同じ血が流れている
自慢に聞こえるかもだけど、私ってけっこうモテるんだよね。
ある日は校舎裏で、またある日は手紙で、そのまたある日は街でナンパ(みたいな?)ってな感じで、よく告られてた。
でも、みんな断ってきた。
男子が嫌いって? 男性恐怖症かって?
うんにゃ、そんなことはない。私の場合はむしろ女性恐怖症かもねん。
私がその気になりさえすれば、普通に付き合うことだってできる。
けど問題なのはさ? 男子と付き合って、結婚して、子どもができて、その後のことよ。
だって考えてみてよ?
ロクに愛されたこともない人間が、誰かを本気で愛せると思う?
それに私の体には、アイツの血が流れている。
そしたらどうなると思う?
分かるよね?
いずれ私は、愛しい人にも、愛おしい我が子にも、手を上げることになる。
そうなる根拠? 根拠だったらあるよ。
私ってね、自分にとって都合が悪いことが起きて、それをうまく消化できないと、カンシャクっていうか、すぐにイライラしちゃうのね。
そんでもってどうなるか?
破壊だよ。
でもまぁ? 私には『絵を描く』っていう最強のストレス解消法があるし?? 解消法がある時点で私の方が勝ってるっていうかさ???
でも結局、血は争えないんだけどな! がはは!!
……。
…………。
いや、笑えねーよ。
笑える要素どこだよ。
……はっきり言う。
絶対にイヤだ。
私は、アイツみたいになりたくない。
こんな経験をするのは、私だけで十分。
やっぱりさっきの言葉、訂正するわ。
私は、異性と付き合っちゃいけない人間なんだよ。
子どもの笑顔を守るためにも。
子どもは、笑顔であるべき。
そう、笑顔……。
みんな、笑顔であるべき……。
……。
…………。
……私、ずっと考えてたんだ。
なんで私は、誰かを笑わせるのが好きなんだろう……って。
正確には好きっていうか、使命……みたいな?
でもそれってさ、裏を返しちゃえば願望だよね?
私の分まで笑ってほしいっていう。
つまりさ……。
……。
私みたいになってほしくない──。
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友達と将来の夢や目標について話す中で、私の内にはひそかな不安が芽生えていた。
だけど私は、その不安に対して解を与えてあげることができなかった。
親は、私に愛情を注いでくれることはなかった。
私の夢を応援してくれることもなかった。
私はいつも一人で、自分の身を守る方法を探していた。
そんな状態なのに、友達は本当に私のことを理解してくれたのだろうか?
私の苦しみを本当に理解できるのだろうか?
理解したと口先だけで言っているのではないか?
次第に私は、他人に望むものが何なのか、分からなくなっていた。
私は、将来に対して希望を持つことができない。
私は、自分の人生に意味を見出すことができない。
そして私は、この不安を誰かに打ち明けるべきではないと思っている。
打ち明けたところで、どうせ笑われる。
どうせスルーされる。
どうせ根本的な解決には至らない。
結局はこれだ。
臭いものにはフタをする。
それが、この世界のルールなのだから。
下手な理想を抱くくらいだったら、最初から現実を見ろ。
下手な理想を抱いて惨めな思いをするくらいだったら、そのまま黙っていろ。
正しい。
私の選択、行動は、この狂った世界においてすべて正しい。
間違いなどない。
……そうであってほしい。
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……それは逃避しているだけ?
責めなくていい? 恐れなくていい?
あのさぁー……? 話聞いてた? なんにも分かってないじゃん。私、ビックリよ。
こんなこと、ホントは言いたくないんだけどさ…………。
あんた、そろそろ私の中から消えてくれない?
……。
あ、死ぬまでムリ?
…………。
ふーん?
……死神ってのもラクじゃないのね。
つかあんた、見かけによらず案外優しいよね?
……。
へぇー? みんな、根っこはこんな感じなんだ? そりゃ以外だわ。




