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第30話:燃えよナシャ!怒りの鉄拳

 やっぱ各バトルに混ぜるネタを決めて書くと楽なうえに楽しさ倍増ですね。今回の話もやっぱ軽~いノリで書いてます。

 只今ナシャは非常にガッカリしていた。そもそも今回勇者ジンの恋人と仲間を助けるための闘いに手助けしたのはヒイロのためだった。


 バスラやコウのように友情のためでもなく、かと言ってマザーのように流行の最先端を走るレン・コーンのオリジナルグッズが欲しい訳でもなく、ただヒイロが好きだから来たのだ。だからヒイロの部下から救援メールが来てすぐに救助にきたわけだがヒイロさえ助ければすぐにでもこの場を去って二人っきりで熱い夜を過ごしたいと思っている。

 だからこそ自分が選んだ通路の先にヒイロがいなかったことに落胆の色を見せていたのだった。



「そこまであからさまにガッカリされると傷付くね」

 通路の先にいたのは背中に『我流』と書かれた黄色いジャージを着込んだかなりのイケメン。



「うっさいバカ。私はお姉ちゃんの救助に来たのにあんたみたいなしょうもない奴が相手でガッカリしてるのよ。

 ここまで来たら本音がどうであれアンタを倒して鍵を勇者に渡さなきゃいけない流れになっちゃたじゃない!お姉ちゃんを見つけたらそのままとんずらする予定だったのに……」


「まあまあ、そう言うな。だが僕が相手なんて君はついてないね。ここらで自己紹介させてもらおう。僕は超魔王イヴ様の忠実なる下部、ハバイン・スリーだ!まぁ、悪魔で執事も兼ねてるけどね」


 ハバインと名乗った男は自身の一番カッコいいと思っているのだろうポーズをとって自己紹介をする。




「……まぁアンタが超魔王の忠実な部下ってのはこの部屋を見ればわかるわよ」


 ナシャが選んだ通路、つまりこのハバイン・スリーとの決戦の舞台となる部屋は壁一面に超魔王イヴ・クイックのポスターや写真が所狭しと飾ってあり、フィギュアやスリッパ、果ては時計や机といったありとあらゆる調度品のすべてに超魔王イヴを模したもので統一されていた。



「僕はかつて幼なじみのショートケーキのイチゴを食べただけで殺されかけた過去があってね。それ以来女性不信だったのだがイヴ様と出会ってようやく僕の人生は輝いた!

そう、僕はイヴ様に仕えるために生まれてきたのだと!!だからイヴ様の邪魔をする者を殺す。苦しめて殺す。痛めつけて殺す。殺す殺す殺す殺すぶっ殺す!!お前も僕に殺されろ!!」


 ナシャは途中からハバインのセリフを聞いていなかった。何故なら先ほどの話に出てきたハバインを殺しかけた幼なじみというのはナシャだったからだ。

 ハバインはナシャのことを忘れてしまっているだろうし、ナシャ自身先ほどの言葉を聞いてようやく思い出したのだ。


「……まさかアンタが私のイチゴを取ったハバインだったとはね。あれ以来私は亜人嫌いになって私が一生を捧げるべき存在のヒイロお姉ちゃんにも初めて会った時に殺そうとしちゃったじゃない!」



「何ぃ!?お前が僕とイヴ様が出会うのを遅らせたあのナシャ・イビルパか!ならばこの恨み、晴らさでおくべきか!」


「「死ねぇぇぇぇー!」」


その瞬間両者同時に飛びあがり空中で蹴りが交差した。


「ほわちゃー!」 「ふぉぉぉぉぉぉー!」


 どちらも一歩も退かず防御など一切考えない闘いだった。



「さすがね。私が意図的にこの部屋のポスターやグッズを狙った攻撃も混ぜてるのにそれを全部防ぐなんて」


「ごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃうっせーぞ!ヒャハハハハハハ!イヴ様の執事としてこのくらいのことができない訳ないじゃん。僕の存在理由はイヴ様のためだけにあるんだ。

そう、イヴ様さえいれば何でもできるんだ!君なんかと違って愛の力で僕に勝てると思うなよ。

僕のモットーは『禍根を残さず』だからね。大魔王ヒイロのファンなんてゲスな豚ばかりじゃないか!老若男女問わずファンの多いイヴ様のために君には死んでもらうよ」



「むっきー!。言うな語るなダサいジャージ来てるくせに!じゃあ私は『因果応報』とさせてもらうわ。

超魔王イヴみたいな出戻りのババアにヒイロお姉ちゃんが負けるはずがないんだから!私がヒイロお姉ちゃんを想ってる。いや、愛してる気持ちがアンタみたいな変態に負けてるわけないんだから!こうなったらどちらの愛が上か勝負しようじゃない」



そして第2ラウンドの幕開け。



「私は絶対に負けないんだからぁー!」

 ナシャは紅蓮の翼を出し空高く舞い上がる。ハバインの部屋は広いために空を飛んでも大丈夫なので空から大技を出して一気に片を付けるつもりだった。



「左手に炎、右手に刀。終の秘剣『火産霊神(カグツチ)』」


 ヒイロと闘ってからはこんなこともあろうかと日々修行を続けていたナシャは新たな技を体得していたのだった。そして勝負は決した。



「ぐっはぁぁぁ!」

 ハバインはナシャの攻撃をまともに受けてしまい、意識を刈り取られたのだった。



「ふふん。お姉ちゃんとの出会いを遅れさせたのはアンタが私を亜人嫌いにしたからなのよ!反省しなさい!」



 これでもう勝負はついたとばかりに壁にかかっていた超魔王の部屋の鍵を取り、踵を返して部屋を出ようとしたところで入り口が閉まっているのに気づく。



「ちょっと。開けなさいよ!アンタ負けたでしょ!」



「……確かに君には勝てないみたいだ。だがイヴ様のためにもお前ひとりでも殺さなければいけないんだ!」

 ハバインはすぐに意識が戻ったようだがダメージからか横になったまま答える。



ガコン

 天井が開き、水が流れ落ちてくる。この部屋は今密室。このままでは溺死してしまうだろう。



「あひゃひゃひゃひゃひゃ。やはりイヴ様の言うとおりだ。僕は忠誠心の高さから魔族六将軍のリーダーをやってはいるが戦闘力は一番低いんだ。だから最初からこの戦いにおいて死ぬのがわかっていたから相手を道連れにする罠を用意しておいたんだよ!」


「ちょ、ちょっとアンタ本気マジで死ぬ気?冗談やめてよ。私はお姉ちゃんを助けたら一緒にお風呂に入ったり、腕枕してもらって一緒に寝たり、マッサージし合ったりする予定だったのに……」



「だ~め~だ~ねぇ~。イヴ様の考えに間違いがあるはずないんだ!ここで僕が死ぬのもイヴ様の計画の内なんだ!一緒に死んでもらうよ」

 すでに正気ではなくなったハバインにこれ以上の説得は無意味だろう。奴は間違いなくナシャを道連れに死ぬつもりだ。



「どうしよう私の技は全部炎属性だから水に浸かった状態じゃあ威力が出せないし……」

 すでに水はナシャのひざの辺りまできていた。



「そうだ!妹がピンチなんだからお姉ちゃんならきっと助けに来てくれるはず。だってお姉ちゃんなんだもん!ピンチってのも本来自分でどうにかなる程度のものなのにあの部下の人が大袈裟に言っただけに違いないわ」

 ナシャは心の中でヒイロに助けを求めてみる。


……

…………

…………………


「そういえば言ってなかったが大魔王ヒイロはイヴ様に呪いをかけられていまは操り人形になってるよ」


「な、なんてこと!まさかお姉ちゃんが本当にピンチになってたなんて」


 だがそれは少し前までの状況。すでにヒイロはバスラとスノゥとのバトルで呪いが解けているのだった。



「ナシャァァァァァァー!」 

 ヒイロは壁を蹴破って参上。 「俺もいるぜぇぇぇー!」 遅れてオルラーディンも。


「お姉ちゃーん♪」


「……一応俺もいるんだけどやっぱヒイロ様しか興味ないのか。所詮俺なんて……イジイジ」


 オルラーディンはナシャに無視されたことが若干ショックのようだ。まぁ、それは置いといて今のヒイロはまさに悪鬼羅刹もかくやという怒りモードとなっていた。



「きぃ~さぁ~まぁ~!よくもわっちの妹を泣かせたな!この恨み100万倍にして貴様に返す!!」


 バスラによって呪いだけでなく『狼王の殺息』の反動によるダメージも古代都市イツワの怪物と闘った時に受けたダメージも、まとめて無効化されたおかげで今のヒイロは絶好調。いまなら空も飛べそうな勢いだ。


「オルラーディンもそっちを持て。ツープラトンじゃ!『せーの』で上げるぞ!」


「御意」


「「せぇーの」」


ヒイロとオルラーディンは同時にハバインを担ぎ上げ、空高く舞い上がりそのまま一気に地面に叩きつける。


「ナシャ。わっちの妹としてとどめを刺すのじゃ。過去と決別せい」


「うん、お姉ちゃん♪ 喰らえ~、必殺、ナシャがぶり返し!!そしてそこからの暗外旋風締め!!!」


 ヒイロとオルラーディンが地面に叩きつけたことで虫の息だったハバインはナシャのトドメの一撃で一気にブラックアウトした。




「お姉ちゃーん。怖かったよぉ~」


「よしよし。じゃあ今夜は一緒に寝ようか♪」


「うん♪」 そしてこのまま二人は超魔王の城を後にしたが。


「あ、オルラーディンよ。わっちとナシャは魔王城に帰るからイヴがどうなるか見届けてから帰ってくるのじゃぞ」


「えぇ~なんで俺が?呪いかけられたのはヒイロ様なんだからこのまま勇者と一緒にぼいん、たーとやっつけて子分にしちゃえばいいじゃないですか」


「主の命令じゃ。今はナシャより優先する事柄なんぞない!」


「そういうことだからオルラーディンさん頑張ってね♪」


 ヒイロとナシャは去って行った。

 何とも不幸な役回りのオルラーディン。次回、結局はジン任せとなる最終決戦!お楽しみに♪


 いよいよ次回完結エピローグもあるけど

 あと手遊びとして『うたわれるもの』の短編も書いてみたので良ければ読んでみてください♪

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