第14話 じゃれあい
「何してるケロか!モモミさんへの暴行は許さないケロ!!」
デート中、ずっと俺の後を付けていたカエル野郎とそのお供が姿を現した。
このカエル……なんか見た事のある姿してるな。
ま、そんな事はどうでもいいか。
「これには理由がある!」
俺は掌を向けて、駆け付けたカエル野郎にストップのジェスチャーをする。
このまま殴り倒す事は簡単だ。
だが、こいつは別に悪事を働いた訳ではない。
……モモミの卑劣な策略で巻き込まれはしたけど、俺がコイツを殴る名分はまだないからな。
俺は悪人ではない。
たぶん。
なので、色恋のちょっとしたこと程度で、手出しする程非道ではないのだ。
まあストップ無視して殴りかかってきたら叩きのめすけど。
完膚なきまでに。
その方が手っ取り早いので、個人的にはそっちがおすすめだった訳だが……
「どんな理由があるっていうケロ!婚約者を殴り倒すなんて!!」
カエルは止まってしまう。
話し合いが通じる余地のある相手程、面倒なものはない。
ちっ、『しねぇ!』とか叫びならがら飛びかかって来いよな。
そんな事を考えつつも、俺はしぶしぶ平和的に話を進める事に。
「まず第一に、俺はコイツの婚約者じゃない」
「な、なんだってーーーー!」
俺の言葉に、目玉が飛び出さんばかりにカエル野郎が驚いた。
そんな奴を見て思う。
『あ、語尾は別にケロじゃなくていいんだ』と。
「お前は騙され。俺はコイツに利用されただけだ。俺は、自分を利用する様な奴は許せない性格してるんでね。だからちょっとお仕置きしてやっただけだ」
「おかしいと思ってたんだケロ。1時間も歩くだけのデートなんて、いくら健康志向でもありえないケロから」
どうやら、カエル野郎は課金勢の様だ――まあ貴族だし当たり前か。
取りあえず、俺とは相いれんな。
まあカエルなんかと相いれたくはないが。
「それでも、レディーに手を上げるなんて男のする事じゃないケロ」
カエルが俺を非難してくる。
被害者であり、正当な報復をしただけの清廉潔白な俺を。
恋は人を盲目にするとは言うが、魔物もその辺りは同じ様だな。
「それは貴族であるお前の判断だろ?そもそも、婚約者とのデートを盗み見てたお前に男云々言われたくないぞ」
「ぬ、ぬぬぬぬ……それは分かってるケロ。でも……でも私は……モモミさんを本気で好きになってしまったケロ。そんな気持ちを収めるには、どうしてもこの目で確かめるしかなかったケロ」
「その気持ちは分かる。あまりにも思いが強すぎて、行動するしかなかったんだろ?」
「わ、分かってくれるケロか……」
「ああ、わかるぞ……よーーーっくわかる。俺も思いが強すぎて行動してしまっただけだ。モモミの顔面を蹴り上げるという行動を」
そう、本気で不快だった。
だからその気持ちを収める為には、ああするしかなかったのだ。
俺だって本当は女なんて殴りたくなかった。
だが、腹が立っちゃったんだから仕方ない。
そう!
仕方なかったのだ!
「それは流石に……我慢するべきだと思うケロ」
「なんでだよ。自分は我慢しなくて良くて、俺はダメってか?まさか貴族を鼻にかけるつもりか?」
「そういう訳ではないケロ……」
俺の言葉に、しゅんとなるカエル。
どうやら、貴族という特権階級を使って威張り散らかす輩ではない様だ。
まあでも、よくよく考えたらそうか。
常識を弁えていない糞貴族なら、きっと婚約者もくそもなく無理やりでもモモミを手に入れようとしていたはずだ。
デートを見て諦めるなんて、可愛い話にはならんねーよな。
「こら貴様!さっきから黙って聞いていればその口の利き方は何だ!このお方はケロン男爵家公子、ケロ・ケロロン様だぞ!平民如きが――ぶげぇぁぁぁ!!」
タキシードを着たウサギっぽい奴が何か言って来たので、殴って黙らせる。
唾が飛んで来たのでこれは正当防衛だ。
「ウ、ウサッチ!?」
「白くなくて命拾いしたな」
ウサギは茶系の色をしていた。
これが白だったら、俺は衝動的に稲葉の白兎ごっこしていたかもしれない。
運のいい奴である。
稲葉の白兎って何?
ググレカス。
「な、なんて手の速い男だケロか。暴力は何も生みださないケロ。アカデミーに通う男は、もっと紳士であるべきケロよ」
「んあ?」
暴力?
一体何の話だ?
まさか、今のぐーぱんを暴力って言ってるのか?
「いや、今のは暴力でも何でもないぞ。喧嘩を吹っ掛けられたから殴っただけだ」
「そ、それを暴力と言うケロ!」
「いやいや……暴力ってのは、相手の心を折るぐらいグチャグチャに蹂躙する事であって。この程度はちょっとしたじゃれあいって言うんだぜ」
どうやらカエル野郎は、本当の意味での暴力と言う物を知らない様だ。
まったく、これだから世間知らずの貴族のボンボンは……
いやまあそもそもそれ以前に、魔物が紳士とか何言ってんだって話ではあるが。
喧嘩上等のアカデミーで、こんな寝言を放つ奴がいるとはな。
魔物にもいろんな奴がいるもんだ。
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