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一縷の望み

相変わらずひどい地鳴りが続いている。隣にいるゴブリンはひどく震えている。震度5くらいの地震がずっと続くような感じ。周りの空気も揺れて嫌な悪寒が強くなる。正直、これほどだとは思っていなかった。


「こ、これ、大丈夫なんですか?」

「あ、あぁ。大丈夫だ。」


ここで俺が弱音を言ってしまえばこのゴブリンは正気を保てなくなるだろう。俺が強くいなければ...。


突如、魔王領の中心から木をなぎ倒すような音が聞こえる。


「おい!これは一体何の音だ!」

「まずいです!中心から数多の魔物が退避してきます!それに巻き込まれてしまえば...ぼくたちの命は...。」


「おい!何か打てる策はないのか!」

「魔法は使ったことありますか?魔力の扱い方は?」

「俺が!?あるわけないだろう!さっきこの世界に召喚されたんだ!」


「じゃあ僕が教えます!これでも魔法の扱いには自信があります!」

「お前じゃ...だめなのか?」


「はい。魔法の扱いに自信があるといってもぼくはゴブリンです。魔力量には限界があります...。でも、人間のあなたならぼくよりも魔力があるはずです!それに、あなたは転生者です。一縷(いちる)の望みにかけましょう。」


「覚悟を決めなきゃいけないってわけか。漢になれってか。やってやろうじゃねえか!」


「そうこなくちゃ!早速始めましょう!ぼくの両手を掴んで下さい。」

「こうか?」

「そうです。では今から魔力を認識してもらいます。本来1年かけて徐々に順応させるものです。苦しいですが覚悟はいいですね?」


「...あぁ。頼む。」


ゴブリンと繋いだ手が温かくなる。直後、骨が砕けていくような痛みが走る。それは指先、ひじ、肩へと伝わり、やがて全身に伝わった。

痛い。苦しい。死んだほうがマシとさえ思う。肩から下を駆け回った激痛が首に伝わるのを感じた。瞬間、その後起きることが分かった。この痛みが首へと伝わった後、頭に来るだろう。


「嫌だ!嫌だ!離してくれぇ!」


「だめです!今手を離したら体が吹き飛んでしまいます!」


「それでもいい!いや、それがいい!もう死にたいよぉ。」


「頑張ってください!あなたらやらなければいけないんです!」


そうだ。やらなければいけない。メイラーゼは世界のために、世界で暮らす全ての人のために戦っている戦士だ。俺が...俺が今ここにいるたった1人の親友を守れなくてどうする!


「来い!やってくれ!」

「耐えてください!」


頭蓋骨が砕かれてなお意識が残っている感じ。考えるだけで(おぞ)ましい。

"痛い"では表すことができない感覚が頭のてっぺんまで到達する。直後、繋いだ手の隙間から光が漏れ出した。そして全身の痛みが引いて行く。昇天していまいそうなほどに楽になっていく。思わず2人でその場に仰向けに倒れる。


ゴブリンが言う。


「お疲れ様、親友。」

「あぁ、親友。」

メイラーゼのことを初めて尊敬した俺であった。


ゴブリンと俺は最後、男同士心で言葉を交わすことができた。

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