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「あ、あったー見て見てーここのお店!」


「これがあのお店か」


涙袋と黒目が大きい奈緒が目を輝かせて言う。

SNSで話題になっていたお店という事で、行きたかったとの事。


なんでも、タピオカとマリトッツォとマカロンと、

アサイーボールを同時に楽しめるセットがあり、

インスタ女子や、流行りについていきたいおじさんに人気とのことだ。


「うんうん!バナナのがもの凄くおいしいんだって!食べたことないから楽しみ」


「はは、確かに」


今日食べるのはアサーイーボールなるものだ。

正直食べたことがないので、あのコーンフレーク的な物がアサイーなのか、

ヨーグルト的なのがアサイーなのか果物がそうなのか、どれがアサイーなのかは知らない。


「うん。拓哉食べたら元気になるよ」


「ん」


その言葉に自分の負の感情が表に出ていて、

それによって奈緒に心配かけてたいたのだと自覚する。


奈緒優しさを感じるのと同時に、自分の未熟さに恥ずかしくなった。


「そうだね。じゃあ早く食べて元気になるわ」


「顔交換するアンパンマンみたいな事言うね」


「アンパンマン自体がお腹空いて力がでない訳じゃないから。汚れるから力がでないの」


「プライドが高いのかな」


・・・アンパンマンの顔が汚れて力がでないのは、

尊厳が傷つくから力がでないのではなく、頭のアンパンが動力源の核的な物だからじゃないの?


まぁ良いや。

お店に入ると、愛想の良さそうな若い女性の店員さんが挨拶してくれる。


余りに目をまっすぐ見てくるので、少し照れて目線を下にそらしながらメニュー表を見る。


奈緒だったら照れたりしないんだけどな。

なんで他の女の人だったら照れてしまうんだろ。


「あ、これなんか良いね。イチゴの奴」


「やっぱり?思った?確かに凄く美味しそーどうしよ」


二人で同じメニュー表をのぞき込んでいるので、

顔の距離が近い。


毛穴がほとんどない、少しだけ赤みがかった綺麗な白い頬が近くにあって、

ほのかに奈緒の使っているコンディショナーのにおいがする。


まぁ、と言っても奈緒とは何年来の付き合いだし、

距離感が近いのは付き合う前からのはなしだから変な緊張などはしたりしない。


「はは、でもバナナのやつが良いんでしょ?二つ頼めば?僕は一つだけ頼んで食べてる奈緒を見てるよ」


「そんな大食いじゃないもん」


肩をぽかっと優しく殴られる。


ふと店員さんをみると笑顔を崩さない僕たちを待ってくれていた事に気が付く。

きっとこの定員さんにとっては、僕たちは面倒なバカップルみたいに見えているのだろうか。


とにかく待たせているので注文しないと・・・


「これください!イチゴの奴で」


僕が喋りだす前に、奈緒が注文する。

きっと同じことを考えていたんだろう。


「かしこまりました。お値段1500円です」


「1500円ですね、えっと」


奈緒が財布を取り出す。

・・・よし、ここは男を見せよう。


でもちょっと高いんだよなアサイー。


「いいよ、僕が出すよ」


「え?」


「だって、デートでしょ。それに初めてだから今回は僕に出させて」


「で、でも悪いよ・・」


「確かに毎回はあれだけど、初デートは僕に出させてよ。彼氏じゃん」


土曜にホテルの朝食バイキングの皿洗いのバイトしてるからね。

これくらいのお金はある。


「じゃあ、お、お願いします」


奈緒がお辞儀してくる。

はは、なんか照れるな。


「じゃあ定員さん、僕バナナで」


そういって定員さんの顔をみると、余り笑顔ではなくなっていた。







「あー面白かった」



あの後、二人でイチゴとバナナを分けあっこして食べたりした。


デートはすぐ終わったけど、凄い元気貰ったな。

正直、奈緒と付き合っても、今までとそこまで関係は変わらないんじゃないかなと思ったけど、

何だか心が暖かくなる感じがして、とても楽しかった。


こんな素晴らしい事がこれからも続くのかな。


そんな事を考えていると、家についた。

時計を見ると、きっかし一時間。


「ただいまー」


ドアを開けた時に無人の家に挨拶するのはいつもの癖だ。


「お帰りなさい。遅かったわね」


「え」


ドアを開けると玄関に制服姿の姉さんがいた。


「玄関で固まってどうしたの?早く手でも洗ったら?」


脳の処理が追い付かない。

だって、だってだって姉さんは今日確実に生徒会で・・・


「何よ固まって。一人じゃ手を洗えないの?」

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