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第14話:太古の英雄

 なんか妙にシリアスな話になってしまった。ネタもいつも通りに混ぜたから余計に変になったかも。

 まあ、こういう話も練習としてはいいかも♪次回作はシリアスで重くなりそうですし。

「3つ目の宝石は随分と近くにあるようじゃのう」


「そうですね。まさか王家の墓から徒歩10分の位置にあるなんて助かりますね」


「俺なんかヒイロ様のオシオキで体中がガッタガタだよ」



 前回王家の墓でジャルフレッド・フォレスターを倒してからレーダーを見ると、なんと次の宝石がすぐ近くに反応があったのでヒイロはガルスをオシオキしたあとすぐに向かうことにしたのだった。


「今回はボスがいなければいいんだけどな~」



 鼻歌混じりに気分よく歩くメレル。



「でもヒイロ様、もしボスがいたら今回は僕が闘いますね。

 さっきはあまり活躍しませんでしたし」


「うむ、ではその役目はメレルに任せよう」


「この命に代えてでも」



 片膝をついてこうべを垂れるメレル。



「いや、命は大事にするんじゃ」



 慈愛たっぷり顔でメレルの頭を撫でる。


 ヒイロを愛するメレルには最大の褒美だった。



「つーか本当に敵がいるかどうかわからないんだし、もうちょっと気楽に行ってもいいんじゃないんですか?」



 ガルスは表面上は平静を装っているが内心メレルに対する嫉妬を抱いていた。


 付き合いの長いヒイロとメレルには丸分かりであったが二人はあえて口にしない優しさを持っている。



「さて話をしているあいだに着いたようじゃの」



 そこはジャングルの中でありながら植物が建物を侵食しておらず、1000年の時を感じさせない美しさがあった。



「……まさかジャングルの中にこれほど美しい場所があるとはのう。それに地面も建物も全て黄金でできておるわい」 


周りの建物の壁を触ってみたところ、金色に塗ったのではなく純金でできているようだ。



「あ、あそこの台座から宝石の反応があります」


 その台座は新しい物らしく、たぶん魔王ダパディが封印の宝石を置くためにあとから置いたものだろう。


ヒイロが台座の宝石を取ろうとしたところで、


「待ちたまえ」 やはり邪魔が入った。



「なんやおっさん。

 僕らは崇高な目的があってこの宝石を集めとるから邪魔すんなや」


「邪魔はさせて貰うがまずは自己紹介といこう。

 わしの名はジェルダー・ワイフリー。

 古代都市イツワの軍人だったものだ」



 ジェルダーと名乗った男は被っていた帽子を脱ぐと丁寧にお辞儀してきた。


 あまりにも丁寧な挨拶に毒気を抜かれるが最初にヒイロが口を開いた。



「……さっきそこの男、メレルが少し言ったがわっちらは世界の崩壊を防ぐ為にその宝石が必要なのじゃ。

 ぬしが止める理由を聞かせてくれぬか?」



 ジェルダーは少しためらっていたようだが



「……わしはかつてはこの国の為に働いてきた。

 聖王ジャルフレッドが途中から欲にまみれても国のため、民のために軍人としてできる限り犠牲を減らそうと戦ってきた。

 だがある日とある村に治療不可能な疫病が流行ったため焼いてくるように言われたのでこれ以上の犠牲者を出すくらいならと、焼き払った……」



 そこで一息ついたジェルダー。ヒイロ達は黙って聞いていた。



「……だがその村の疫病なんて嘘だったのさ。

 王のやり方に反発していたから見せしめに殺されたんだ。

 いや、殺したのは私自身だがね。

 勿論わしは直訴した。

 だが聞き入れられずにわしは拘束された。

 その結果、地位も名誉も愛する家族さえ奪われ、わしは不死身の呪いをかけられて永久鳥葬になってね。

 数年前にようやくわしの拘束を解いてくれた方がこの宝石を持ってくれば殺された家族にも会わせてやると言われたんだ。

 だから数年かけてようやく見つけたその宝石を渡す訳にはいかないんだよ」 



 ジェルダーの話は本当のことだろう。だがそれでもヒイロ達もハンパな気持ちで宝石集めをしている訳ではない。



「ぬしの理由はわかった。

 じゃがわっちらも世界を救うためにも宝石は必要なのじゃ諦める訳にはいかん」



「ならば力で勝負だな。

 わしは助けられた時に不死身ではなくなったが実力で一国の将軍となったのだ。

 やるからには死ぬ気でこい」

 すでにジェルダーはかつての民を愛し、国を愛していた頃と違い、自らの欲望のために生きる存在となっていた。



「「ぐはぁ」」



ジェルダーは腕を振るう。


 ただそれだけでメレルとガルスは激しく吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれてしまった。



「わしの一撃を避けるとはなかなかやるなお嬢さん」 どうやらジェルダーは風の魔法使いでもあるようだ。



「残念じゃがわっちはカワイイ系が好みじゃからぬしにはトキメかないんじゃ」



 ヒイロはジェルダーの攻撃が見えていたので難なく避ける。



「しかしメレルとガルスはこうもあっさり食らうとはがっかりじゃ。

 結局わっちが闘うしかないのう」 



「俺らはまだ闘えますよ」



「僕をここまでコケにしてくれたのはおっさんが初めてだよ」



 二人ともだいぶダメージはあるようだが瓦礫を吹き飛ばして戻ってきた。



「ヒイロ様、俺らの本気を見せてあげますよ」


「僕達は変身だけでなく奥義も一杯あるをですよ」


「なら任せた」



 二人がやる気なら任せない理由がないし、しばし観戦することにした。


 というかぶっちゃけ戦闘というのは面倒で仕方がないとヒイロは考えている。


「「変形合体!」」



 二人は空高く飛び上がりロボットのようにガチャガチャ変形する。



「これは『一応属性』の魔法じゃな」



 説明しよう『一応属性』の魔法とは、「これ絶対魔法じゃねーし!」というツッコミを入れたくなるが魔法だとでも思わなければ説明ができない現象を総じて『一応属性』の魔法と呼ぶのだ。



「おっまったっせぇー!」



 たができたのは弱そうなデブでメレルにもガルスにも似ていなかった。


 ただ妖刀『獣渡り』を左手に、心の槍を右手に持っていた。


「合体戦士オルラーディン!(ドカーン)」 セリフを言うと同時に背後で爆発が起きた。


「ただのデブにしか見えんが、まあよい行ってこい」


「俺は太ってるから行かないけどね♪」 なんと戦闘拒否。



「キャベツチカカツカム!」 ヒイロの必殺技炸裂。オルラーディン気絶。


「すまんな。

 やはりわっちが闘おう、かっ!」


「わしは宝石を譲って貰えればそれでいいのだが、なっ!」



 両者同時に地面を蹴り、互いに殴り合う。



「お嬢さんに足りないものは、情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、そして何よりもぉー!速さが足りない!」



 ジェルダーの拳がヒイロを捉えた。そして砕く。


 「諦めろ」 それはヒイロの氷で作った囮。


 そのまま背後をとったヒイロがジェルダーを殴る。



「わっちが諦めるのを諦めろ」 それは圧倒的な一言だった。



「ぬしはジャルフレッド王が欲望のために民を蔑ろにし始めた時にすぐに止めるべきじゃったのじゃ。

 ぬしなら殺すことも容易だったはずじゃ」



 手合わせをしてわかったがメレルもガルスも決して手加減したり油断して負けた訳ではない。ジェルダーが単純に強いのだ。



「古い文献で見たが古代都市イツワで最強の英雄は闘わずして王に処刑されたとあったが、この英雄はぬしじゃろ?

 なぜ闘わんかった!」



「王を討てば近隣の村を焼き払うと言われたからだ!

 犠牲を少なくするにはこうするしかなかったんだ!」



「たわけ! 犠牲、犠牲とアホなことを抜かすな!

 犠牲を前提にした正義がないように犠牲を恐れて何もしないのは悪じゃ。

 ぬしは何もしなかったから家族を失ったのじゃろ。

 それでもまだ自分が正しかったと言えるのか?

 結局は自分の失敗ではないか!」


「ぐぬぬ」



 ジェルダーは言い返せない。


 自分はあの時心のどこかで家族と世界を天秤にかけたのだ。


 だから近隣の村の代わりに自分の家族が殺され、自分は永久鳥葬となった。


 それなのに自分が見殺しにした家族を生き返らせるために目の前の世界の崩壊を防ごうとする女性の邪魔をしている自分が正しいのかわからなくなった。




「そんな考えは捨ててさっさとあの世に行くのじゃ」



 そしてジェルダーはヒイロの拳を食らい倒れた。


 ジェルダーの体から血が流れ落ちる。



「あぁ、わしは間違っていたのか。

 お嬢さん、間違いに気づかせてくれてありがとう。

 ようやく家族の元に行ける。わしには出来なかったが世界から争いを無くしてくれ……」



「任せるのじゃ。

 少なくとも宝石を集めて怪物から世界を守ってみせる。

 そしていざという時は救いたい者を間違えない」



「ではさらばだ。

 勇敢なお嬢さん」



 そうしてジェルダーは静かに息を引き取った。



……


…………


………………




「……俺らがいない間にそんな事があったんですね」


「僕もいざという時はヒイロ様を優先しますよ♪」



 二人は変形合体してからの記憶がなかったのでヒイロに気絶させられたこともジェルダーの最後も知らないようだ。


「わっちもじゃ。

 絶対にぬしらを守ってみせるから安心せい」



 二人の自分に対する信頼の様子を見て、ヒイロはさらに固く決心したのだった。


 そして次の宝石を目指して歩き始めるのだった。





おまけ


「ここが死後の世界か、だがわしを知ってる者などとっくに転生しているだろう」



 ジェルダーは地面の感触があったのでとりあえず歩いてみる。



「神様ってのはわしの家族をちゃんと天国へ送ってくれたのだろうか。

 わしは何も出来ずにいまの時代を生きる者たちを犠牲にして家族を勝手に生き返らせようとしたから地獄行きだろうな」



 ただ歩く。その時



「パパ」 「あなた」



 それはジェルダーが遠い過去に助けられなかった家族の声。



「そんな……お前たちはわしをずっと待っていたのか……1000年もの間ずっと」



「あなたは私たちを助けられなかったと言うけど、私たちはあなたを恨んでなんかいませんし、世界を守るあなたを誇りに思っています」



「パパは充分頑張ったんだよ。

 だからこれからはずっと一緒だよ」



 それはもっともジェルダーが聞きたかった言葉。


 幻でも構わない。


 今度こそ家族を幸せにする。


「ありがとう。

 これからはずっと一緒だ。

 今度は決して誰にも奪わせない!」



 小さなことかもしれないけれど、何も救えなかった男は家族を守ることでこの先もずっと幸せに暮らしたそうな。

 以前からずっと入れたかったセリフが入れれた。


 ちなみに古代都市イツワのデザインは「不思議のダンジョン2風来のシレン」の黄金都市をイメージしました。こちらは本当に黄金で出来ており、あちこちにお宝がザックザクです♪


 いつか黄金のコンドルでも出そうかな。

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