第59話 約束
「おのれっ！」
魔神帝が再び、連続でエネルギー弾を放って来る。
「無駄だ！」
親指と中指をこすって『パチン』と指を鳴らす。
その瞬間、飛来してきた無数のエネルギーが一瞬にして消滅した。
「なっ……」
新しく即興で生み出した――破壊エネルギーを吸収・無効化する結界だ。
「お前の攻撃は俺にはきかねぇ。これで実力差が、よーく分かっただろ」
「……」
特大のエネルギー弾は軽く蹴り飛ばされ。
連続攻撃は完全にノーダメージ&無効化。
流石に此処まで来れば、その力の差が分からないなんて事はないだろう。
魔神帝は俺を睨みつけたまま、圧倒的実力差に押し黙る。
「そう怖い顔で睨むなよ。まあ俺は優しいから、お前にハンデをくれてやるぜ」
「ハンデ……だと？」
「本気で戦ったら弱い者虐めになっちまうからな、半分の力で戦ってやる」
「貴様……」
魔神帝が、怒りに犬歯をむき出しにする。
「なに怒ってんだよ。それぐらい俺とお前の間には、実力差があるんだよ。ああ、そうだ――」
俺は胸元で両腕を組む。
「なんなら、両手も使わずに戦ってやってもいい。この状態の俺の顔面に一発叩き込めたら……その時はお前を見逃してやる。どうだ？俺は優しいだろ？」
「墓地君！奴を見逃すなんて駄目だ！！そいつは――」
外野のモブが、やり取りに嘴を突っ込んで来る。
だが俺がニヤリと悪い顔を見せると、ビートはハッとした表情になってその口を噤む。
どうやらビートも、俺がどういう人間か分かって来た様だ。
「くくく……至れり尽くせりだな。貴様に一撃を加えれば見逃してくれると？」
「ああ、俺は勇者だ。二言はねぇよ」
「認めよう……貴様は強い。だから此処は引かせて貰う。貴様に一発入れてな！」
魔神帝が嬉々として突っ込んで来る。
半分の力に、両手無し。
確かにこの条件なら、俺の顔面に一発叩き込む事ぐらいは出来るだろう。
だがな。
約束ってのは――
「吹っ飛びなっ！」
俺は突っ込んで来た魔神帝の顔面に叩き込む。
握った拳をフルパワーで。
――破る為にある！！
「貴様ぁ！騙したな！！」
「悪いな。俺は勇者は勇者でも、落ちこぼれ勇者なんだよ」
俺の辞書に品行方正や誠実という文字はない。
ましてや、勇者の誓いなどもっとない。
魔神帝の体は衝撃で粉々になり、跡形もなく消滅した。
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次回最終回！
『墓地無双』
