第30話 旧磯浦トンネル
旧磯浦トンネルは明治時代に造られ、昭和になって現在の磯浦トンネルが造られ国道が通り、旧磯浦トンネルは使われなくなり、地元の住人がたまに利用するほどの交通量となった。
しかし、旧磯浦トンネルは全国的に有名になる。それは、トンネルとしてでなく、心霊スポットとしてだ。ユーチューバーが実況中継したり、SNSの書き込みで様々な心霊体験がつづられていた。
M警察署署長は、ショッピングモール件で頭を抱えていた。エリアマネージャーからクレームの電話があり、野間係長に対応を丸投げしたのである。
あれから1週間、野間係長から報告はないし、エリアマネージャーからも電話はない。どうなっているか確認したいが結果を聞くことが怖い。そこへ本部からの電話がある。
「ショッピングモールことは聞いたよ。」「申し訳ありません。事故でして。」
「君は何を言っているんだ。野間係長はよくやっていると社長自らお礼に来たよ。よくやってくれた。」「ありがとうございます。」
署長の暗い気持ちが晴れる。だが、話には続きがあった。
「君は旧磯浦トンネルは知っているかね。」「幽霊が出るとか噂は聞いています。」
「昨年、あそこはラリーのコースになったんだか、事故が起きてね。祟りだとか噂が流れて困っているんだ。」「と、申しますと。」
「分からないのか。今年もラリーであそこで事故の発生はまずいんだよ。」「分かりました。オカルト係に調査させます。」
「違うよ。幽霊はどうでもいいから、あそこで事故を発生させないようにしてくれないか。」「それをオカルト係にやらせろと。」「分かっているじゃないか。頼むよ。」
署長のすっかり白くなった髪が、パラパラと机の上に抜け落ちる。署長は野間係長を署長室に呼ぶ。野間係長が署長室に入ると一言いう。
「署長、髪の毛の量が減っていませんか?」「誰のせいだと思っているんだ。私は・・・いや、何でもない。ショッピングモールではよくやってくれた。」
「ありがとうございます。手をまわした甲斐がありました。」「何をしたんだ。」
「知りたいですか。」「いや、聞きたくない。」
「さすがは署長です。」「何を褒めているのかね。それより、新しい仕事だ。期待しているぞ。」
「どのような仕事ですか。」「旧磯浦トンネルがラリーのコースになっている。昨年は事故が起きている。今年はあそこでの事故を完全に防いでもらいたい。」
「これは旧磯浦トンネルを調査するだけでなく。ラリー本番も事故を防がないといけませんね。」「そうだ、頼むよ。」
野間係長は少し考えてから答える。
「遠くですし、往復するだけで一日が終わってしまいますわ。」「分かった。経費は全て認める。」「受けます。」
野間係長は嬉々として部屋から出ていく。署長は渋い顔で野間係長の後ろ姿を見る。野間係長は戻ると富貴巡査に言う。
「オカルト係で旧磯浦トンネルへ行くわよ。近めの所で温泉旅館を予約して、ラリー当日まで泊まるからいいわね。」「そんなことしたらすごい金額になりますよ。」
「全て、経費で落とせるから良い部屋をとってよ。」「分かりました。」
刑事課員は野間の奴、署長を脅したなと考える。刑事課長は見て見ぬふりをしている。




