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俺の過去とドラゴンの野望

「おい!離せよ!爪が腹に食い込んで痛いんだよ!」

「ガタガタうるさいやつだなぁ。じゃあ今離してやろうか?」


こんな話し方するヤツだったか?

下を見るとさっきまでいた城が豆粒のように小さく見える。


「あぁ、悪かった。でもこの爪をなんとかしてくれ。本当に痛いんだ。」

「はいはい。」


メイラーゼは一度俺を離してから空中で俺を握り直した。

ドラゴン王国から離れ、いつの間にか山を一つ越えていた。


「おい、お前の名前はなんていうんだ?」

メイラーゼが聞いてくる。


「俺はケンタだ呼びやすいように読んでくれ。」

「は?誰もお前の名前を呼ぶとは言っていないぞ?」

「じゃあなんで聞いたんだよ。」

「まぁ、もう時期死ぬ生贄だ。せめて名前くらい知っておこうと思ってな。」

「俺本当に死ぬのか?さっき転生したばかりなんだが。」

「仕方がないだろう?生贄とはそうゆう職だ。」

「職?職業ってことか?」

「その通りだ。この世界には様々な職業が存在する。人間は冒険者とか治癒師とか、統率者の職があるかな。職にはそれぞれ決まった能力、スキル、魔法などがある。生活する上でそれだけでは足りないから他の魔法とかスキルを習得人が多いかな。

「へー。なかなか便利な世界だな。一番少ないのはもしかして...」

「あぁ。お前の予想通り生贄だ。」

「まじかよ。それってつまりレアってことか?どんな能力を持っているんだ?」

「ない。」

「は?」

「はっきり言う。ない。生贄は文字通り生贄だ。転職といって職を変えることができるのだが、生贄に転職した瞬間に習得した全ての能力やスキルがが消滅する。」

「はぁ?最悪な職じゃねえか。」

「知らなかったのか?しかも生贄に転職したら90%の確率で死ぬ。しかも生贄から転職することはできない。あぁ、補足までに言っておくと、奴隷とか囚人は基本的に生贄職だな。」

「俺はそんなものになってしまったのか?なぁ、俺に存在価値はあるのか?お前から見て俺はどう見えているんだ?」

「お前に存在価値なんてあるわけがないだろう?まぁドラゴンに掴まれているだけ光栄だと思え。どう見えている?私から見ればそうだな...ゴブリン以下だな!」


メイラーゼはそう言うと高らかに笑い出した。


「結局そうなんだ。俺は...生まれ変わっても存在価値なんてないんだな。」

「おい、さっきまでの勢いはどうした?また私を笑わせてくれよ?」

「...。」



「お前、前の世界ではどう生きていたんだ?」

「前の世界か。思い出したくもない、最悪な人生だった。物心ついた時に両親はいなくて叔母さんに育てられてた。そんな叔母さんも俺が10歳の時に死んだ。俺を引き取る親戚なんて誰もいなくて、すぐに孤児院に入れられた。学校ではそれが理由で何度もいじめられて、それを先生に言うことすら恥ずかしかった。そんな時だったよ。担任が俺の両親が刑務所の中にいるって馬鹿にしてきた。そんなこと初めて知ったんだ。親を馬鹿にされた怒りよりも、親が刑務所にいることの絶望の方が大きかった。その後も何にもうまくいかなくて、中学を卒業してから就職した。今度こそうまくいくって信じてた。でも現実は違う。職場でもいじめやパワハラ、暴力まで受けた。それでもやり続けた。なにか光が見えるんじゃないかって。でも、いつまで経っても暗いままだ。挙げ句の果てに俺は過労死してしまった。」


メイラーゼは何も言わない。


「この世界に来てずっと強がってたけどな、俺は本当は弱い人間なんだ。」



しばらく無言が続き、メイラーゼが口を開いた。


「ドラゴン王国はな、今から3代前の国王の時魔王国と戦争になった。どちらも甚大な被害がでて、たくさんのものが死んだ。その戦いでドラゴン族は魔王族負けた。魔王国はドラゴン王に賠償を要求した。それはこれから代々続くドラゴン王室の第一王女を魔王に捧げることだ。人間の生贄と共にな。」

「それってつまり...。」

「そう。私とお前だ。」


それは...メイラーゼも"生贄"ってことなのか?


「私も"生贄"かって思ってるだろ。前の代までの第一王女は生贄に転職する儀式をしてから魔王国に出向いた。しかし私は違う。私はドラゴン王国始まって以来の最強の戦士だ!私なら魔王を討てる!」

「国王は知っているのか?お前が負けたらどうなるんだ?」

「父上には転職の儀式を済ませたと嘘をついた。私が負けたら...パワーバランスが崩れて魔王国が世界へ侵攻するだろうな。」

「そんなことしていいのかよ。お前のせいで世界が終わるかもしれないんだぞ?」

「あぁ、ドラゴン族最強の私がいなくなればドラゴン族の勢力は一気に落ちる。」

「そうだ!だから大人しく魔王に捧げられたら...。。」

「あぁ、魔王に捧げられた王女は生きて帰れない。」

「だから勝たなければいけないんだな。」

「あぁ。ドラゴン王国を、いや世界を救えるのは私しかいない。世界を救い、ドラゴンが世界を支配する。それが私たちの、ドラゴン族の野望だ。」

魔王は捧げられたドラゴン王女をじっくり堪能したあとに殺すらしい。どんなプレイをするんだろう。

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