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モノクロームに愛された者たちへ  作者: ヤナギ ショーキ
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在り方

 ある人が僕に対して言い放った。


「そんなことを口にする必要性は全くない」と。


 その後、別の人が僕に対して疑問を投げかけた。


「なぜそんなことを発表するのか」と。


 そしてまた別の人が僕に対して正論をぶつけた。


「自分で自分の人生を終わらせるつもりなのか?」と。


 ……。


 ……違う。


 違うんだ。


 皆、理解していない。


 僕がどれほどの破綻者であるか、皆、全く理解していない。


 僕は、皆が思い描いているような、それこそ聖人と揶揄されるような人間なんかじゃない。


 謝罪すらできず、自分自身からも見下されるほどの存在。


 それが僕だ。


 皆は、ただ僕の真実を知らないだけだ…。


 …………。


 ……昔のことは、もう忘れたい。


 気にする必要もないと思っている。


 それで全てが片付けばいい。


 だが、過去の記憶はそう簡単には引き剥がせない。


 忘れようとするほど記憶は鮮明に蘇るし、気にしないと決めたことほど気になるものなんだ。


 なんで人間ってのは、こうも嫌な記憶ばかりが残り続けるんだろうな……。


 ……。


 ……いい。


 もういい。


 これでいい。


 僕は、この恐怖を背中に縛りつけながら生きる。


 初めて精神病棟に入院した時から、そう決めている。


 ─────────────────────


 背中にタトゥーを入れてもらった。


 絵ではなくて、全部文章。


 ルカによる福音書だ。


 お国柄的な要因もあって、真理はすんなりと受け入れてくれた。


 けど、母親には死ぬほど怒られた。


 申し訳ないが、これだけは何があっても譲れなかった。


 無責任だと非難されても、親不孝者と侮辱されても、仕方ない。


 もとより覚悟の上だ。


 異常なほどの、死と罪への執着。


 普通の人たちからすれば、僕は異常者に見えるだろう。


 さぞ、気味の悪い人間に見えるだろう。


 ……。


 僕のことを理解できる人は、きっといないだろう。


 ズレている人間の気持ちは、ズレている人間にしか伝わらないのだから。


 ただ、これだけは伝えたい。


 僕は、僕自身の存在を背中に刻み込んだ。


 後悔はない。


 これでようやく、僕は正しく生きることができる。


 これでようやく、僕は無意味な理想を絶つことができた。

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