第6話 話
「勇者墓地、君に話がある」
学園の授業が終了し、いつもの様に一人寂しく教室から出ようとしたら、外から教室に入って来た勇者に声を掛けられる。
その真剣な表情を見る限り「放課後どっかいこーぜ」的なお誘いでない事は理解できた。
ま、そもそもそんな仲ではないが。
「なんだ、俺の名前知ってたのか?」
「君は何を言ってるんだ?同じ勇者なんだから、知らない訳がないだろう」
他の勇者達は俺に全く興味が無さそうだったから、てっきり名前すら憶えていないと思っていたのだが、そんな事は無かった様だ。
まあこいつだけという可能性の方が高い気もするが。
「そうか。それで?話ってのは?」
「こんな場所でする様な話ではないから、場所を変えよう。付いて来てくれ」
そう告げると、こっちの返答も待たず勇者が教室を出て行く。
俺は教室を出て、勇者とは逆方向に進んだ。
え?ついて行かないのかだって?
俺は天邪鬼な所があって、勝手に決められると逆らいたくなる質なんでね。
ちゃんと確認を取らなかったあいつが悪い。
結局、勇者は俺が付いてこないとは夢にも思わなかった様で、気づかれる事無く俺は家に帰る事が出来た。
間抜けめ。
因みに、勇者は全員学園の広大な敷地内にある一軒家を与えられている。
お手伝いさんも雇われていて、炊事や掃除は全部かってにやって貰える様になっていた。
――翌日――
「何故昨日付いてこなかったんだ?」
授業終了時に、また昨日の勇者がやって来た。
剣呑な声色から、不機嫌さがはっきりと伝わって来る。
「俺には、お前とする話なんか無いからな。勝手に話を進められても、無視するに決まってるだろ」
「ふぅ……話は、君の為の物だ。無視すれば、君は必ず後悔する事になる」
含んだ言い方をしやがる。
脅しともとれなくもないが、まあ忠告と言う事にしておいてやろう。
悪意は無さそうにも見えるしな。
なのでぶん殴るのは保留だ。
「後悔してから考えるさ」
「君は頑固なんだな」
「まあな」
「やれやれ。どうやら墓地君は僕が気に入らないみたいだけど、頼むから話だけでも聞いてくれないか?本当に君の為なんだ」
勇者の目は真剣だ。
まあ話位は聞いてやってもいいか。
何となく予想はつくけど。
「わかったよ」
そういや、こいつなんて名前だったっけ?
他の勇者にはあんまり興味がなかったから、覚えてねぇや。
「所で、名前を聞いていいか?」
「はぁ……君は他の勇者には全く興味がないんだね」
「ああ、ない」
ハーレム作る為の学園で、他の男の事なんか気にしてもしょうがないからな。
まあ一応、すれ違ったりしたら軽く挨拶ぐらいはするが。
「僕の名は勇者ビート。ビート・フレンドリーだ」
最初の勇者ビートの部分、いる?
俺ならこっぱずかしくて、自分の事勇者とか絶対名乗れないけどな。
まあそれはどうでもいか。
「俺は墓地無双。墓地が姓で、無双が名前な」
こっちも名乗っておく。
知ってるだろうけど、一応な。
「じゃあ墓地君。話があるからついて来てくれるかい?」
「わかった」
ビートが教室を出て行ったので、俺はそれに続く。
もっかい無視して家に帰るのも面白そうだなとは思いつつも、流石にそれは止めておいた。
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