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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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殺戮軍師の戦記

作者: 結城 からく
掲載日:2026/01/31

 補佐官のミルは遠慮がちに口を開く。


「あの、ウラガ軍師……」


「何でしょう?」


「これは果たして、戦争と呼んでいいのですか」


 彼らの眼前には虐殺が繰り広げられていた。

 軍師ウラガの手から光球が放たれ、それが遥か前方の敵軍に炸裂する。

 光球が爆ぜるたびに数百の敵兵が木っ端微塵に吹き飛んだ。


 涼しい顔で手をかざすウラガは皮肉交じりに説明する。


「我らが王国軍と憎き帝国軍が顔を突き合わせて殺し合っている……これを戦争を呼ばずに何と表現すべきか、私の貧困な発想力では思い浮かびませんがね」


「殺し合ってるって、一方的な蹂躙じゃないですか」


「帝国軍が軟弱な策を過信した結果ですね。戦争において愚かさは罪ですから」


 そう語るウラガの背後には、無数の死体が折り重なっていた。

 此度の戦争のために連れてこられた捕虜と犯罪奴隷である。

 死体の後ろにはまだ生きている者が、恐怖に染まった表情で拘束されていた。


 ウラガの魔術は単純明快だった。

 事前に契約を結んだ相手の魂を代償に、己の魔術を一度だけ超強化する。

 つまり彼は、光球を放つたびに捕虜と犯罪奴隷を犠牲にしているのであった。

 次々と倒れる死体を横目に、ミルは怯え切っている。


 振り返って"残弾数"を確認しつつ、ウラガはミルに尋ねた。


「ところで私の二つ名をご存じですか?」


「えっ、ああ……その……」


「遠慮なく仰ってください。別に怒りませんので」


 促されたミルは渋い顔で悩む。

 やがて言いづらそうに小声で答えた。


「さ、殺戮軍師……ですよね」


「はい、そうです。殺戮軍師です。敵も味方も殺しまくるのが由来らしいですよ」


「な……なるほど。酷い話ですね」


「いやいや、とんでもない。私にぴったりの呼び名だと思っています。むしろ誇らしいくらいです」


「は、はぁ……」


 微笑むウラガを見て、ミルは曖昧な反応をするしかなかった。


 その時、敵軍にて異変が生じた。

 ウラガの光球を真っ二つに切断し、一直線に突進してくる者がいたのだ。

 それは筋骨隆々な大柄の女戦士だった。


 ウラガは感心した様子で笑う。


「おや。面白い方がいますね」


 五つの光球が女戦士に殺到する。

 女戦士は雄叫びと共に大剣を振り回した。


「おおおおおおおおおぉぉぉッ!」


 豪快な一撃が光球をまとめて消し飛ばす。

 異常な加速で迫る女戦士は、既にウラガの目前まで接近していた。


「全力を出さないと死にますね」


 残る捕虜と奴隷の命をすべて消費し、ウラガは己の肉体を強化した。

 持参していた杖を掲げ、叩き込まれた大剣を遮る。


 両者の武器が衝突し、周囲に砂嵐を引き起こした。

 ウラガは軽く後ずさっただけで無傷だった。

 攻撃に失敗した女戦士は感激する。


「お前、強いな! 斬撃を止められたのは生まれて初めてだっ!」


「そちらこそ素晴らしい膂力ですね。人型の魔獣かと思いましたよ」


「ハハハハッ! 褒めても何も――いや、結婚してくれ!」


「……はい?」


 唐突なプロポーズにウラガが怪訝な表情になる。

 彼は探るように尋ねた。


「今、何とおっしゃいました?」


「私はフゥア! お前と結婚したい! 強い男が好きなんだ!」


「我々は敵同士ですが」


「じゃあ王国に寝返る! それなら問題ないだろう!


 女戦士フゥアは目を輝かせて主張する。

 人生最大の困惑を味わうウラガだったが、面白そうなので婚約を承諾した。

 世界最強の夫婦が生まれた瞬間だった。

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