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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その67 無責任のツケ

作者: 天城冴

ニホン国の人々の恐ろしい変異。その原因は一つではなく…

雨が降っていた。

梅雨入り宣言したばかりのニホン国だが、梅の雨という、その風雅な名前とは裏腹の激しい豪雨に、頑丈なコンクリートのビルにいる人々も震えていた。もっとも、震える理由は災害級の嵐のせいだけではなかったのだが

「ど、どうして、こんなことになったんだ」

と、議員バッジを付けた眼鏡の男が困惑したようにつぶやく。

「も、申し訳ありません、首相。ただいま調査中で」

傍にいた40代とおぼしき男性もうろたえたように返事をする。

「秘書の君にここまでいうことではないかもしれないが…。なにしろ、国民の大半がオカシクなってしまっって…しかも、この大雨で、バリケードも壊れそうだ。島や中州などに隔離していた奴らがきたら…奴らは雨など、おぼれることすら気にしないのだから」

「その、奴ら…といいいますか、マイマイナンバーカード取得者変異体の生態は、まだよくわかっておりませんので。第9次の新型肺炎ウイルスのワクチン接種後、しかも〇×社製の一部のワクチン接種後に発症といいいますか、変異といいますか」

「細かいことはどうでもいい!とにかく、ワクチンを打った一部の奴らが変になって人を襲い始めたということだ、しかも噛まれた奴は同じように人を襲うようになった。そして、どんどんオカしくなった連中が増えて、ついに首相の私まで、こんなところに閉じ込められる羽目になった。まるでゾンビ映画だ」

「ほかのジコウ党の方々もちりぢりに…。ご無事でしょうか」

『さあな。何しろ野党の連中が、非常事態だ、外国に支援を求めるべきとか言うのを何とかなるといって、最後まで議員会館やら、自宅にいたからな。大臣たちも、警備は万全とか言っていたが、すぐに連絡がとれなくなった。やはり、官邸が一番安全だ。うっかり、外に食事にでようとしたが、出たのが、不味かった。いきなり襲われたからな、まあ、何人かは犠牲になってしまったが』

「はあ、…首相が出るなどとおっしゃら…いえ、本当に残念でしたが、首相がご無事で何よりです」

「はは、君がけがをしても守ってくれたからな。これが収束したら、君は第一秘書だ。ところで、どうするかだが、いったい原因は何で、誰のせいなんだ、この騒ぎは」

「その、調査の途中だったのですが。マイマイナンバーカードに紐づけたされたカルテと本人のカルテが一致しない場合に、それが起こるようで」

「なんだと、また不備か、人為的ミスとか言う奴か。チェックはしたんじゃなかったのか」

「その、依頼した便通が下請けを頼み、さらに下請けが、で、最終的に8次下請けまでいったらしく、そのころにはかなり資金が抜かれて、チェックどころか、入力作業を行う人間の時給も最低レベルでやらせたので、仕上がりといいますか、あまりよくなくミスもおおかったのではないかと」

「い、いくらなんでも、そんな大事なデータを、そんな安値で、しかもダブルチェックもしなかったのか。ああ、仕事をくれとかいうからまわしたら、このていたらく、便通の連中に責任が」

いらつく首相に秘書が口をはさむ。

「その、便通はそんな予見性は無い、だいたいワクチン接種のデータの紐づけにもミスがあったといっています」

「なんだと、では、データの紐づけはどこがやったんだ、なんで、あんなことに」

「なぜ、彼らが変異したかは調査中ですが、ワクチンデータとカードを関連付けさせたのはフジサン通です。ご想像のとおり、便通と同じく下請け丸投げで、こちらは7次下請けでしたが、賃金はやはり最低レベルに近かったらしく、しかも期限を押したので見直しどころか、キチンと最後までやれたかも怪しいようで」

「ではフジサン通にも、責任をとらせる、もちろん便通にもだ!」

度重なる大手企業のミスに怒りまくる首相。ニホン国がこんなゾンビの国になってしまっては、自らの政治生命どころか、身体的生命も危ういのだ。利権がどうといっている場合ではない。しかし、秘書は

「いえ、それだけではなく。ワクチン自体の管理も、その、…実は狂犬病のワクチンが一部混ぜっていたのではないかと、そしてワクチンの保管が杜撰で…」

「その管理は…いや、言わんでもいい、どうせ四菱の医療関係会社とか、派遣会社ダソナの医療部門とかだろう。そして、報酬を下げたため、温度管理など適切な保管をしなかったから、ワクチン自体がおかしくなったとかいうんだろう」

「その通りです、首相。ただ、どちらにしろ、四菱にも、ダソナにも責任を取らせることはできないかもしれません、少なくとも現トップだった連中には」

「どういうことだ?証拠がないとか」

「いえ、その…。喰われました、奴らに。四菱の会長や幹部や地元の懇親会に出ていたところを、大量の奴らの群れに襲われて…骨までかじられて、奴らにすらなれず、全滅で…。ダソナのダケナカ他は、アワジン島のニンプウリンで、官僚らを招いて会合と称する宴会中に襲われて、収拾がつかなくなったので、島ごと封鎖されました。ドローンで確認したところ、ダケナカ他は首だけ串刺しにされて、奴らのおもちゃになっているようで」

と、冷や汗をかきながら言う秘書

「なんてことだ。いったい誰が、責任を…」

「その、首相。この手のミスは我が国では誰も責任を負いませんでした。原発のメルトダウンしかり、新型肺炎ウイルスの蔓延しかり…政治家の暴言も事実上の選挙違反すなわち犯罪の追及すら曖昧で終わらせました…、とくに与党ジコウ党の関係者は…」

「た、確かに。追及の声は何度も上がったが、そのたびにいろいろ誤魔化し、マスコミに根回し、SNS上で金を使ったサクラ連中に世論を誘導させ、大したことのないことだ、とか追及を緩めた…。そのツケだとでもいうのか」

「その、特にマイマイナンバーカードは最初から誤りが多く、双子を一人と認識とか、他の人の銀行口座と公金が紐づけされたとか、様々な問題がでておりました。それでも、ミス防止の具体的な対策もとれず、ロクな検証もせず、期限を区切ってやってしまいまして」

「それで、今まで何とか、何とかしてきたんだ。野党だのリベラルだのが口うるさくいったが、結局進められたんで…」

「それが、間違いだったんですよ。ミスを指摘されたら、きちんと調べて、なぜミスをしたのか、それがなぜ間違えたのかをきちんと検証して、責任を…トルベキ…だった…のに、…オマエタチハ…」

ガクッと首を垂れる秘書。慌てる首相

「お、おい、どうしたんだ。も、もう私の周りには君しかいないんだぞ!他の奴は、ここに逃げてくる途中、皆、奴らに…。支援者も…家族も…長男ですら…」

「ソンナ、長男すら、見捨テル、首相ハ、イラナインダヨ!」

叫ぶや否や首相の首に噛みつく秘書。

ギャアアアア

叫ぶ首相。結局ニホン国が滅亡の危機に頻しても、責任をとる人間は誰も居ない、少なくとも人間は。


どこぞの国では、被害拡大の責任も、汚職の追及も、ウイルス対策の失敗も経済対策の過ちもすべて、のらりくらりと逃れ続け、誤魔化しているようですが、そんなことをしていたら大きなしっぺ返しをくらいそうですね。

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