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約束と贖罪
「本当にありがとう……。なんてお礼をしたらいいか……」
頭を垂れようとしたその瞬間、悪魔は「いや、いいんだ」と言って私の行動を制止させました。
「本当に頭を下げなきゃいけないのは、俺の方だ」
「今まで散々、お前には強く当たってきちまったからな……」
「すまなかった……」
悪魔の声には、お父さんのような、反省や後悔、深い謝罪の意が込められているのでした。
「……もういいの」
「それは過ぎたことだし、なにより、ナツはこうして無事だから……」
「……そうか」
「お前も、あいつと同じで優しいんだな……」
「……ありがとう」
それは、彼の魂の深い位置に存在している真実を表しているのでした。
「これでようやく、お前との約束を果たせた……」
悪魔の言葉は遠くの星々に向けて放たれ、まるで別の世界にまで届いているかのようでした。
「なぁ、見ているか? 翔」
悪魔は過去の苦悩から解き放たれ、悪魔の内に宿る希望と未来への誓いがようやく実現されたのでした。




