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第42話 嘱託職員

 M警察署は、奥田パニックで二日間機能しなくなる。現在も二割の警察官がショックで寝込んでいる。署長は、本部に頭を下げて応援をもらい、難局をしのいだ。

 屈辱だった。署員が女を署内に連れて来ただけで署員が恐慌に陥り、仕事が出来なくなるなど恥ずかしい話だ。奥田を知らない者が聞けば笑うだろう。

 ところが本部は黙って応援を出してくれた。本部が何を考えているのかと考えると怖い。

 署長は野間係長を署長室に呼ぶ。

 「なぜ呼ばれたかわかっているかね。」「もちろんです。旧磯浦トンネルの仕事を無地にこなしたので、お礼をいただけるのですね。」

 「君には記憶力がないのかね。奥田君の件だよ。」「あれは、私の手には負えません。」

 「部外者の女が入ってきているのだぞ。問題だろ。」「彼女のおかげで奥田部長の暴走が抑えられています。」

 「一体、あの女は何なのだ。」「彼女は奥田部長の良心です。」

 「奥田君に良心は存在しないのか。」「あると思うのですか。」

 「奥田君にはサイコキネシスしかないのか。」「はい。」

署長は引き出しを開けて、胃腸薬を飲む。そして、女の処遇をどうするのか考える。野間係長が署長の心を読んだかのように言う。

 「奥田の女、住吉ひじりは臨時の嘱託職員として雇えばよいかと思います。」「野間君、良い考えだ。後は頼むぞ。」

署長は厄介ごとを野間係長に丸投げする。野間係長は、署長室を出ながら、ほくそ笑む。署長は野間係長の思うままの指示を出してしまったのだ。

 刑事課に戻ると険悪な雰囲気が漂っていた。刑事課員は、イラついている。オカルト係の席では奥田部長がひじりと楽しそうに会話している。

 野間係長が刑事課に入って来ると刑事課長が待っていたように言う。

 「野間君、あれを何とかしないか。」「あれとは何でしょう。」

 「奥田のことだ。なぜ部外者がいる。つまみ出してくれ。」「それは出来ません。」

 「なぜだ。」「彼女、住吉ひじりは嘱託職員になりました。」

 「なにー」「住吉がいれば、奥田部長の暴走が止められます。」

 「そうか・・・ならば仕方がないな。」

刑事課長は、だまされている気がするが、これ以上危険物に近づかないようにする。さらに、野間係長は奥田部長の光を浴びて半透明になっている富貴巡査に耳打ちをする。

 すると富貴巡査は顔を赤くしながら立ち上がるともじもじしながら言う。

 「男の嫉妬はみっともないなー、私は男らしい人が好きかなー」

言葉は野間係長に教えられた言葉を棒読みしたセリフだった。しかし、刑事課員の態度が変わる。部屋にこもっていた険悪な雰囲気も消える。

 俺たちには、まだ富貴巡査がいたのだ。男らしいところを見せてやる。ある者は仕事に打ち込み。筋肉に自信がある者は上半身裸になってポーズを決める。

 刑事課長は、仕事が終わったら胃腸薬を買いに行こうと考える。

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