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紙切れ
夜の病室は静かで、窓から満月が差し込んでいた。
病床に横たわる男は、その静寂の中で月明かりに照らされた白い紙に手を伸ばす。
看護師たちの足音が心の奥深くまで届かぬよう、男はそっと扉を閉めた。
男はペンを握り、記憶の中に閉じ込められていた言葉を解き放つ。
手紙の文字は、月光に包まれた病室の中でゆっくりと形成されていく。
男の思いは、遠くにいる大切な人たちへの願いとなり、手紙はそれに優しく呼応する。
過去の過ちと向き合いながら、男は手紙を通じて自らの葛藤と感情を吐露していく。
月明かりのもと、男の心声が白紙に染み込んでいく。
未来への切なる願いが、手紙の一文一文に込められ、男の心情が筆致に滲み出ていく。
未来への希望と静かな期待が、冷たい病室を温かな希望で満たしていく。
手紙を書く男は、思いを巡らせながらも、時折、振り返る過去に引き寄せられているようだった。
男の手がペンを走らせるたび、記憶の断片が文字となって現れ、病室の壁に映し出される。
その手紙は、まるで男の心中に眠る物語の一節を掬い上げて伝えているかのようだった。




