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「ふーー」
背負っていた重たいリュックサックを外したような、
そんな疲労感と開放感が同時に来る。
姉さん、怒ってたな。
帰ったら説教だろう。
「拓哉、大丈夫だった?」
僕の肩に手を置いて奈緒が聞いてくる。
奈緒も辛かったろうに、僕の事を心配してくれる優しさを感じた。
「うん、何とかね」
「うわ、凄い汗でてるよ?」
「え、嘘?」
はは、よっぽど怖かったのかな。
普段、姉さんに怒られても冷や汗が出たりはあまりないのに。
いや、それだけ姉さんが怒っていたから、
それを感じ取っ手の緊張からかもしれない。
「拭くね、ウェットティッシュ持ってるから」
甲斐甲斐しく僕のおでこにポンポンとウェットティッシュを置いて、
汗を拭きとってくれる。
奈緒のかわいらしい顔の表情は、心配一色だった。
「姉さんみたいだな。何か」
「別に普通だよ!だ、だ、だってほら!私拓哉のさ・・・」
そう言って奈緒がモジモジする。
「そうだよね、付き合ってるなら、この位普通だよね」
「う、うん!!」
奈緒の顔が嬉しそうな笑顔になる。
顔が近い分、とても可愛いと思ったのと同時に照れて思わず目をそらしてしまった。
☆
「はーい、じゃあこれわかる人!」
「「「はーい!」」」
クラス中で人気の世界史の先生の授業だ。
ユーモアを交えて授業してくれるので、僕もいつも楽しんで授業を受けるのだが、
今日はそんな気になれない。
奈緒と離れて、クラスで授業を受けながら一人で考えると、ふつふつと、
姉さんに怒られるであろう事を考えてしまって憂鬱にならずにはいられない。
姉さんは基本、女の子と僕が仲良くしているのを嫌がる。
それを、奈緒と二人でいる所を見られてしまったし、
・・・・それも、外では格好つけてねーちゃんって呼んでるのバレちゃったしな・・・・
「拓哉の奴教室に戻ってから、ずっと暗黒のオーラだしてるね」
「奈緒と喧嘩でもしたんじゃね?」
クラスメイトの噂話が聞こえるがそんなことを気にかけていられる余裕もなく、
また考え事にふける。
「田中さんに嫌われたのかな!!」
「なんで拓哉が奈緒ちゃんに嫌われて、お前嬉しそうなんだよ」
「そういえば2人で何か話してたよね」
「え?それまじ?」
「あ、何か廊下の二人みたよ、確かに男が暗かったかも」
「まさかまさか!拓哉が告白してふられたとか?」
「「「「キャー」」」」」
「こら~うるさいぞ~」
「「「ごめんなさーい」」」
何やらクラスの私語がうるさかったのか先生が注意していたが、頭には入ってこない。
ふと奈緒の方を見ると、パッと目があい、笑いかけてきた。
僕も、奈緒を心配させないよう笑顔を作る。
ただあの感じだと僕が暗い顔をしていたのも見られていただろうけど。




