第12話:愛さえあれば
私はMH3は男性用ペッコシリーズ位しかいいところが無い未完成なゲームだと思っています。
そしてラギアクルスの陸上戦でのあの弱さ……哀れ過ぎます。
MHP3ではラギアクルスは出ないようなのであまり好きではありませんでしたが、今回少し話に混ぜてみました。これまでモンハン好きなのにモンハンネタを出してませんでしたし。
一つ目の宝石を手に入れたヒイロ達一行は次の宝石を求めてレーダーの示す『王家の墓』に向かう予定だった。……が
「せっかく海に来ておるのじゃし、もっとバカンスを楽しむべきじゃ♪」
「そうですよ。
ヒイロ様の水着ももっと見ていたいし、しばらくはすぐ側の旅館に泊まって遊んでいきましょう」
ヒイロとメレルは遊びモードとなり、その情熱はとてもガルスには止められないものだった。
ちなみにブラボーは暑い日差しに耐えかねて家に帰った。
「でも勤務先である魔王軍が潰れたって事は俺らって客観的に見て無職で遊んでるプータローかも……
ま、いっか♪」
そうしてそれからたっぷり泳いで時間はお昼時となっていた。
3人は近くの海の家で食事中
「しかしこの海は海水浴のシーズンじゃというのに人がおらんのう」
「きっといまブレイク中のアイドルがどっかでコンサートでも開いてるのではないですか?」
「元同僚のスノゥちゃんとラムちゃんがデビューしたみたいですし、僕も見に行きたいな~」
「いや、それは違う!」
と、突然現れたのは海の家の店主だった。
「いま客が少ないのは最近この海に魔物が住み着いたからだ。
金を出すからアンタら倒してくれないか?」
「あーん? おっさん、こんなもっさりした焼きそばしか作れんのに金あるんか?」
「よさんかメレル。
で、幾ら出すんじゃ?」
「えっと、焼きそばの代金を報酬として無料にしようかと……」
店主が言い切る前にヒイロは店主を焼けた鉄板に押し付けた。
「ぬし!わっちらを舐めるでない。
わっちらとて暇じゃないんじゃ!」
「まあ、職場が潰れてヒイロ様の『大魔王』の肩書きも自称になってますし、暇っちゃ暇ですけど」
「はい、ガルス死ね」
ガゴォン
ヒイロに殴られて地面にめり込むガルス。
「まっ、暇つぶしにぱぱっと片付けてやるかのう。
人助けとして」
「ヒイロ様。それって暇だから潰してやるって意味ですよね?」
「よく分かったのう。
メレル+10点♪」
「ありがたき幸せ」
と、こうして魔物退治をする事になったヒイロ達。
「さあ出てこい魔物。
わっちわっちにしてやんよー♪」
するとその言葉が合図になったかのように巨大な津波が
「HAHAHA♪」
「……おいブラボー。
何やってんだよ」
津波の中から出てきたのはサーフィンするブラボーだった。
「うむ、やはり海で泳ぎたかったので日焼け止め塗ってまた来たんだ。
これぞ13のブラボー技の一つ、『波乗りブラボー』……だ」
本人曰わく、『空飛ぶブラボー』もあるそうだ。
「わっちの13のヒイロ技にはかなうまい。
食らえ『悩殺!ヒイロキッス』」
「「「か、可愛すぎる……」」」
「とまぁ、冗談はさておきブラボーよ。
この海はいま魔物が出るそうじゃぞ」
「早速出てきたみたいです……ね」
ブラボーの視線の先には体から電気を発する青く竜のように細長い体型の魔物がいた。
「はははァ。わしをどうするんだってぇぇ?」
どうやら会話可能なようだ
「ほう、お前さんが魔物か。
なぁに要件は簡単じゃ。
死んでくりゃれ。
お前がこの海に来る客を襲うからわっちが頼まれた。
それだけじゃ」
「ヒイロ様。もっと穏便にいきましょうよ。
俺は無駄に闘いたくないです」
「しかし見ろガルスよ。
アイツ旨そうじゃろ♪」
「僕はヒイロ様に従います。
海蛇っぽいし、食べたら夜中に寝付けなくなったヒイロ様が夜這いに来てくれるかもしれないし」
今夜の事を考えてか、メレルは笑みを漏らしだらしない表情だ。
「メレルは随分と発想が貧困だ……ね」
「では勝負といきましょうか。
あなた、ヒイロといったかしら。
あなたとの会話に使った時間をお金に換算するとざっと二億なのよ。
わかる? あなたが二億年働かなきゃ稼げないのよ」
さらに体に纏う雷を強めヒイロ達を睨む魔物。
「わしの名前はラギアクトゥルフ。
戦争を、しましょう」
ラギアクトゥルフは一気に海に潜った。
「ふむ、水中戦が希望か。
3人は待っておれ。
すぐに捕まえてくる」
そうしてヒイロは潜った。
意味があるかわからないが銛を持って。
「善でも悪でも最後まで貫き通した信念に偽りなどはない。
わっちに食われろラギアクトゥルフ」
「食いたきゃ食ってみなさい。
必殺、電気玉」
電気の塊が飛んでくるがヒイロは難なく避ける。
「スローすぎて欠伸が出るのう」
不敵な笑みを浮かべるヒイロはまさに大魔王らしい笑顔だった。
「なぜ避けれるの!?
世界一の電気玉のはずなのに」
ラギアクトゥルフの攻撃は確かに並みの雷攻撃を得意とする者では比較にならない程の強さだった。
しかしそれは一般の人間などに限った話でこのラギアクトゥルフが相手にしているのは正真正銘の大魔王なのだ。
「ちっちっちっ、だが世界じゃあ二番目じゃ。
わっちが格の違いを見せちゃる」
不適な笑みを浮かべ、指を振って否定する。
「氷河時代」
ヒイロは短い呪文の詠唱をしただけなのだが、その一言で海が凍った。
その一言で辺り一帯に存在した生命は悉くその命を凍結させ、闘いは終わった。
「おーい、終わったぞ。
三人とも運び出すのを手伝ってくりゃれ」
氷を砕いて浜辺の3人を呼ぶ。
自分の周りも凍らせてしまったのだがそこは大魔王の怪力によって氷は豆腐のように砕かれていく。
「さすがはヒイロ様だ。
格が違えば核も違う」
メレルは早速凍ったラギアクトゥルフを切り出し始めた。
それに遅れてガルスとブラボーも切り出したラギアクトゥルフの運搬を手伝う。
「新鮮なラギアクトゥルフの肉じゃ。
鮮度が落ちる前にちゃっちゃと料理してもらわんとな」
海の家に行くと店主は居らず代わりに赤い髪の男がいた。
「お、あんたがヒイロさんか?
俺はさっきここを通りかかったらこの店の店主に店番を押しつけられたもんだ」
どうやらこの赤い髪の男もただの暇人のようだ。
「ぬしが誰でも構わん。
この海蛇を料理してくれぬか?」
「へっ、料理に関しちゃ俺は天才だぜ。
なんせ史上最年少で特級厨師の称号を手に入れたからな」
男は鮮やかな手つきでラギアクトゥルフを捌いていく。
「ラギアクトゥルフは適度に脂肪があり、どんな料理にも化けるんだぜ」
「こ、これは凄い。
舞を舞うかのような流れるような手つき、切断面が光輝いている」
普段ヒイロとガルスの食事を作っている自称、料理名人のメレルでさえ、その素早い包丁捌きに目がついていかないのだ。
「ブラボー、俺は調理の様子を見るだけで涎が止まらないんだ」
「奇遇だな。
私も700年生きてきてこれほどの達人に会ったことがない」
調理は続く。ヒイロ達はその様子に感動し、体中の体液を滴らせて食い入るように見つめる。
「完成だぜ! ラギアクトゥルフラーメン一丁上がり!」
男が作ったのはラーメン。
だがその麺は光り輝き、スープは見えないくらい透明度が高く、それでいて芳しい香り。
全員が同時に食う。
そして……
「何じゃこりゃー!
旨すぎるのじゃ!」
「濃厚な味わいながらしつこくないこのスープ!
思わず笑みが零れる」
「軟らかいのに歯ごたえのあるこの麺は一体なんだ!
麺類特有の粉っぽさが一切ない」
「まさにラーメンの革命……だ!」
四者四様に食べ続ける。
「どうだ! ラギアクトゥルフを余す所なく使い、骨をダシにして麺もラギアクトゥルフのすり身を使い、スルメイカを細かく裂いて芯としたから軟らかくてコシのある麺になってるだろ」
その男の笑みは真の料理好きの証。
ただひたすらに料理を続けてきたことを証明していた。
包み込むような愛を感じる料理。
ただ好きで、ただ人に美味しいものを作ろうという意志の表れでもあった。
「「「「ご馳走様でした」」」」
「ぬしは一体何者じゃ。
これほどの腕ならばさぞ有名なんじゃろう」
「名乗る程のもんじゃねーよ。
俺も仲間がこの先で待ってるしもう行くから」
そう言って男は荷物をまとめると去っていった。
「……因果の交差路でまた会おう。
願わくば、ぬしの旅路に旅の神クロンの追い風のあらんことを……」
ヒイロはこれまで神に祈ったことはなかったがそれでも祈らずにはいられなかった。
あの赤い髪の男との再開を……
そして運命の歯車は動き始めた。
シーズン3の超魔王編ではジンとヒイロはどちらも出ますが、ジンがメインで最後の方しかヒイロは出ないのでこの話で二人を会わせておきました。