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モノクロームに愛された者たちへ  作者: ヤナギ ショーキ
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その子

 初めて会った時、その子はまだ小さな女の子だった。


 伝え聞いた話によれば、その子は保育園に通っていた頃から頻繁に熱を出して、早退することが続いていたそうだ。


 それでも今はだいぶ落ち着いているらしいが、やはり過去の家庭環境によるストレスが原因なのだろう。


 ─────────────────────


 沙楽が長期休みに入ってすぐのことだった。


「こんどねー、なっちゃんといえであそびたいのー」


 真理と僕はすぐにオーケーを出した。


 夕食の時、沙楽がいつもその子の名前を出していたから、僕たちとしてもどんな感じの子なのか気になっていたからだ。


 その週の土曜日、沙楽が友達を連れてきた。


「お、おじゃまします」


 実際に会って、すぐに分かった。


 その子は、優しすぎた。


 そして、失敗を極度に恐れていた。


 常に気を張っていて、僕たちに対しても気を遣いすぎていた。


 間違いなくストレスをため込みやすいタイプの子だった。


 これじゃいけない、と思った。


 僕の目が届く範囲では、どんな人でも気を遣うことなく、ありのままの姿で過ごしてもらいたいんだ。


 気分転換にでもなればいいなと思って、僕は二人の前に紙とペンを出した。


 二人はペンを持った。


 沙楽は動物の絵を描いた。丸っこくてかわいいウサギだった。


 だが、その子が書いたのは絵ではなく、文字でもなかった。


 円だった。


 無表情のまま、その子はひたすら円を書き殴った。


 沙楽が声をかけるまで、その子は一度もまばたきをしなかった。


 すべての恨みを紙にぶつけているような、そんな行き場のない衝動を感じた。


 もしかしたら、この子は何かとんでもなく大きな悩みを抱えているのかもしれない。


 ……心配だ。


 思い返してみると、固まっていた原因は緊張とかそういった類ではなくて、無意識に「そうしないといけない」って……。


 僕が『大人』だから……?


 大人が、恐怖の対象……。


 それはつまり……。


 ……。


 ……これ以上は触れないでおこう。


 この感覚、僕がカウンセラーだった頃の精神状態に似ているな……。


 しばらく戻ってくることはないと思っていたけど、予想よりもだいぶ早いな……。


 ……。


 ……ダメだ。迷っちゃいけない。


 僕がしっかりしないでどうする。


 この子はいつも沙楽と仲良くしてくれている。


 救う理由としては、それだけで十分だ。


 大人であれ子どもであれ、誰かにとっての大切な人をみすみす放っておくだなんて、僕にはできない。


 僕が、僕たちが、子どもの指標にならなくては。

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