番外編1:マザー・イジールの脱獄
最近「妹が作った痛いRPG」という動画にハマってます。
あれは天才ですね。私のツボです♪
皆様はかつてケケット村でジン達にやられて刑務所に入れられた山賊のマザーとその親衛隊を覚えているでしょうか?
今回はマザー達のその後の様子をご覧ください。
番外編その1:マザー・イジールの脱獄、はじまり♪はじまり♪
ここはどんな犯罪者も一度入ったら二度と生きては出られない杏鞄刑務所。
その地下深くにある最下層の牢屋に山賊マザー・イジールはいた。
「ではみんな揃った事だし今回の脱獄計画について説明しよう」
マザーの牢屋にはすでに親衛隊のメンバーが集まっていた。
「まず最初に部屋に火をつけて看守を呼ぶ。
すると慌てた看守が刑務所中の牢屋の鍵を開ける。
囚人は一旦地上にある運動場に集められる筈だから、地上に出たらコッソリと建物の裏から塀を乗り越えれば脱獄は完了だ」
自信満々に言うマザーは失敗することを微塵も考えていなかった。
「私はご命令通り武器と鎧を盗み出しておきました」
隊長のユヅが無表情で言う。
付き合いの長いマザー達でなければ彼女がその能面の下に隠したドヤ顔に気づかなかっただろう。
「あのー、ところで私が掘った地下トンネルは何の意味があったのですか?」
この親衛隊副隊長ハルは隊長ユヅが武器防具の奪還任務を受ける前から脱獄用の地下トンネルを掘るように言われていたのだ。
「ん?脱獄は塀を越えるやり方に変更したから地下トンネルはもういらないよ。
ってオガヘーに伝言頼んだけど」
マザーはオガヘーを見る。
「わ、私はソフィアに頼んだ」
そしてソフィアを見る。
「『不伝』私はシーボに頼んだ」
そしてシーボを見る。
「あっれ~伝えた気がしたんだけどな~……」
視線を泳がすシーボ。
「「「「「お前が原因か!?」」」」」
「はう~」
「まあ、そういうことだから悪いねハル。
脱獄が成功したら一番にお前を可愛がってやるから勘弁してくれ」
はにかんだように笑うマザー
「マザー様ぁ♪」
その笑顔を見てしまったらハルにはもうマザーを責めることなど不可能だった。
他の親衛隊達がとろけきった表情をしたハルを羨ましそうに見る。
「おいおい、そんな目で見るなよ」
他のメンバーに向き直って、
「ちゃんと順番に小生が可愛がってやるからよ」
「「「「マザー様ぁぁぁ♪」」」」
まさに驚異、アンビリーバボー。流石は一級フラグ建築士。
「まっ、そういうのは全部脱獄してからだ。
早速今夜作戦を開始する」
そしてその夜計画は実行された。
「おい看守、火事だ。
ここから出してくれ」
「なにぃ!
待ってろ。
いま出してやるぞ」
大慌てで看守が各フロアの牢屋の鍵を開け、囚人達は地上一階の運動場に集められ、看守達の大半が地下の火事の消火作業にあたっている。
「計画通り(ニヤリ)」 そしてマザー達はそれぞれに刑務所の裏に集合した。
「これから外に逃げるぞ。
当面の活動資金は元弁護士の小生が天才的頭脳と模範囚を演じることで刑務所の経理に関わることで、小生の隠し銀行口座に金を移しておいたから大丈夫だ」
なんとも杜撰な刑務所ですが、それだけじゃあ話は終わらない。
このあと杏鞄刑務所が脱獄不可能と言われる理由をマザー達は知ることとなる。
「何処に行くんだ?って、ブロリはブロリは聞いてみたり♪」
マザー達が振り返るとそこには金髪の大男がいた。
「マザー様!
アイツはこの刑務所の看守長のブロリ・コリーです。
まさか最後にこんな化物に見つかるなんて……」
「お終いだ。
みんな殺されるんだ」
これでも億越えの賞金首のマザーの親衛隊をやっているのだから全員それなりに強いのだが身体の底から湧き上がるような恐怖に全員が震えていた。
「へっ、だが小生はここで捕まるくらいなら死ぬ気で闘う!
お前らは先に逃げろ」
「マザー様を置いていく位なら死んだ方がマシです!」
「どうせ死ぬなら私が足止めしますからマザー様達はその間に逃げてください」
「自分よりも強い敵なんて久しぶりだしここは私がいくよ」
「『不闘』全員で逃げる道を探すべきです」
「私は戦闘力低いので任せますね♪」
上からマザー、ユヅ、ハル、オガヘー、ソフィア、シーボ。
「……そういえば地下トンネルの伝言を伝えなかったシーボになんの罰も与えてなかったわね」
そう言ったのは結局地下トンネルを完成まで掘り続けたハル。
「うむ、ではシーボ。
あとは頼んだぞ」
そう言うとマザー達はシーボを残して梯子を作り始めた。
「うー……わかりましたよ。
私が相手をします。
なあに大丈夫。
すぐに追いつきますよ」
少し渋っていたシーボだが、ブロリの相手をする事となった。
「あとから追ってこいよ」
「別にあれを倒してしまっても構わないんでしょ♪」
シーボはカッコ良く言ったつもりだろうがマザー達はこのあとの展開を想像して表情を曇らせた。
だがそのまま塀を越えることにした。
「話は済んだか?」 ブロリは待っていてくれたようだ。
「ええ、では始めましょうか」
最初に動いたのはシーボだった。
だがシーボの拳がブロリに触れた瞬間、拳が焼け爛れた。
「うわぁぁぁぁぁ!」あまりの痛みに地面を転がる。
「教えてやろう。
ブロリの体は生まれたばかりのレベル1の時からすでに戦闘力10万というパワーを持ち、いまはレベル9998なのだ。
つまりブロリの身体から発せられる闘気は毒と同じようなものなのだ」
ブロリはさらに全身から毒に等しい闘気を発し、シーボに近づく。
「うんたん♪うんたん♪」 手のひらに集めた気をぶつける。
「おっと、少し丁寧になりすぎたか」
だが土煙が晴れたあと、シーボは立ち上がった。
「ふむ、頑丈だな。
何か言い残すことはあるか?」
「本望」
そして互いに最後の一撃を放つ。
片方はトドメを。
もう片方は惚れた主君を無事に逃がすため。
「……私の無二の主マザー様。
このシーボ・フラグ、生涯一度の(もっとあるかもしれないけど)不覚を御身を逃がす為の闘いに取った愚をお許しください」
そうしてシーボ・フラグは主君マザー・イジールと仲間を逃がす為に闘い死亡した。
「シーボ、お前のことは忘れないぞ……」
シーボの奮闘のおかげで無事に脱獄に成功したマザー達はこんな時のために用意していた隠れ家の中でシーボの死を知った。
そうして杏鞄刑務所初の脱獄事件は政府の体裁のためにもみ消されたため、翌日の新聞に載らなかった。
だがマザー達の心には消えない傷が残った。
~三日後~
「只今帰りましたー♪」 シーボが帰ってきた。
「無事だったのか!?」
「私は戦闘力が低い代わりに身体を液体に出来るので地下水脈を通って帰ってきました」
もう見れないと思っていたシーボの笑顔を見たマザーは感激のあまり抱きついた。
「もう離すもんか。
お前が明日死ぬなら小生の命は明日まででいい。
お前が今日を生きてくれるなら小生もまた今日を生きよう」
泣きじゃくるマザーとそれを抱きしめるシーボ。
「ええ、マザー様……私も、同じなのです……。これからは静かにみんなで平和に暮らしましょう」
こうして脱獄に成功マザー一味は末永く平和に暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし♪
さて、次回は番外編その2、スノゥとラムとショーンのその後の話です。
でも読んでない本も溜まってるし、次の更新は三日後あたりかな。