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「おっはよー奈緒ちゃん」
「あれ、奈緒、今日リップしてない!?かわいいー」
幼馴染の奈緒がすぐ、クラスの女子に囲まれる。
僕の幼馴染の田中奈緒とは、付き合いがかなり長い。
病院で隣のベッドに寝ていたらしく、幼稚園から、小中高校、ずっと一緒だ。
「おはよー」
奈緒は基本クラスの人気者。
お母さんやお父さんもとても優しくて、
奈緒自体もとても優しい。
クラスでは、みんなの愚痴を聞かされるような存在で、
弄られ役にもなるけど、成績もよく頼られているので、
自然と人が寄ってくるような存在。
容姿も姉さんのように特別目を引くほどとびぬけて綺麗という感じではないけど、
目が大きくて、幼い感じの容姿でクラス内では結構モテる。
この前も先輩から告白されたとか言ってたし。
「奈緒~勉強してる?私一週間後のテストなんもしてない~」
いつものように女子グループに取り囲まれている奈緒。
クラス内では話さない訳じゃないけど、いつもべったりな訳でもない。
普段なら挨拶して、お互い終わりだが、
今日に関してはどうしても話したい事がった。
「奈緒、ちょっとこっち・・・」
僕は奈緒を強引に廊下に誘った。
「え・・・うん」
奈緒も僕の真剣な顔に気が付いて、ついてくる。
クラスのみんなは僕が奈緒を急に連れ出したことに驚いただろうが、今は気にならなかった。
☆
「一体どこからねーちゃんに漏れたんだろう僕たちの事」
人気のない北校舎。
何か秘密の話をするには僕はよくここを利用している。
ちなみに、姉さんの事を『姉さん』と奈緒の前で呼ぶのが恥ずかしくて、
強がって『ねーちゃん』と読んでしまうようになったのは最近だ。
「私は拓哉との約束ちゃんと守って誰にも言ってないよ」
奈緒がまっすぐ目をみて言う。
彼女は嘘が下手だし、きっと本当なのだろう。
奈緒は口が堅い。
それも彼女の魅力だ。
「拓哉との約束は絶対破らないから」
「そんなことはわかってるけどさ」
じゃあ誰が?
ほかには誰も知らないはずなのに。
「でもお姉さんは本当に感ずいてたの?」
「え?」
「拓哉から電話で、感づいてる~って言われたけど。お姉さんは何か具体的な事言ってたの?」
「・・・確かに」
そういえば姉さんは何も具体的な事を言っていた訳ではない・・・か。
「ねーちゃんがカマかけたって可能性もあるのか」
「ねーちゃん?」
「!!!」
奈緒からではない綺麗な女性の声が廊下に響く。
決して大きな声ではないが、綺麗な高音で、人気のない廊下では、とても大きな声として耳に残った。
僕と奈緒が急いで声のほうを見ると、声を発した人物は思っていたよりすぐそばに、
しかも今の話題の主。
姉さんが立っていた。