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「今日は帰ったら話があるから」
キツイ顔のまま、姉さんが僕に言う。
はは、姉さんの方が背が高い分、凄い威圧なんだよな。
「う、うん」
「貴方、自分の部屋で待っていなさい」
「はい・・・ごめんなさい」
今先に謝っておいて、後のお説教の強度を少しでも緩めたい。
「謝るのは全部聞いてからね?」
諭すようにいう姉さん。
先ほどまでは少し優しい顔になる。
ふふ、姉さんが甘えられるのが好きなのは知っているんだ。
よしここはもう一押し。
「ごめんね、姉さん、僕調子に乗っちゃって」
少し上目使いで可愛くいってみた。
「何回も言うと本当に悪く思ってるのか疑問ね」
ギロっとにらまれる。
・・・・・何回もはダメだったか。
「ごめんなさい」
「まぁ良いわ。それじゃあ、授業があるから。帰ったら自分の部屋できちんと待ってるのよ?」
「はい」
「足りない」
姉さんが、何か僕の回答が気に入らないのか指摘する。
「『はい。姉さん』でしょ?」
「う、うん。わかったよ姉さん」
「そうそう。それで良いのよ」
姉さんが少し満足気になる。
基本姉さんは、外では無表情なのだが、口元がニヤッと吊り上がっているのでご機嫌なようだ。
先ほど僕が『ねーちゃん』と言っていたのが、よっぽど気に入らなかったらしい。
「せんぱ・・・お姉さんそれでは!」
奈緒も姉さんに挨拶する。
奈緒は基本礼儀正しいからな。
僕なら他人の喧嘩に割り込んで挨拶なんかできないよ。
「ふふ、貴方は良いのよ」
「え?」
「私はあなたの姉ではないから」
「そ、そうでしたね。すいません・・・はは」
姉さんの指摘に奈緒がひきつりながら笑う。
基本、外では無表情ながらも愛想がいい姉さんが、ここまで敵対的な事を言うのは珍しい。
「それに、貴方に姉さんと呼ばれるのも不愉快なのよ」
「え、あ、すいませ!ごめんなさい!気を悪くされましたか」
奈緒が少し慌てて謝る。
・・・・姉さん?
「何?拓哉の前だからって、そんなわざとらしく謝らなくてもいいのよ」
「え・・・う・・・そんなわけじゃないです」
奈緒がシュンとして、うつむく。
流石にこの場にいて、黙っている訳にはいかない。
「ね、姉さん、そういう言い方は」
姉さんの目線が僕に移る。
その目は、一見無表情だが、氷のように冷たい瞳で、見られているこっちが凍ってしまいそうな瞳だった。
奈緒はこんな目で見られていたってこと?どうして。
「何?私のかわいい拓哉。もしかして私に文句でもあるの?」
「い、いや・・だから・・」
そんな言い方失礼だよ。そう言いたかった。
でも・・・。
「・・・・文句はないようね。それじゃ拓哉」
そう行って、姉さんは立ち去って行った。
僕らは、大嵐が去ったような、そんな気持ちで、朝のHRが始まるチャイムを呆然と聞いていた。




