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種を超えた親友

濃い霧に覆われた山を超えると大きな城が見えてきた。メイラーゼが高度を下げて木の隙間に着地する。


「おい、お前はここで待っておけ。」


「え?」


魔王城まだはまだ遠い。


「私は生贄の命如きどうでも良いと思っていた。だがお前は違う。私は必ず勝つ。勝ってここに戻ってくる。その時は一緒に帰ろう。」


「分かった。必ずだぞ!必ず戻って来いよ!」



メイラーゼは飛び立つと一瞬で遠くに行ってしまった。さて、これからどうしよう。俺がここでできることといえば...うん、何もないな。


ガサガサッ

後ろの茂みから何か音がした。急いで振り返ると、そこには緑色の肌で目がぎょろぎょろとした何かが立っていた。次々と現れ、20体ほどの集団ができた。


「おいお前、ここで何をしている?俺はゴブリンだ!」


「ひ、人を待っているんだ。」



宇宙人に遭遇した人はこんな感じなのだろう。


「お前、ニンゲンだな?なぜここにいる!俺たちを狩に来たのか!」


「いや違う!俺は本当に人を待っているだけだ!」


「ほー。それならお前の職を言ってみろ!」


「職?な、なぜだ。」

「言えないのか?」




リーダーと思われる個体が手を挙げると周りのものたちが剣や弓を取り出してこちらに向けた。


「わ、分かった!生贄だ!俺の職は生贄だ!」


「...。本当のことを言え!」


「本当のことだ!」


「おいネロ、こいつの言ってることが本当か確かめろ!」


「あいわかったー!」


そう言うと奥にいたゴブリンが俺に杖を向けた。

「ぬぁ!こいつの言ってることほんとうだ!」


「はぁ!?お前、本当に生贄なのか?」


「あ、あぁそうだよ。」

「はっはっは。こいつは面白れ

ぇ。」



そう言うと俺のことを蹴った。ズキンという音と共に強い衝撃波が脚を襲う。


「あぁぁぁ」


「どうだ!これが職の差別ってやつよ!まさか俺らより弱いニンゲンがここにいるなんてなぁ!」


「お前ら...許さねぇ...」


「ふん。お前に何ができる!ザコが。」



ゴブリンたちは俺を数発殴ってから森の奥へ入って行った。しかし、1匹のゴブリンが投げ出されてこちらに転がってくる。仲間割れだろうか。


「お、おい、大丈夫か?」


「す、すみません。ぼく、弱いので...追い出されてしまいました。お、お願いです!殺さないでください!さっきのことでぼくたちのことを嫌いになってると思ううけど、お願いします!お願いします!」


「そんなに謝られて、殺せるわけがないだろう。第一、俺は人や魔物をを殺したことがないからな。」


「人や魔物を殺したことがない!?じゃあ今まだどうやって生きてきたんですか?」


「俺は実は転生してな...。いや、俺はな、ドラゴンを飼っているんだ!だからさっきのやつらなんて俺の足元にも及ばないぜ。ははは。」


「わーー。すごいです!ほんとにすごいです!」



ドラゴンを飼っている。間違いではないからな。


「ところで、お前はなぜ追い出されたんだ?」


「ぼ、ぼく、こんなんだから気が弱くて...虫も殺せないんです。だから、足手まといだと思われて...。」


「そうか...。しばらくの間ここで過ごさないか?」


ゴブリンが驚いた顔をする。しかしその後答えが出た。

「お、お願いします!」


「おう!」


ゴブリンは色々なことを教えてくれた。


魔王国は国としての組織はなく、"魔王によって支配されている地域"ということ。中心に近づくほど魔物が強くなること。魔王国内に入るとどんな魔物でも強化、あるいは進化すること。

このゴブリンも普通の個体よりも強化されているようだ。


「お前、すごいんだな。」


「ぼくがすごいんしゃないですよ。」


「そうだ。さっき村から追い出されたとき、このポーションを奪ってきたんですよ。」


話を聞けば、このポーションは完全ポーションといって死んでいない限り体が完全に元通りになってしまうというものらしい。


「そんなの、ゴブリンが持ってていいのか?」


「これはご先祖様が前の戦争で武勲を立てたときに魔王様から賜ったものです。」


「ほぇーー。お前って、すごいんだな。」


「いえ、ぼくがすごいんじゃありません。ご先祖様が頑張ってくれたからです!」


「そうか。そうだな。」


この子はなんで純粋なのかと思う。


「そうだ、お前って名前あるのか?」


「ぼくですか?ゴブリン如きが名前なんて持っていないですよ。」


「うーん。その"如き"って嫌いだな。俺が名前つけてやるよ。」


「え!い、いいのですか?」


「あぁ、もちろんだ!んー、何がいいかなー。」


ゴブリンはキラキラした目でこちらを見ている。

強い子。純粋な子。うーーん。


「そうだ、お前は...」



ドーーン


大きな音が森の中に響き渡った。


「や、やばいです!魔王様の怒りを感じます!」


そうか、メイラーゼと魔王の戦いが始まったんだ。


「ど、どうしましょう、ぼく...怖いです。」


「大丈夫だ!安心しろ!魔王の怒りは収まる。」


「なんで分かるんですか...?」


「約束したからな。あいつと。」

メイラーゼ...頑張ってくれ。、

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