なんで、こんなことになってしまったのだろうか②
UFOキャッチャーとかで、「取れる」って思った瞬間
それがこぼれ落ちると呆然とするよね
なんで、こんなことになってしまったのだろうか。
ミー(この世界の一人称の呼び方、天界人も使う)は「大いなる力」を手に、人間界で魔族の侵攻を迎え撃ち、その功績を称えられ、新しい天界3大賢人に名を連ねるはずだった。
この力は、天界で500年もの時をかけて作られたもので、いかなる魔族も打ち滅ぼすことができる。とても凄い。凄いというありきたりな言葉で片づけてはいけないほど、凄まじい力だ。超絶怒涛、空前絶後だ。
この力のさらに凄いところは、力を、選んだ者の体内に宿すことができることだ。力の保持者は、これを自在に操ることができる。
今日は、ミーがその「大いなる力」を天界から授けられる日だった。
長かった。天界3大賢人のひとり、ロジャーが500年前に魔族の王を封印して役目を終え、光となって消えていったとき、ようやく3大賢人のイスがひとつ空いた。
天界人は、基本的に寿命がない。どれくらい生きるのかはよく分かっていないが、ミーの記憶は1000年前からあり、多分、その頃、生まれたのだろう。そして、天界人の顔ぶれは、1000年前からほとんど変わっていない。天界人が死ぬ(というか消える)のは、その役目を終える時だと言われている。役目を終えるとロジャーのように消えるのだ。
そんな訳で、ロジャーには恨みもないし、尊敬もしていたが、500年前にイスが空いたとき、ミーは自分がそこに座れる可能性を感じ、気分が高揚した。しかし、そんな期待とは裏腹に、そのイスは500年間空いたままだった。そのイスに今、座ることができるチャンスが…。
「大いなる力」の授与式。祭壇でまばゆい光を放つものがそれか…!皆に見守られる中、3大賢人のラファとノバクによって…その光が…ゆっくりとミーの胸の中に…向かってくる。これが、ミーの中に入ってきたら、ようやく、戦果を挙げ、3大賢人の座に…。
天界では、基本的に身分の差も上下関係もなく、平等だ。天界人は、3界(天界、人間界、魔界)の秩序さえ保っていればよく、時たま、秩序が乱れそうな場面を見つけては力を行使するだけで、その他は、たいしたことをしていない。
上昇志向のない奴らだ。ミーはお前たちとは違って、偉くなりたい、皆から尊敬を集めたいのだ。ラファやノバクのように、何もせず座っているだけのお飾りにはならない。ミーの力で3界の秩序を乱す輩を、圧倒的に排除し続けるのだ。そして、人間界、魔界にも名を轟かせ、狼藉を働こうとすら思わなくなる世界にしてやる。はっはっはー。…おっと、ミーとしたことがはしたないことを思いめぐらせてしまったな。
「大いなる力」を授けられしはずの、天界人「シャラ」。それが彼女の名前だ。人間のように性別は存在しないのが天界人だが、人間に照らし合わせると女性の容姿をしているので、彼女ということにしておこう。彼女が「大いなる力」を受け入れんとするその刹那、まばゆい光は激しく揺れ動き、そこにいた全ての者が状況を理解する間もなく、飛んで行った。
ミーの使命は、魔族の侵攻から「大いなる力」の捜索に変わった。次に、その光を見つけた時、既に力は別の「人間」に宿っており、そして、そいつは王国にさらわれていった。力の回収は困難になった。
なんで、こんなことになってしまったのだろうか。
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