表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/43

第8話:勇者の悲しみ

 これにて一応ジン・コーシュの冒険は終わりです。が、少し番外編を挟んだらシーズン2が始まります。

 ジンの運命やいかに!?

「では後半戦を始めようではないか」



 魔王軍から出てきたのはいまだローブで素顔の分からない四天王の一人。



「じゃあここは私が行くからジンは見てなさい」



「それがあんな事になるなんて夢にも思わなかったのです……」



「妙なナレーション入れるんじゃないわよ」



「ハハハ、おいどんの相手は随分元気なガキじゃのう」


 四天王の一人がローブを脱いでいた。


「おいどんは魔王軍四天王一の読書家のソコー・シテン・ノーデ・ソコっちゅう者じゃ。

 気軽にソコソコと呼んでくれい」



 ずっと隠れていたソコソコの素顔は意外にも男前だったが髪型が死ぬほど似合っていなかった。



「ソコソコよ。

 ここまではこちらの連敗だ。

 決して負けるなよ」



「OK!

 この命に代えてでも」



「ジン。

 私が勝ったらアンタも魔王との決着をきちんとつけるのよ」



「ああ、俺は勇者だ。

 魔王には負けないぜ」



 そうして両陣営の準備が整い闘いが始まった。



「ソコソコぱーんち」


「絶対バリア」


 ヒナの張った障壁とソコソコの拳がぶつかる。


 だがソコソコの拳は障壁を無視してヒナに届いた。



「きゃっ!」 激しく殴り飛ばされ、ヒナの口の端から血が滴る。



「なぜ?という顔をしているな大魔術師よ。

 おいどんは『相手の体力、防御力に関係なくそこそこの攻撃を当てる』能力を持っているんじゃ。

 障壁を張ろうが避けようが必ずそこそこのダメージを与えるんじゃよ」



 そこからはソコソコの独壇場だった。


 ただでさえ障子紙程度の耐久力しかないヒナの小さな身体を執拗になぶり続け辺りが血に染まっていく。


「くそっ!」



 ジンは助けに行こうとするがヒナの目がまだ勝負を諦めていないので手助けするのが躊躇われる。



「さあ、これでトドメといくぞい」ソコソコが大技を出そうとする。



「……悔いはないわ。

 ジンのために死ぬことに悔いはない。

 魔王を倒す日のために精一杯生きてきた」それは覚悟の言葉



「ならばそのまま死ぬがよい必殺、魍鬼羅刹炎」



 そして放たれたソコソコの必殺技はヒナに当たる直前で消えた。



「ユビキタス・デル・ウィンデ!」



 ソコソコには聞こえなかっただろうがジンには聞こえた。


 それはヒナの反撃の狼煙。



「アンタは確かに強いわ。

 防御力も体力も皆無の私にはどうしようもない。

 私一人だったら勝てなかったでしょうけどジンとの愛情パワーがあれば負けるはずないわ」



「ば、馬鹿な……おいどんの技は防御不可能なはず」



「ええ、防御は無理だったわ。

 だから私に攻撃が届く前に私は自分の分身を作って分身を盾としたのよ」


 ヒナはさらに分身を増やす。


「「じゃあ死になさい」」



 ソコソコの意識はそこで途絶えた。


 ソコー・シテン・ノーデ・ソコ。青汁と夜空が似合うオトコでした。



 同時にヒナも倒れる。


「ヒナ!

 なんでこんな無茶を!!

 待ってろ、いま治療してやる」



 ジンは慌てて倒れたヒナを抱き起こすが



「うん、それ無理」 ヒナは普段の快活な笑顔で微笑んだ。



「だって、私は本当に死んじゃいそうなんだもん。

 自分の身体のことくらい分かるわ」



 その笑顔は儚げでジンにもヒナがもう助からないことが理解できた。



「……俺は……嘘つきだ。

 お前を……幸せにするって言ったのに……」



「そんなことないわジン。

 一緒に逝くことは出来ないけど先に逝って待ってるね」



 ほんの一瞬ヒナは哀しそうに笑って



「こんな私を愛してくれてありがとう」



ヒナの身体から力が抜けた。



「勇者よ、隙だらけだぞ」



 突然のことにジンは反応が遅れる。 そして魔王ダパディの剣がジンの胸を貫いた。


「ぐはっ」



 血を吐きながらも急いで距離をとり、ダパディを見る。


 その背後には血を流し倒れているタイツァーとリースの姿があった。



「タイツァー、リース!お前らまで勝手に死ぬことは許さねえぞ!」


 だが二人からの反応は無い。

 

 ジンも気づいていたが二人からは生気を感じなかった。



「かーかっかっかっ!

 こんな1対1の試合など余興に過ぎぬ。

 元々我一人で充分だったのだからな」



 魔王ダパディは勝ち誇った顔でそう言うとトドメを刺すべくジンに切りかかってきた。


 だがその刃がジンに届くことはなかった。


「はあっ!」



 かけ声とともにジンの真っ赤な髪が白くなり、その黒い瞳は真っ赤に染まっていた。



「穏やかな心を持ちながら怒りによって目覚めた勇者。

 さしずめスーパージンってところだな」



 髪は白く逆立ち、目は赤く染まったジンは金色のオーラを出しながら魔王ダパディを睨む。



「ふん、どちらにしろ貴様には死んでもらうぞ勇者よ」



 再びダパディは剣を振り上げたが今度はジンの身体触れた途端に攻撃が跳ね返り、腕の骨が折れた。



「ぴぎゃぁぁぁ!」



「阿呆が、たかが腕一本で騒ぐな」



「ゆ、勇者よ。

 貴様何を?」



腕を押さえながらダパディが聞いてくる。



「これか?

 俺はいまこの瞬間で新たな能力『向き(ベクトル)操作』ってのに目覚めたんだよ。

 デフォは反射にしてあっけど」



「く、かくなる上は……勇者ジンよ、実は我はお前の父親なの「知ってるよ」だ……って、はあ!?知ってたの?」



「おう」



「ならば仕方ない。

 甘んじてお前に殺されよう。

 だが我を倒しても第4、第5の魔王が……」



「っておい、ちょっと待て。

 第2、第3じゃねーのかよ!」



「我の上には大魔王と超魔王がすでにいる。

 息子よ、頑張るのじゃ。グフッ……」



 そう言って魔王ダパディは息絶えた。



「魔王は死んだが仲間もみんな死んじまった……

 そうだ!

 この新しいベクトル能力を使えば過去に戻れるかもしれない」



 ジンは現在から未来に「向かって」進んでいる時間の「向き」を現在から過去へと進めてみることにした。



「おー、戻ってる戻ってる♪」



 魔王軍の飛行船が来たばかりの所まで戻ることに成功した。



「スノゥちゃんをいーじめた「いや、それさっき聞いたしww」あべし」



 ベクトル能力を使えるスーパージンは飛行船に飛び乗って一瞬で飛行船を撃墜した。



「くそ、勇者よ、聞くがいい我はお前の父親「それもさっき聞いたってww」ひでぶ」



 こうして魔王軍は壊滅した。



「さっすが私のジンね。

 今夜は宴よ♪」



 いつも通り元気なヒナ。



「某もまさかジン殿の本気がこれほどとは思わなかったぞ」



 感心しているタイツァー。



「私が仲間になるに値するリーダーね。

 これからもよろしくお願いしますわ」



 考えてみればまだ会ったばかりのリース。



「みんな俺の大事な仲間だぜ。

 俺達の冒険はまだまだ続く!」



 大魔王と超魔王は表立った行動をしていなかったので実質魔王軍を壊滅させたジンは名実共に勇者として認められ、このあとも冒険を続けるのでした。





~その頃魔王城では~


「グスン……アタイは誰にも負けたことなかったのに勇者なんかに負けちゃうなんて」


 

 勇者に負けたあと城に逃げ帰ったスノゥ・ツンデ・レーラは自室にこもってずっと泣いていた。 ちなみにいま城にいるのはスノゥ一人だけ。


 

 ピンポーン♪ 城の玄関の呼び鈴がなった。



「郵便屋さんかな?は~い今出ますね」スノゥが玄関を開けると



「俺様だよ、バスラだよ」



 バスラだった。



「キャー!」



「待ってくれ、俺様は君に惚れたんだ。

 だからメルアドを聞きにきただけなんだ」



「……この魔王城は高度1万mに浮かぶ浮遊城なのに人間のアンタがどうやって来たの?」



「それは勿論、右足を上げて、次に左足を最初に上げた右足が下がる前に上げるというのを繰り返して空を走ってきたんだよ」



 さらっと言うバスラ。



「(こんなに必死になってアタイを追ってきてくれるなんて……これが鯉!?)」



 恋愛経験0のスノゥは真っ赤になって照れた。


「そりゃ鯉のあら煮とか鯉コクは好きだけど、それくらいが関の山で断じて……「俺様は本気なんだ」ひゃう!」 気付けば目の前には真剣なバスラの顔があった。



「えっと、その、アドレスくらいならいわよ。

 その代わり浮気とかは絶対ダメなんだからね!」



「おうともよ。この世のあらゆる不幸からスノゥを守る。

 もしこの世界がスノゥを不幸にするってんなら、たとえ世界を敵に回してでもそのふざけた現実をぶち殺す!」



「……あぁ、もしかしたらアタイは初めてあったときからアンタに惚れてたのかもね。

 いいよ、これからよろしくね♪バスラ」

こうして別の場所では幸せなカップルが出来たのでした。

るろ剣では斎藤が好きです。なので今回の話にも少し混ぜたけど気付いた人いるかな。

 次は番外編でマザーかスノゥのその後の話を書きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ