してるみたいだからその膜に触れた瞬間に拳を引っ込める突きを出してるから逆にダメージが伝わるの。わかった?」
イヴは簡単に言ってのけるが真に恐るべきはほんの少しでもミスをすれば自分の拳が潰れてしまうリスクがあるのに躊躇いもせずにジンを殴れるイヴの胆力だろう。
「他にもこんな手段もあるわよ」
イヴは手のひらに光を集め、それを打ち出した。
「うおっ!」
間一髪でよけたがかすってしまい、ジンの服の一部は焼け焦げていた。
「ジンは光まで反射してるわけじゃないみたいだし、なんなら周りの空気を全て消すこともできるわよ。だからその能力も無敵じゃあないの。頼りすぎないことね。
最初にいったけどジン。本気できなさい。妾はジンを殺す手段なんていくらでも持ってるけどあえて近接攻撃による肉弾戦だけにしてあげてるんだから」
イヴの能力というよりは体術の前には『ベクトル操作』も無意味だと思い、今度は純粋な剣技で攻める。だがそれすらもイヴにいなされる。一体いくつ攻撃手段を有しているのかわからないくらいの多彩な攻撃にジンは防戦一方だった。
「あっはっは♪」 イヴは笑う。ジンの積み重ねてきた努力など大した驚異には感じなかったからだ。
「笑ってんじゃねぇよ。今に目に物見せてやる!」
「あははははははは!」
「爆笑すんなよ!なんかむかつく!」
とは言うもののそれでもジンの攻撃は一発も当たらない。
そしてイヴはどこからか巨大な剣を召喚した。
「超魔王による十字斬♪」
だがイヴの底知れない力を感じ、回避を優先していたためにジンはかろうじてよけることに成功した。
「ちぇ~。首を狙ったのに外しちゃった」
ジンはまさに絶体絶命のピンチだった。超魔王が強いのは予想していたがここまで強いとは思わなかったのだ。だが、勇者には諦められない時がある。
「死ねない。死ぬわけにはいかない。俺は勇者だから。何が何でも勝たなきゃならねぇんだ!帰りを待つ者のためにも、助けを待つ者のためにも俺は負けねぇ!」
立ち上がってみたものの満身創痍のジンにはイヴに勝つのは厳しいだろう。だが勝算などなくとも立ち上がる。それが勇者なのだ。
「母さんさっき言ったよな。勇者に必要なのは敵だって。だけど俺の答えとは違う。勇者に必要なものは愛だ!仲間を信じ、己を信じ、決して折れない心を持つ者こそ勇者の称号を名乗れるんだ!敵がいないと輝けないようなチンケな奴が勇者なんてできっこねーだろーが!」
ジンは仲間や恋人の信頼を受けてこの場にいる。ならばその期待に応える男こそがジン・コーシュという男なのだ。
「俺の……俺の本気を見せてやるぅぅぅー!!!」
「それでこそ妾の息子よジン。さぁ、もっと妾を楽しませてちょうだい!」
「うぉぉぉぉぉー!これがみんなに託された勇者の力だぁぁぁー!」
ジンは先ほどからこの瞬間のために溜めていた力を全て出し切った。
「真・封魔聖烈神ッ!!」 ジンの最後の斬撃はイヴの左肩から腹まで一気に切り裂いた。
ブシュゥ
「これが勇者の力……か。あ~あ、せっかくジンに母親らしいことができると思ってたのに最後の最後まで妾は接し方を間違えていたようね。強い敵と戦えば周りからも評価されてジンが喜ぶと思ってたのになぁ。まっ、それじゃあねジン。さよ~なら~♪」
イヴの体は霧となって消えていった。
「ぐふぅ!」
だがそれと同時にジンも崩れ落ちる。
「やっぱ無茶しすぎたな。ヒナも……助けなけれ…ば……」
ジンの意識はそこで途切れた……
ふぅ~終わった……
ディスガイアは最高に面白いのにネタとして使う人がいないのでラストには使いたかったんですよ。いやぁすっきりした♪
次のエピローグで本当に最終回です。最後の登場人物設定と同時に投稿します。