とある令嬢の、終わりと始まりのプロローグ②
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……………………そして。
長い長い沈黙の眠り末、令嬢が再びまぶたを開けて目を覚ました時…。
令嬢はカーンカーンとノミを叩く、年老いた老人の作業音によって目を覚ました。
(……………………ここは……?………木造の……、作業小屋…?)
木の加工される音と、視界に一番最初に目に入った古びた木造の天井を見ながら…。
令嬢は意識を取り戻し、起き上がろうとすると同時に、己の体がどこも"異変ばかり"になってしまっている事に気がついてしまう。
手を見てみれば、己の指の節々は区切りばかりができていて、体も小さく、体温が一切感じられず…。
肌のどこもかしこも固かった。
黒髪だけは何故か自分の物…。しかし、その他の自分の顔も手も足も胴体も全て、触るとカチカチ、どんなに優しく触っても固いものがぶつかり合う音がしてしまう。
「……………………あら?新入りが目を覚ましたのね?」
令嬢が体のあちこちを確かめて、人形の手と足の材料がまばらに置かれる作業台の上で、呆然となす術もないでいると……。
薄暗くランプの明かりの届かない作業部屋の闇の向こうから、不思議と声の通る声…。子供。いや。無邪気さなど感じられない、大人の知性を感じる女の人の声が聞こえてきた。
「…………おはよう姉妹。伯爵様のおめがねに叶うなんて、貴方いったい生前に何をやらかしたの?…………面白そうだからゆっくり聞きたいわね?」
そう言って作業場の暗い闇の中から現れたのは、一人…。いや。そこにいたのは、一体だけではなかった。
作りも造形も恐ろしく精巧な、実際に生きていると言っても過言ない異常なクオリティーの、化け物じみた異様さをまとう華やかな人形達…。
それらの姿と、自分の手足の作りを見比べて…。
………………令嬢は、"己の体も"人形"になって目を覚ましていた"事に、その時気付かされたのだった。