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第39話 火車

 火車は車の横に付けて離れない。旧磯浦トンネルは車一台分の幅しかない。このままいけば、どちらかがトンネルの入り口で壁に激突することになるだろう。

 野間係長が半田部長に指示を出す。

 「このままでは、車が壁に激突するわ。何とか火車のスピードを遅くして。」「分かりました。何とかします。」

半田部長は紙片を10枚飛ばすと10匹の鳥に変わる。鳥は飛んでいき、火車の前方に出る。鳥は真直ぐ火車に突っ込んでいく。車を引く鬼は炎を吐いて式を焼いていく。

 7匹の鳥が焼かれる。残った3匹の鳥が鬼をくちばしと足の爪で攻撃する。鳥に鬼を倒す力はないが、走る邪魔にはなる。鬼は右手で鳥を捕まえると握りつぶしていく。

 鬼はとうとうすべての鳥をつぶすが火車は車の後方に下がることになる。火車は加速して追い上げる。

 トンネルには、車が最初に突入して、次に火車が突入する。

 「半田部長、上出来よ。私も出ます。」「火車は私が倒します。」

 「あなたの式では高速で動く相手には不利でしょ。」「しかし・・・」

 「トンネルを出たところで仕掛けなさい。」「はい。」

半田部長は何としても火車を仕留めたい。陰陽師の自分が役に立つことを屈指の霊能者である野間係長に見せつけたいのだ。半田部長は10枚の人型の紙片を飛ばすと10匹の鬼に変わる。

 鬼たちはトンネルの出口で構える。最初に車が出てくる。鬼たちは素早くトンネルの出口を塞ぐ。そこへ鬼の火車が飛び出してくる。

 式の鬼たちは火車の前に立ちはだかるが、火車は止まらない。式の鬼たちははじき飛ばされ、紙片に戻るか、火車の車に掴まって粘ろうとするが炎に燃やされてしまう。

 火車のスピードは落ちたが、前方を行く車も急カーブの手前で減速する。そこへ火車が追突する。車は横滑りして道の外に向かって飛ばされる。火車はその内側を回って車を抜き去る。

 車が道路わきの観客たちに向かって飛び刺そうとするが、突然、浮き上がる。ナビゲーターがドライバーに言う。

 「止まったぞ。ナイスだ。」「俺じゃない。何だこれは。」

奥田部長がひじりに自慢げに言う。

 「どうですか。私のサイコキネシスは。」「素晴らしいです。でもすぐに降ろした方が良くありませんか。」

 「そうですね。あなたのいう通りです。」

奥田部長は車を降ろす。すると車は完全に止まっている。いつもなら奥田部長のサイコキネシス自慢が始まってトラブルになるがひじりのおかげで観客も「車が停止する時に浮いたような気がした」と思うだけで無事終了する。オカルト係内では、ひじりの認識が変人から頼れる奥田部長の安全装置に変わる。



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