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モノクロームに愛された者たちへ  作者: ヤナギ ショーキ
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出会い

 すごい今さらなんだけど、沙楽と初めて話したキッカケって、美術の授業のときなんだよね。


 ペアも組まないでずっと一人で絵を描いてる沙楽が気になったから、どんな絵なのかな? って思って、とりあえず声をかけてみたの。


「ねぇね、なにかいてるの?」って話しかけてみたら、沙楽はビックリしながら私を見た。


 そしたら小さな声で「おはな」って答えて、私に絵を見せてくれたの。


 教室の後ろに飾ってあった、黄色いバラ。


 葉っぱがあって、トゲはなかった。


 え?


 ……。


 …………。


 なんでそんなに細かく覚えてるのかって?


 沙楽の絵に圧倒されたからだよ。


 なんだろうな? 鉛筆だけで描いた絵なのに、スゴイっていうか、冷たくないっていうかさ?


 とにかく! 私はそのとき初めて、沙楽の才能に気がついたの。


 それで、沙楽のことをもっと知りたいと思った。


 沙楽ともっと仲良くなりたくて、どうしたらそんなに絵がうまく描けるのか知りたくて、沙楽の機嫌が悪いとき以外、私は声をかけ続けた。


 なんでか分からなかったんだけど、沙楽って最初、私に対して警戒心マックスだったのよ。


 でも、だんだん心を開いてくれた。


 ……。


 …………。


 気になるの? 会話内容が??


 ほぇー。そういうの興味ないって思ってた。


 ……。


 別に普通だよ。絵とか、音楽とか、アニメとか、映画とか、本とか、ファッションとか、とにかくイロイロ、たくさん。


 ……。


 …………。


 もちろん、今でも大好きだよ。


 友だちでいてくれて、本当に嬉しい。


 ……。


 …………。


 ……だから、こうするしかなかった。


 友だちだから、こうするしかなかったの。


 私の都合で、あの絵を穢しちゃいけないんだよ。


 これは、沙楽のためだから……。


 …………。


 あんた……。


 ホントに優しいね……。


 ─────────────────────


「わたしね、いろがみえないの」


 生まれつき色の見えない病気だって、沙楽から直接教えてもらった。


 信じられないっていう気持ちと、なんでもっと早く言ってくれなかったのかっていう気持ちと、とにかくいろいろな感情が入り混じりすぎて、もう言葉にならなかった。


 病気を隠していたのは、周りから変に思われたり、からかわれたり、差別されたくないからで、そのことを私だけに打ち明けてくれたのは、私が心の底から信頼できる存在だと認めてくれたからだった。


 それで私と沙楽は、お互いの苦しみ、寂しさ、強さ、優しさを感じたの。


 私は、沙楽のことをもっと知りたいって思った。


 私は、沙楽のことをもっと愛してあげたいって思った。


 ズレている人の気持ちは、ズレている人にしか分からないからさ。


 ─────────────────────


 ねぇ。


 なんで神様は、沙楽から色を奪ったんだと思う?


 神様は、沙楽がどんなに寂しい思いをしてるのか、分かると思う?


 ……。


 …………。


 想像できない!?


 はー! あんたそれでも死神!? 『神』ってついてるんだったら、これくらい答えなさいよ!


 ……。


 …………。


 なるほど? いるのは最低最悪の魔王だけとな?


 じゃなかったら、この世界はみんな幸せ……。


 …………。


 幸せ、かぁ。


 幸せって、なんだ……?


 ……。


 だって、あるのは平等だけじゃない?


 私からは愛を。


 沙楽からは色を。


 みんな平等。


 私が知らないだけで、大切な『なにか』をみんな平等に奪われている。


 ………………。


 もしかしたら、さ。


 幸せなんて、最初からないのかもね。

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