【第3話 スキルレンタル業】
朝のギルドは、いつもより騒がしかった。
掲示板の前に、長蛇の列ができている。
──**「24時間限定 A級スキルレンタル 1時間100万ゴールド」**──
俺が、昨夜のうちに貼った張り紙だ。
エレナの1000万ゴールドを元手に、
**「スキルレンタル業」**を始めた。
仕組みは簡単。
1. 俺が強者のスキルを**【スキルコピー】で奪う
2. それを24時間だけ弱者に貸し出す
3. 1時間100万ゴールドで貸与
4. スキルは自動消滅**するので、返却不要
リスクゼロで、俺は儲かる。
列の先頭は、D級冒険者の少年だった。
「レ、レインさん! 【雷神の槍】を……1時間だけ!」
少年は、震える手で100万ゴールドを差し出す。
俺は、**エレナからコピーした【雷神の槍】**を、少年に転写した。
──**【スキルコピー】発動 残り時間:23時間59分**──
少年のステータスに、**【雷神の槍】**が追加される。
少年は、涙を浮かべた。
「これで……ゴブリン王を倒せる!」
少年は、依頼書を掲げた。
ゴブリン王 討伐
報酬:500万ゴールド
通常ならC級パーティが必要。
だが、少年は1時間でクリアした。
俺は、100万ゴールドをゲット。
少年は、400万ゴールドをゲット。
Win-Win。
列は、どんどん伸びる。
──10人、20人、30人。
俺は、次々とスキルをコピーして貸し出す。
【雷神の槍】
【氷狼の咆哮】
【岩石肌】
【風刃の舞】
24時間で、30件のレンタル。
3000万ゴールドの収入。
俺の懐は、一気に3900万ゴールドに。
──1億の約40%。
だが、問題が起きた。
昼過ぎ。
ギルドの扉が、**バーン!**と開いた。
「おい! レンタル詐欺だ!」
怒鳴り込んできたのは、B級パーティのリーダー、バルドだった。
「俺が貸した**【岩石肌】**が、1日で消えた!
返金しろ!」
周囲がざわめく。
俺は、冷静に答えた。
「契約書に書いてあるだろ?
**『24時間以内に自動消滅』**って」
バルドは、顔を真っ赤にした。
「そんな細かい字、読めるか!」
俺は、肩をすくめた。
「読めないなら、冒険者失格だ」
周囲が、クスクス笑う。
バルドは、剣を抜いた。
「だったら、力ずくで──」
──その瞬間。
エレナが、バルドの前に立った。
「B級が、F級に喧嘩売るの?」
バルドは、凍りついた。
エレナは、A級だ。
しかも、昨日俺が助けた恩人。
バルドは、剣を収めた。
「ちっ……覚えてろよ」
バルドは、逃げ出した。
俺は、エレナに頭を下げた。
「助かった」
エレナは、微笑んだ。
「商売敵が増えるのは、成功の証だ」
夕方。
レンタル業は、さらに拡大した。
俺は、**「スキルレンタルギルド」**を設立。
エレナを副代表に据え、
強者のスキルを組織的にコピー。
──A級パーティ10人と契約。
彼らのスキルを、24時間だけ借りる。
対価は、レンタル収入の20%。
A級たちも喜んで協力。
なぜなら、彼らもレンタルで稼げるから。
──Win-Win-Win。
俺の懐は、一気に1億ゴールドに到達。
99999999ゴールド → 100000000ゴールド。
──1億達成。
俺は、神の自動販売機の前に立った。
ダンジョン最深部。
販売機は、冷たく光る。
俺は、1億ゴールドを投入した。
──ガチャン。
画面に、抽選結果が表示される。
【おめでとうございます!】
【外れスキル:花クラッカーを獲得!
俺は、呆然とした。
花クラッカー。
威力:微弱 範囲:2m クールダウン:1時間。
ゴミスキル。
俺は、販売機を殴った。
──ガン!
販売機は、無反応。
そのとき、小さな文字が浮かんだ。
『同一人物は1スキルまで』
俺は、凍りついた。
もう、買えない。
しかも、外れスキル。
俺は、笑った。
笑いが止まらなかった。
──1億ゴールド、パー。
だが、後悔はない。
なぜなら、俺はもうチートを必要としていない。
24時間で消えるスキルを、
24時間全力で使いこなす。
それが、俺の強さだ。
俺は、販売機を背に、
ギルドに戻った。
──新たな依頼が待っている。
【緊急】ドラゴン 首都襲撃
報酬:1億ゴールド。
俺は、笑った。
24時間だけの天才は、
24時間だけの最強になる。
【続く】




