第2話 駐在さんの回想2
あれは、お年を召したご婦人の通報から始まった。交番から2名の警察官がご婦人の家に到着して話を聞く。
「財布を盗まれたそうですが、どのように盗まれたのですか。」「私がこの部屋のテーブルの上に財布を置いておいたら無くなってしまったんだ。」
「その時、おばあちゃんは何をしていたのですか。」「私かい、ずっとテレビを見ていたよ。」
「誰か部屋に入ってきましたか。」「大きな声で言えないけど隣の嫁さんが天井から入ってくるんだよ。」
「入ってくるところを見たのですか。」「素早いのだから見えるわけないだろ。」
「どうやって天井に上がるのですかね。」「あの木を伝ってくるんだよ。」
ご婦人は隣の家の大きな木を指さす。警察官が見ると柿の木の枝が家のひさしに向かって伸びている。柿の木の枝は折れ易い。人間には不可能だ。
「あの枝を伝ってくるんだ。」「おばあちゃん。枝が折れてしまいますよ。」
「あの嫁さんは身軽だから。」「そうですか。」
警察官は一応天井を調べるが異常はない。
俺はドロボウ被害発生と連絡を受けてご婦人の家を訪れて、先に到着していた警察官に事情を聴く。そして、俺はご婦人がボケて財布を無くしたのではと思い質問する。
「おばあちゃん、財布は探しましたか。」「あんた誰だね。私を疑っているの。」
「私は刑事の内海です。おばあちゃんのことを心配して聞いています。」「私は悪くないよ。犯人は隣の嫁さんだよ。」
俺は、このままでは話が先に進まないと考え、質問を変える。
「おばあちゃんは誰と住んでいますか。」「1人だよ。みんな家を出てしまったよ。」
「そうですか。」「上の子なんか東京の大学を出て実業家と結婚したんだ。」
「すごいですね。娘さんと連絡は取っていますか。」「いい子でね。毎日電話で話しているよ。」
「娘さんの電話番号を教えてください。」「電話のところに書いてあるよ。」
俺は電話番号を確認するとスマホで電話する。
「M警察署の内海と言います。佐藤かつさんのご家族でよろしかったでしょうか。」「はい、長女です。」
「かつさんが財布を盗まれたと言って警察に連絡をしたのですが。」「これは申し訳ございません。母は痴ほう症でお隣の奥さんが家に入ってくると妄想しているようなのです。」
「そうでしたか。事件でなくて安心しました。」
電話を終えると交番の警察官にご婦人が痴ほう症であることを伝える。俺はご婦人に言う。
「かつさん、娘さんに話しておいたから大丈夫だよ。」「そうかい。」
その時、スーツを着た妙齢の美女が入ってくる。俺と交番の警察官は最悪の状況に陥ったことを理解する。
この女は、オカルト係の首魁、野間係長である。




