表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

9

「はい、じゃあこの問題は・・・・」


先生が教卓で授業を進行している。


普段は自習するより、授業中にフルで集中すれば良いという考えの僕は、

先生の発言を箇条書きでノートにまとめ続けるのだが、今は上の空で聞く耳を持てない。


姉さんにお仕置きされるのがひたすらに怖い。

あそこまで怒った姉さんは久々に見た。


今回は血が出なきゃいいけど。

どうなるだろう。


「・・・拓哉。といてみろ」


「え」


先生が僕の名前を呼ぶ。

パッと顔を見ると、少し怒っているようだった。


上の空になっているのがばれた懲罰的な指名のようだ。


「え、えっと」


「どうしたー今日何回も説明したところだぞ」


先生の口調こそやわらかいが、やや棘を感じる。

みんなの視線が僕に集まって、思わず委縮する。


早く回答して、このプチ地獄を乗り越えたい所ではあるが、

実をいうと、問題をこたえるどころか教科書も開いてない。


何なら実は科書忘れたのに、違う教科書だして忘れてないですアピールしているくらいだ。


「うわ、あいつ馬鹿だ」


「でもちょっと可哀想だよな」


クラスメイトが小声で話しているのが聞こえる。


「ほらほらどうした?ん?ん??」


先生は片眉を挙げてにやけながら僕を問いただしてくる。

この状況を少し楽しんでいるようにも見えた。


くそ、これってパワハラじゃないのか。

まぁ、僕が悪いんだけど・・・・


「ぐ・・・」


しょうがない、

ここはわからないと素直に答えて、謝ろう。


「拓哉」ヒソヒソ


「!」


呼ばれて目線を移すと、先生に聞こえないくらいの声で、

奈緒が心配そうな表情で呼びかけてくる。



「答えは3だよ」ヒソヒソ


奈緒・・・・

目線でありがとうと伝えると、奈緒は「まかせて」と言わんばかりの表情になった。


本当に良い彼女をもった。


彼女、そういえば姉さん。はぁ。


まぁ今は良いや。


「答えは3です」


「ぜんぜん違う。お前は何も話を聞いていなかったのか?何回も説明したよなこの授業中に。お前以外の生徒全員が多分答えわかってるぞ?というかお前の教科書、それ数学じゃなくて生物だろ。舐めてんのか?やる気もないしいい加減にしろよ?」


「・・・・す、すいません」


「はぁ。まぁもういいわ、でも教科書のごまかしはやめろ」


先生は黒板に向き直る。

クラスメイトはにやにやして僕の方を見ていた。


唯一奈緒だけはごめんという顔をしていた。


まぁ奈緒に限って嘘の答えを教えた訳ではないとわかっているし、

そもそも他人を当てにした訳だしな。悪いのは僕だ。


「じゃ~同じ問題を田中!」


『僕以外誰もが答えを知っている問題』の回答に奈緒が指名される。


「さ・・・3です」


「えっ・・・・」


「・・・・」


数秒クラスは完全な静寂に包まれていた。










ようやく下校時間。

今日一日は凄い早く感じた。


「はぁ・・・・・」


奈緒との折角の下校なのに僕の気持ちは暗い。

帰ったら説教かぁ。


今日は説教1時間で許してくれるかな。

まぁ無理だろうな。


「拓哉」


奈緒に腕をつんつんとつつかれる。


「んー」


「デートしない?」


「は?デート?」


奈緒の急な提案に少し驚く。


「だって私たち、もう付き合ってるのに、まだ一回もデートとかしたことないし」


デート、かそりゃあいつかはするんだろうけど、でも今は。


「そりゃあ、僕だってしたいけど今日は無理だよ。知ってるでしょ?姉さんの説教が」


「それはそうだけど、でもお姉さんが帰ってくるのはきっと遅いでしょ」


「まぁ確かに・・・生徒会だし今日」


「でしょでしょ?だったらさ、一時間位良いんじゃないかなって」


一時間か・・・

奈緒を見ると黒い瞳が綺麗で、若干の期待を膨らませた表情になっている。


僕はすっかり自分の事ばかり考えていた事に気が付く。


「わかったよ。じゃあデートしようか」


「うん!一時間だけ」


スマホを見ると、姉さんから「もう家に帰ったのか」の確認の連絡が来ていたので、

適当に20分後につくみたいな連絡を送る。


よーし、折角だし楽しもう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ