なんで、こんなことになってしまったのだろうか③
切り込み隊長って死ぬ確率高くないですか?
なんで、こんなことになってしまったのだろうか。
「いやいや、そりゃぁミー(この世界での一人称の呼び方、魔族も使う)も、こんなところを割り当てられて神を恨んでいるよ?暑いし、マグマ湧き出てるし、食べ物も不味いし、なんたって地下だ。っていうか地底だ。環境は最悪。それに、弱肉強食の世界だから、殺し合いも日常茶飯事だし、いくらミーが強くたって、うかうか安眠もできやしない。それに比べて、天界はなんだ?日当たり最高じゃないか!っていうか雲の上だし!まぁ、あそこはそれ以外は他に何もないところらしいけど。もっと言えば、地上だ!最高の環境じゃぁないか!空と大地と海があって、草木、動物、生物が過ごしやすい環境。人間界がうらやましいってもんだぜ。」
「ハグー様、今日はいつもに増してよくしゃべりますね?」
「うるせーよ!人間界が欲しいったって、なぁんでミーが侵略の指揮取って前線に立たないといけないの!?おかしくない!?いくら魔族の方が人間より強いって言っても、魔族1000人で国滅ぼすとかできなくない!?」
「だから、あの力が与えられたんじゃないですか。ちなみに、魔族は人間界では、『人』ではなく、『体』で数えられています。」
「うぅるぅせいよ!人間ども、異形のもの見るとすぐ差別しやがって。…じゃなくて、なんで、その役割がミーなんだよ!って話だ!!ミーよりも強い、ユーハだってミカクだっているじゃぁねぇええかっ!」
「彼らに力を与えると魔界のパワーバランスが崩れますからねぇ。その点、ハグー様なら大丈夫と、魔王様も判断されたんでしょ。」
「オイテメー、ブッコロスゾ!それが、ムカつくんだよ、魔王のやつ。永遠に封印されてろってんだ。そしてだよ!?確かにあの力は凄い…人間界の征服はおろか、天界だって倒せるかもしれねぇ。まぁ、天界は日当たり以外何もないからいらないけど。」
「でも、人間界を攻めたら、天界も黙っていない…」
「だよな!?仮に攻め込む予定のアステア帝国に勝ったとして、人間界の一国を獲ったに過ぎないし、3界の秩序が乱れれば、天界が出てくる。そこで戦う最前線のミー、大丈夫かなぁ」
「分かりませんけど、魔王様も何かしらの勝算があってのことでしょうから。それに断ったら、ユーハとミカクに殺されます。」
「だよなぁ。あいつら3人、覇権争いして殺しあってるクセに、こういうときだけ協力して、ズリィよなぁ」
オギャは、ハグーのことが嫌いではなかった。
魔族は、基本的に個人主義なので、群れをなしたり、仲間を作ったり、連携をしたりしない。しかし、一部の魔族は人間に近い習性を持ち、チームを作り連携し、自分の生存確率を高める。魔王やユーハ、ミカクなどは政治的なかけ引きや取引を行い、今回のような行動をとる。それは、人間界でいうところの「知性」というものなのかもしれないが、彼らが「知性」によって連携するのか、「本能」によって連携しているに過ぎないのかは分からない。
そんな中、オギャはハグーの口は悪いがどこか憎めない性格を慕い、ハグーの配下のような形で連携をとっている。ハグーも自分のおしゃべりを聞いて適当に相槌を打ってくれるオギャを気に入っている。
彼らは、魔界で4番手という地位で適当に幅をきかせ、ときどき、人間界に行って略奪や乱暴狼藉を行い自分の欲を満たしていれば、それで良かったのである。
しかし、今回、人間界征服大作戦の実行部隊リーダーに選ばれてしまった。身に余る大きな力を与えられて。勝てば、魔界での地位もユーハやミカクよりも上がるかもしれないが、魔界トップ3の争いに巻き込まれることになる。そんなのはごめんだ。そして、どこかで負ければ死ぬ。それもごめんだ。
ハグー「あ~あ、なんで、こんなことになっちまったんだろうなぁ。。おい、オギャ。とりあえず、この力の使い方マスターするために練習するぞ、付き合え」
オギャ「なんで、こんなことになってしまったんでしょうねぇ。。まぁ、利用されているのは間違いないですし、最悪、捨て駒ですよね。死なないために、勝ちましょう、ハグー様」
彼らは、魔界のどこかへ、歩いて行った。トボトボと。
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