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刻々と迫る時間

もうすぐ魔王領中心からの魔物の大群第一波が来るそうだ。防御に定評のある火魔法と水魔法を教えてもらった俺は初めての実戦に望もうとしている。


「手の形はこれでいいんだよな?」

「そうです!あとは正確に呪文を唱えてください!もうすぐ来ます!」


木々の倒れる音がどんどん大きくなる。やがて遠く木が揺れ、倒れるのが見えるようになった。

俺は一度深呼吸してから呪文を唱える。

第2級火魔法【防御形態】


「火を操りし神の巫女よ、どうか我らの長いを神に伝え是を叶え顕現せよ。【火炎防御】」


体を巡る血とは別の流れを感じる。次第にその流れが腕に集中する。呪文を唱え終わると同時に真っ赤な炎が吹き出し、目の前を覆う。

ちょくご、炎の壁に何かがぶつかる気配がした。横をツノが6本生えた巨大なミミズが這って通り過ぎていく。


「これはムーンライトワームです!夜の間にしか地上に出ることがないこいつがいること自体おかしいです!中心部ではそれほどまでに激しい戦いが起きているのでしょう!」


ムーライトワームの気配が消えたと同時にその後ろを翼の生えた牛が駆け抜けて行く。この足はモーモーというらしく肉食なのだそう。目に見えた生き物全てを喰らうこの生き物をゴブリンは怖がっていた。魔法が使えなかったらどうなるのかと考えてゾッとする。


第一波を乗り越えた俺たちは防御魔法にぶつかり、焼け死んだムーンライトワームのモーモーの肉を食べた。どうやら魔力回復が期待できるらしい。


第2波、第3波と続くとさすがに体力がきつくなる。魔力の消費が続いているかららしい。それと同時に魔物の強さも桁違いに上がっているためだという。


「次は第4波です。体力は残っていますか?」

「あぁ。体力は問題ない。だが、魔力がない。感じるんだ。器いっぱいにあった魔力が残りわずかだって。これじゃあ第4波を乗り越えることができるかどうか...。」


「...じゃあ、手を貸してください。」


そういうとゴブリンのから俺に魔力が流れ出す。

「これはぼくからのお礼の品です。」

「...お前、これをしたら死ぬとか言わないでくれよ?」


半分冗談で言う。

「それは...ありません。」

「なんだよ!びっくりするじゃねえか!」

「ちょっと驚かそうと思いまして。ごめんなさい。」


笑っているのを見て少し安心する。ゴブリンの不安と緊張はもうないようだ。


「あなたに全てを託すだけですよ。ぼくは今自分を守るための魔力を全て渡しました。あとで渡した分の魔力を返してください。信じます。親友。」


「そうだよな。分かった。俺がやる。」


第4波は

意外とあっさり終わった。


「おそらく次が最後です。魔王幹部レベルが来ます。」

「ここまで完璧にできたんだ!つぎも不正でやるぜ!」

「頑張ってください!最後です!」


第5波の軍勢が見えた。あたりの森はすでに木々が倒れ、焼けこげて荒地になっている。


「お前らか!魔王様が戦っているのにも関わらずのうのうと生きているのは!」

脳内に響く声に困惑する。


「おい、これはなんだ!どうなっているんだ!」

「わ、分かりません!ですが...相当やばいです。」

「いや、俺ならいける!どんと来い!」


「ま、待ってください!今すぐに水魔法を下に放ってください!」

「いや!いける!俺を信じろ親友!」

「...!わ、分かりました...。信じます親友!」


「ほう、抵抗する気か。道を開けろザコども。」


一瞬、何が起きたか分からなかった。しかし炎の防御魔法は以前変わらず目の前にあり続けている。


「今のを耐えるとは想定外だ。もう少し遊んでやりたいがこちらも早く逃げないといけないのでね。続きはまた今度としよう。じゃあねー。」


「おい!待て!お前は誰だ!」


「私?ルーネだよ。お前みたいなザコに教えるギリはないけど、今回はいいかー。なんか、面白そうなことになりそうだし。じゃ、今度こそじゃあねー。」


「待て!顔を見せろ間抜けやろう!」


結局顔を見ることなく行ってしまった。しかし、俺は勝ったのだ。あれだけの数、勢力を前に耐えたんだ!


「おい!やったぞ!俺たち、生きてる!耐えたんだよ!」


「...」


「おい!俺たちは勝ったんだ!」


喜びを分かち合おうと勢いよく振り向いた。


「お...おい。なんだよ...それ。」

ルーネの声は透き通るように綺麗な声だった。

しかし生きるために必死な俺はその美声に気が付かなかった。

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