第28話:ビーストマスターウォーズ
続いてコウの話。
こちらもギャグ寄りっぽいですがバトルを熱く書くように意識してみましたがどうにもギャグに走りたくなりますね。グロ以外の話を真面目に書こうとするとすぐこれだ。
今回はコウの話。
ジンに助けられ父の死の真相を知り、魔物使いとしても有名となったコウはモンスパイアの街だけでなく各国でも既に有名になっていた。
それもそのはず。ジン達が街を出たあと、修行をしたらあっさりと世界強者ランキングの頂点、レベル9999になったからだ。序列はまだ8位だが8人の中で唯一の魔物使いなので魔物使いの業界では既にカリスマ的存在として扱われているのだった。
ではでは久し振りの始まり方ですがジン・コーシュの冒険第28話、お楽しみください♪
「うおっ!なんじゃこりゃぁぁぁ!」
コウが選んだ通路の先は見渡す限り溶岩。そしてその上にバトルフィールドがあるといういかにもな決戦の舞台だった。
「君が最近話題の8人目のレベル9999だね。ようこそ、俺ちんの部屋へ。俺ちんはこの部屋の主、超魔王様に仕える魔族六将軍の一人、シロ・ナイトだよぉ」
現れたのは人間ではなく亜人だった。頭には左右のこめかみから生えた二本の長い角に竜の尻尾のような後ろ髪そしてその髪の色は緑。身に纏うのは赤い縁取りをした真っ黒な鎧。そして腰には美しい剣と盾というオーソドックスな片手剣の使い手。この男をコウは知っていた。
「まさかアンタまで超魔王の部下になっているとはね。世界強者ランキング第5位シロ・ナイトさん」
「まぁ、長い問答をやっても意味ないし、さっさと戦うとしようかぁ」
シロは腰の剣を抜き放ち構えを取る。
「アンタが相手ならオレも初動から全力で行かせてもらいましょうか」
コウの使う武器はチャクラム。とある土地神から譲り受けた五行相生の循環を逆転させることができるチャクラム『サカサエン』。
「ふむほむ。珍しい武器を使うんだねぇ。てっきり魔物使いという情報から鞭でも使うのかと思っていたよ」
「はっ、オレは魔物使いではあるが殴って倒す脳筋魔物使いさ!武器や魔物なんざ殴り合いのバトルの補助程度で問題なし!」
「その心意気やよし!たまには表の人間と闘うのもいいもんだ。では俺ちんも世界強者ランキングの先輩として稽古をつけてあげよう。ハンデとして右手一本で闘ってあげようじゃないか」
シロは盾を投げ捨て半身に構え、コウに剣を突き付ける。
「あんま舐めてっと後悔すんぞ!」
とは言うもののコウは相手が格上というのはわかっていたのでジリ貧になる前に決着をつけるため、今が勝機とみて突っ込んだ。
「俺ちんのような天才に不可能はなぁ~い!」
しかしそれこそシロの狙いだったようでシロは向かってくるコウにカウンターでヒザ蹴りを決めた。
「ぐっはぁ」 激しく吹き飛んだコウは壁にしこたま叩きつけられる。
「おおーっと言ってなかったか?俺ちんの戦闘スタイルはキックボクシングさ。剣は闘いの補助でしかないんだよぉ」
「……アンタ、右手しか使わないんじゃなかったのかよ」
「嘘に決まってんじゃねーか。アホですか、君はぁ?
君みたいなカスとはハナからまじめにする気なんてねーのよ」
言ってることは卑怯で、汚いのになぜかコウにはシロがカッコよく見えた。
「しかし君も馬鹿だねぇ。監視カメラで見てたけど、勇者との約束を守るためにここまで来たんだろ?
律儀だねぇ、俺ちんにはわからないよ。なぜそうまでして勇者を助ける?友達なんか見捨てれば良かったのに。」
「それはジンが「オレの友達だからだ!なんて陳腐な答えは求めてないよ(バキッ!)」ぐおぉぉ」 立ち上がらろうとしたコウに追い打ちをかけるシロ。
だがそれでも、決して軽くはない怪我を負いながらも立ち上がるコウ。
「アンタにはわからねえだろうな。オレの中の熱いパトスが!友情の炎が!そして正義の心が燃え上がっているのが!」 息も絶え絶えながら熱く語るコウ。
「そしてさっきも言ったがオレのチャクラムも攻撃の補助のために選んだ武器でオレ自身、基本的に拳のみで敵を屠ってきたんだ!文句があるならまずはオレのパンチを食らってから言いやがれ」
チャクラムでシロの剣を弾いて出来た隙に、コウの拳が当たった。ついにシロにクリーンヒットしたのだ。
「ふむぅ、少し君を馬鹿にしていたようだ。ではここからは俺ちんも本気で行かさせてもらうとしよう」
コウも途中から気付いていたがシロは最初から本気ではなかったのだ。だがコウの本気を目の当たりにし、とうとう一人の剣士としてシロは本気を出すことにしたようだ。
「……古の剣を携えし、白きワイン商レナード。我に力を…『変身』」
シロがそう言った瞬間辺りが眩い光に包まれ、コウが次に目をあけたとき、目の前には白く輝く鎧を身に纏った巨人がいた。
「改めて自己紹介をしよう。俺ちんは今の第1位が現れる前は世界強者ランキングの第1位にいたこともある元世界最強の剣士。世界強者ランキング現第5位シロ・ナイト。能力は『変身』能力の古代種。モデル『騎士』さ」
「まさかアンタが世界でもわずかにしか確認されてない古代種の『変身』能力の持ち主だったとな……」
「やめてくれよ。世に知られてる古代種の『変身』能力者はみんなレベル3000以下の雑魚じゃないか。俺ちんはレベル9999。世界でもトップに位置する最強なんだよぉ」
そして闘いは佳境へと至る。
コウはとにかくシロの攻撃を避けることに集中した。蹴り技は相変わらず多様してくるがシロは左手だけは決して使ってこないあたり何かこだわりでもあるのかもしれない。
「くぅ、ちょこまかと!」
本気を出したというのにコウをいつまでたっても仕留めることができないことにシロは苛立ちを感じているようだった。そしてコウの攻撃は浅いながらもすべて命中し、徐々にシロの体力を削っていく。
「でかくなれば有利になるとでも思ったか!当たらなければどうってことはない。避ければいいのだからな。
そしてもう一度言おう。オレがここに来たのはジンとの約束を果たすためというのもあるが、結局は自分のためさ!たとえどんな不幸があろうと。報われない結果になろうと後悔しない!なぜなら友情は駆け引きじゃないからだ!!」
そして……ついに勝負は決まった。
コウの最強コンボ。リバーブローからガゼルパンチ、そしてデンプシーロールという嵐のような猛攻に耐えかね、シロはリングから吹き飛んだ。そしてリングの外へ、溶岩へと落ちて行った。
「危ない!」
慌てて吹き飛んだシロの右手を掴み、必死に堪えようとするがシロは今『変身』しているため体重も身長に比例して重いのだ。
「おいシロ、左手も使え。このままじゃ二人とも落っこっちまう!」
「つくづくお人よしだねぇ。君はどうしてそんなに他人を助けようとするんだい?
たしかに勇者を助けるのは友達だからという理由があるからわかるけど、正直今こうして俺ちんを助けようという君の本心がわからないよ」
シロはこれまで一人で生きてきたし、人助けなんて結果的に助けたものを除けば積極的に誰かを助けたことはなかった。まぁそんなところも超魔王に気に入られる要因だったのだが。
「アンタ馬鹿ぁ!?普通は助けるだろ!!体が勝手に動いちまうんだから。わかったらさっさと左手を使え」
「すまない……俺ちんは左手を使えないんだ」
「何だと?」
この後に及んで最初に言ったハンデを守る理由などないはず。現に足は使っていたのだ。
「実は少し前に人気BL作家のトオルさんの握手会に行ってきてね。利き手の左手はしばらく使いたくなかったんだよ♪」
「……」
「……」
「「…………」」
「アホかぁぁぁぁーwww」
ついツッコミを入れてしまったコウはシロの手を離してしまった。
「アディオス、新しい俺ちんの後継者。これからは君が世界強者ランキング第5位だ。じゃ~ねぇ~♪」
その言葉を最後にシロは溶岩の中に落ちた。
案外助かる秘策でもあるのかと思ったが出てくる様子はなくシロは死んでしまったようだ。
「あー、こいつぁ~うっかりだ。まぁ、あの世でオレの活躍を見ててくれよ!」
こうしてコウは超魔王の部屋の鍵の1つを手に入れた。
「勇者」ってのはジンだけの称号なのでシロ・ナイトの変身のセリフをあんな風に変えちゃいました。まぁ、アリでしょう。
さて、明日は誰の話にしようかな。他のキャラは全部骨組みとテーマは決まっていますのであとは肉付けすればいいのですが、はてさてどうなることやら。