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異世界転生なんてない  作者: ゆーとぴあ
2/7

なんで、こんなことになってしまったのだろうか①

急に戦場に立てって言われたら、嫌ですよね。

 なんで、こんなことになってしまったのだろうか。

 今、ミー(※この世界での一人称の言い方、男女共通)は、世界一の大国にいる。そして、世界最強の兵士と一緒に、魔族の侵攻を迎え撃つために、戦場に立っている。戦闘の訓練を受けたことはない。

 普通の村人だった。15歳の誕生日を迎えたあの日までは。もっと言えば、普通よりダメな村人だし、今も普通の村人のつもりだ。

 しかし、世界はそれを認めてくれないらしい。その理由はミーにもよく理解できるし、実感している。

 これからやることは決められている。魔族の親玉が出てきたら、近づいて、そいつに向かって、手を突き出すこと。右手だけでも、左手だけでも、両手でもいい。それだけでいい。というか、それだけでいいと言われても、それ以外のことはできないし、それしかないと思う。それで魔族の親玉を倒せる算段だと「聞かされている」し、それでダメなら、ミーは死ぬ。ミーも死ぬし、国も滅ぶと「聞かされている」。そして、人間界は魔界に征服されるだろうと「聞かされている」。要するに、ミーは自分では何も分からないが、とにかく、命をかけて、これから出くわす魔族の親玉にむかって手を突き出さなければならない。状況が、断るという選択肢を与えてくれなかった。

 とても怖い。故郷の村に出る弱い魔物(人間界に生息している魔族の呼び方。どう猛な動物のような見た目)でも怖いし、命の危険がある。それなのに、これから戦うであろう魔族は、それよりも遥かに強いと聞く。手を突き出す間もなく殺されてしまうのではないか、という不安というか、確信に近い予感がして、既に手も足もガクガク震えている。

 なんで、こんなことになってしまったのだろうか。ミーは、できるだけ楽な仕事を探して、できるだけ楽をして、それでいて、できるだけ楽しく暮らしていきたかっただけなのに。

 そんな夢が叶うかもしれない力を手に入れたばかりに、そんな夢が潰えようとしている。ミーの命と一緒に。

 ミーの様子を察してか、世界最強の兵士は、ミーの肩を後ろから少し強めにポンとたたいた。


お読みいただきありがとうございました。

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