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第6話 キノコ狩り

 今回の依頼は小高い山にある村からのお化けキノコ討伐依頼だ。お化けキノコは秋に大量発生するモンスターで子供くらいのサイズだ。キノコのくせに短い手足があり動き回る。ただし動きは鈍く強いモンスターではない。


 俺の場合、お化けキノコ相手なら特に準備もいらないのでギルドから直接村へ向かった。もちろん村までは走る。舗装もされておらず起伏もあるが、距離にして大体5キロメートルくらいなので俺の足ならすぐに着く。


 村に到着したら村人がすぐに話しかけてきた。小さな村なので冒険者ギルドへ出した依頼のことは大体の村人には知られているのだろう。


「あんた依頼を受けた冒険者だよな。村長呼んでくっから待っててくれ」


 村人はこちらの返答などほとんど聞かず小走りに去ってしまう。随分と雑な対応だがこの世界の小さな村はこういうものだ。たまに来る行商人以外、外の人間と接する機会が少ないから仕方がない。交渉事などは大抵村長がするし、何ならそういったことが出来る人間が村長になる。しばらくすると村長がやって来た。年齢は70超えてそうな爺さんだがしっかりした足取りだ。


「お待たせしました。この度は依頼を受けて下さり有難うございます」

「早速だがお化けキノコはどの辺りに出るんだ?」


 先程の村人とは対照的に物腰が丁寧過ぎて俺にはむず痒い。さっさと本題に入ってしまう。


「それでしたら私が案内します」

「大丈夫か? モンスターの近くまで行くことになるんだぞ?」

「まだまだ若い者には負けませんよ。それに経験豊富な方が来てくれたようで心配するようなことは起こらないでしょう?」

「まあな」


 小さい村とはいえ村長くらいになれば冒険者の当たり外れは分かるだろう。駆け出し以外の冒険者から見たら雑魚モンスターでも、討伐に手間取り村に入り込まれでもしたら死活問題だ。それに冒険者の中にはゴロツキみたいなのもいる。そういう場合、ソイツが村から出るまで若い女は家から出さないようにしたりする。


「何匹くらいいるんだ?」

「3日前には10匹程度でした。その倍にはなっているでしょう」

「この時期はすぐ増えるからな」


 お化けキノコがいる場所に向かって山道を進む。言うだけあって村長の足取りは軽いし、進む方向にも迷いが無い。勝手知ったる、といったところだろう。ものの数分で目的のモンスターは見つかった。木々の間にうじゃうじゃいやがる。


「結構村に近かったな」

「はい、それで急いで依頼を出したのです。アレは1匹でも村に入れると厄介ですからな」


 お化けキノコの面倒な所は戦闘力ではない。繁殖力の強さである。特に秋はアイツらにとって良い条件が重なるのか、1日でも爆発的に増えたりする。夜のうちに村に入り込まれて朝起きたら畑で大繁殖なんてことになったらお終いだ。その畑の作物は全部菌糸にやられるし、土中にも菌糸は伸びる。


「えー25,26,27匹だな。このくらいならすぐ終わる」


 逆に言えば戦闘力自体は大したことはない。俺のアイテムボックスには様々な武器が入っているが今回はショートソードを取り出す。ここは周囲に木が多いので剣身の短いショートソードが良い。気負うことも無くキノコ達へ近づいて行く。お化けキノコは動きが遅いので駆け引きなど必要ない。無造作な縦振りで真っ二つだ。


「やっぱ手応えないよな、コイツら」


 お化けキノコは攻撃手段も体当たりと毒の胞子くらいしかない。それも遅いので当たらない。毒の胞子も粉末みたいなものが、キノコの傘の部分から空気中に広がるのが見えているし吸い込まなければ問題ない。


 斬って斬ってまた斬る。一振りで倒せるのであっという間に数が減っていく。もう残り3匹になった。逃げようとしているのでショートソードを投げつける。ショートソードは勢いよく回転しながら飛んでいき剣身の半分がお化けキノコの体に刺さったところで止まった。ラスト2匹は投げナイフで始末した。ショートソードと投げナイフはちゃんと回収する。


 倒したお化けキノコは1つも残さずアイテムボックスに入れる。これが非常に重要なのだ。コイツらは死体を残せばそこからまた新たなお化けキノコが生まれる。アイテムボックスに入れてしまうか、焼く必要がある。そのせいで村人でも頑張れば倒せそうな強さなのに、冒険者へ依頼するのだ。


 アイテムボックス持ちなんて、速攻で村を出るからどうしようもない。冒険者パーティーや商人から引っ張りだこだ。焼くにしても山の中で盛大に焼くわけにもいかず、かといって村に死骸を持ち込むのも農村では特に嫌がられる。村に持ち込んだ時点で胞子が村にバラ撒かれると信じられているのだろう。


 俺の経験上、焼いたのにその周辺で新たに発生したというケースはない。まあ、それを言っても仕方がない。可能性がゼロではないだろうし、俺にも確信はない。


「いやぁ素晴らしいお手並み、良くこのような依頼を受けてもらえましたな」

「まあついでだ」

「この辺りに何か用がおありで? 何もありませんぞ」

「今の時期なら良い野菜があるかな、と」


 俺の言葉を聞いて村長はしばらく黙った後、吹き出す。一頻り笑い先程までより砕けた感じになった。


「まさかウチの野菜目的で来る冒険者がいるとは、ハハッ、いや良い物がありますよ。今なら小麦、ニンジン、ネギが収穫時期ですな。しかし貯蔵している物でちょうど美味くなっとる物があるんです」

「へえ、そんなのがあるのか」

「村に寄って行って下さい。お安くしときますよ」


 村長もったいぶるなあ。でも俄然楽しみになって来た。

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