【第2話 24時間だけの天才】
翌朝、俺はギルドの掲示板を睨んでいた。
手には100万ゴールドの札束。
昨日までの俺なら一生稼げない金額だ。
だが、1億にはまだ遠い。
──9999万ゴールド。
ため息が漏れる。
「おはよう、レイン! 昨日はすごかったね!」
ミリアが駆け寄ってきた。
「A級のエレナさんを助けて、雷竜を倒したって!?」
周囲の冒険者たちが、俺を見る目が変わった。
F級のゴミスキル持ちが、一夜にして英雄。
だが、俺にはわかる。
残り時間:21時間12分。
【雷神の槍】が、刻一刻と消えていく。
「レイン、単独依頼受けてみない?」
受付の姉さんが、ニヤリと笑った。
「B級相当の緊急依頼。
報酬300万ゴールド。
期限は今日中」
つまり、【雷神の槍】が消えるまで。
俺は、依頼書を見た。
【緊急】ゴブリン大群 街道封鎖
報酬:300万ゴールド(成功時)
期限:本日23:59まで
ゴブリン大群。
通常ならB級パーティ5人で挑む規模。
だが、俺には24時間限定のA級スキルがある。
俺は、即座にサインした。
──行く。
街道。
ゴブリンが数百体、黒い波のように蠢いている。
俺は、一人で立っていた。
「レイン、一人!? 自殺行為だ!」
近くの商人が叫ぶ。
だが、俺は笑った。
残り時間:19時間44分。
俺は、**【雷神の槍】**を構えた。
──ズドン!
雷が落ちる。
ゴブリン100体が、一瞬で灰に。
商人たちが、口をあんぐり開ける。
「な、なんだあれ……!?」
俺は、次々と槍を放つ。
ズドン! ズドン! ズドン!
ゴブリン大群が、10分で全滅。
街道が、静寂に包まれた。
商人たちが、震える手で300万ゴールドを差し出す。
俺の懐は、一気に400万ゴールドに。
だが、**【雷神の槍】**は、残り17時間。
──まだ、終わらない。
ギルドに戻ると、新たな依頼が貼られていた。
【緊急】オーク王 森の奥
報酬:500万ゴールド
期限:本日23:59まで
オーク王。
A級モンスター。
通常ならA級パーティ10人が必要。
だが、俺は笑った。
残り時間:15時間。
──行く。
森の奥。
オーク王が、巨木のような棍棒を振り上げる。
俺は、**【鑑定】**を発動。
──**弱点:首の後ろ 耐性:物理50%**──
雷属性は通用しない。
だが、**【雷神の槍】**は、雷属性じゃない。
──槍そのものが武器だ。
俺は、雷を纏った槍を、投擲した。
──グサッ!
オーク王の首の後ろを、正確に貫く。
巨体が、ドサリと倒れる。
討伐証明書を手に、俺はギルドに戻った。
500万ゴールドゲット。
合計900万ゴールド。
──1億の1/11。
だが、**【雷神の槍】**は、残り3時間。
夜。
俺は、酒場で一人飲んでいた。
周囲の冒険者たちが、俺を囲む。
「レイン! 今日だけで3件のA級依頼をクリア!?」
「24時間だけの天才って呼ばれてるぞ!」
俺は、苦笑いした。
残り時間:1時間。
【雷神の槍】が、消えようとしている。
──明日、俺はまたF級のゴミスキル持ちに戻る。
だが、俺は決めた。
明日も、奪う。
強者のスキルを、24時間だけコピーして。
依頼をこなし、金を稼ぐ。
1億ゴールドなんて、買う必要はない。
俺は、チートを“奪う”。
──そのときだった。
酒場の扉が、静かに開いた。
入ってきたのは、昨日助けたエレナ。
彼女は、俺の隣に座った。
「レイン……【スキルコピー】、か」
俺は、凍りついた。
エレナは、微笑んだ。
「24時間で消えるスキル……
でも、24時間あれば、
世界を変えられる」
彼女は、小さな袋を差し出した。
中身は、1000万ゴールド。
「次のスキル、貸してやる」
俺は、目を丸くした。
エレナは、囁いた。
「チート販売機の抽選、
外れスキルしか出ないって知ってる?」
俺は、息を呑んだ。
エレナは、続けた。
「本物のチートは、
奪うものだ」
俺は、笑った。
──仲間ができた。
24時間だけの天才は、
24時間だけの最強になる。
【続く】
【第2話 終わり】
(次話予告:「スキルレンタル業」 レイン、強者のスキルを“貸し出す”商売開始!)




