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ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全てバイオレンスで解決~  作者: まんじ(榊与一)
ハーレム学園編

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第48話 子離れしろ!

「じゃあ行くぜ!」


容赦なく魔神帝に攻撃を加える。

俺の攻撃に、不死身だったはずのリリスの肉体は傷つき、奴が苦悶のうめきを上げる。


「ぐっ……馬鹿な!何故だ!!何故この不死身の肉体を傷つける事が出来るのだ!?」


「殴りまくって、コツを掴んだからだよ」


言葉通りだ。

殴りまくったお陰で、なんとなくコツを掴んで出来るようになった。

そこに理論や理屈はない。

まあ強いて理由を考えるのなら、神様に施された改造の中に、そういった相手に対応できる進化機能でも付いてたって所だろう。


流石神様!

お蔭で面倒事は全て解決です!

神様万歳!


更に魔神帝をボコりつつ、俺は心の中で謝辞を神様に投げかける。


え?

感謝の仕方が雑?

細かい事は気にすんな。


「ぐぅ……」


ダメージを受けまくって、魔神帝はもうボロボロだ。

普通ならもう勝負ありって感じである。


「さて、そろそろ降参したらどうだ?」


途中、いくらでも殺す事は出来た。

だがあえてそうせず追い込んだのは、その体がリリスの物だったからだ。

父親に利用されているだけの彼女を無慈悲に殺すのは、流石に躊躇われるからな。


ああ、俺ってなんて優しいんだろうか。


流石勇者。

さすゆう。


字面にすると、一文字も減らない略称の誕生である。


「くくく……降参などありえん。そもそも、この体が滅びても死ぬのは娘だけだ。私が降参する理由などなかろう?」


魔神帝が口元を楽し気に歪めて笑う。

俺が殺さない様に手加減している事は、当然奴も気づいているだろう。

だから殺せないと高を括っている様だ。


だが、奴は一つ大きな勘違いをしている。

そう、殺すとか殺せないとかは、些細な問題なのだ


「なあ、拷問って知ってるか?」


不敵に笑う魔神帝に、俺は笑顔で素敵な単語を投げかけた。


「なに?」


「痛みは感じてるんだろ?だったら……痛めつけるのは効果があるって事だよな?」


痛みがないんなら、呻き声を上げたりはしないだろうからな。

そして痛みがあるのなら、拷問は可能だ。


「……」


俺の言葉に、魔神帝が黙り込んだ。


「俺は回復魔法も使えるからな、殺す事無くいくらでもお前さんに苦痛を与えてやれるぜ。それが嫌なら、さっさとリリスの体から出て行く事だな」


どんな強靭な精神の持ち主だろうが、苦痛を与えられ続ければいつかは心が折れるもんだ。

個人的に、あまり拷問の様な残酷な(めんどうくさい)真似はしたくはないので、言葉だけでそれを理解して彼女の体からでていってくれると助かるのだが。


「くくく……娘の記憶を見る限り、貴様は本気で拷問してきそうだな」


「俺は有言実行の男だからな。痛い目見る前に、さっさと失せろ」


「それは御免こうむる。200年も封印され、やっと自由になるチャンスを得たのだ。今回此処で諦めれば、宝玉を利用する事ももう敵わないだろうからな。次がいつになるか分かった物ではない」


「なら、テメーの心をへし折るまでだ」


面倒臭い奴である。

二百年も封印されてたんだから、後千年や一万年ぐらい封印されたって誤差だろうに。

ちゃちゃっと出て行けよ。


「そうか。なら……貴様に一つ良い事を教えてやろう。娘の肉体を支配し、コントロールしているのは確かに私だ。だが、娘の精神がこの体から切り離されている訳ではない。あくまでも、憑依した私が強制的に動かしているだけに過ぎない」


「何が言いたい?」


「この体に発生する苦痛は、娘も感じているという事だ。更に付け加えるなら……憑依している私よりも、その苦痛は遥かに大きい」


「……」


今度は俺が黙る番だった。

奴の言葉を鵜呑みにする気はないが、可能性は確かにある。

何せ、本来の体の持ち主はリリスな訳だからな。


そして奴の言葉が真実で、俺がこのままリリスを拷問すれば……


確実にリリスの精神が持たない。


「さあ、どうした?拷問するのではないか?ひょっとしたら、娘より先に私が参ってしまう可能性があるかもしれんぞ?」


魔神帝が両手を広げ、愉快気に顔を歪める。

そして――


「折角だ。分かりやすく目に見える様にしてやろう」


奴がそう告げると、魔神帝からピンクのオーラが滲みだす。

そしてそれは人の形へと変わっていく。


俺の知る姿。

そう、リリスの姿へと。


「ぐ……うぅ……ボッチー」


その姿はボロボロだ。

観察すると、実際の彼女の肉体と寸分違わない怪我だと分かる。


「ほれ……ぐっ……」


魔神帝が、自分の腕をその鋭い爪先で深く切り裂く。

するとそれと連動する様に、オーラで出来たリリスの肉体の腕にも同じ傷が生まれた。


「くぅ……あぁ……」


同時にリリスの表情が苦痛に歪み、苦し気に呻き声を上げる。

完全に肉体と連動している様だ。


「貴様ほどの力の持ち主なら、これが幻覚などではない事は分かるだろう?ああ、言っておくが……私から切り離そうとは考えない方が良いぞ。その時点で娘の精神は消滅してしまう事になるからな。くっくっく」


「……」


……胸糞わりぃな。


俺も大概やりたい放題やる方だが、こいつはそれを遥かに超える。

死ぬ程嫌いなタイプだ。


「さあどうした?早く拷問して見ろ!ははははは!」


結局、リリスも魔神だ。

気にせずボコボコにするか?

そんな考えが一瞬脳裏をよぎるが、ぐっと堪える。


「ちっ」


俺にだって、最低限の道徳や良心はある……つもりだ。

利用されてるだけの奴を苦しめるのは、どうしても気が引けてしまう。


「お父様……一つ聞かせて」


「ん?なんだ?」


どう対処すべきか?

そう俺が悩んでいると、リリスが魔神帝に話しかけた。


「彼は……カモネギはどうなったの?」


カモネギ?

どこかで聞いた名前だ。


たしか……魔神帝を封印した勇者の名前だったか。


そういやリリスを封印したのも、勇者カモネギだって委員長が言ってたな。


「奴か?奴なら十数年ほど前に死んだ。封印に完全に取り込まれてな」


二人のやり取りを聞いて「ん?」と思う。

そもそもカモネギは、魔神帝封印の際死んだとされている。

そんな奴が、何で十数年前まで生きてるんだろうか?

しかも封印に取り込まれてとか言ってるし。


どうやら、この国の歴史は結構いい加減な様だな。


「そう……彼はもういないのね」


魔神帝のカモネギが死んだという言葉に、リリスの表情が沈痛な物へと変わる。

自分を封印した相手だから、この手で殺したかったとか、そういった感じには見えない。

それは親し気な物の死を聞かされたような、そんな悲し気な表情だった。


「ああ、そうそう……お前の愛したカモネギは、最後までお前の事を気にしていたぞ」


「カモネギ……」


二人の話から、どうもリリスとカモネギは良い感じの仲だった事が分る。

じゃあなんで封印なんかしてんだよって思わなくもないが、今現状、魔神帝に操られている彼女を見ればその理由は明白だ。


当時もきっと、操られたのだろう。

そして殺さず何とかする方法が封印だった。


これは大きなヒントではあるが、残念ながら俺には実行できない。

一時的に相手を閉じ込める結界ならいざ知らず、長期封鎖を主とする封印の様な力はないからだ。


「私の娘とカモネギは恋仲だった。だから私を裏切り、人間に味方しようとしたのだ。だが、リリスは私の命令には逆らえない……そのためカモネギは娘を封印したのだ。そしてカモネギの封印の中で、奴が戻って来るのを娘は待ち続けた。いつか必ず再会できると信じて。泣ける話だとは思わんか?」


娘の悲恋。

魔神帝が態々それを俺に説明したのは、同情を引き出すためだろう。


――相手への思い入れが強くなれば強くなる程、手出しが出来なくなる。


それを狙っての行動。

本当にムカつく奴である。


「封印から出た時点で……彼の事はわかっていたわ。でも、信じたくなかった……ひょっとしたらって、思いたかった。だから探さなかった……けど……」


リリスの瞳から涙が零れ落ちる。

正確には、精神体である彼女は涙を流せない。

だが俺にはそれがハッキリと見えたのだ。


「ボッチ―……私を殺して。彼の居ない世界で……生きていく意味なんてないもの。それに……貴方に迷惑もかけたくないしね」


「散々迷惑かけといてよく言うぜ」


今更も良い所である。


「死んだら、もう漫画は見れないんだぜ?」


「それは……ちょっと残念ね。そこは来世に期待するわ。まあ、そんな物があればだけどね」


リリスが弱弱しく笑う。

その顔からは、一切の迷いを感じない


「来世か……まあそんな物があるなら、次はまともな親父の元に生まれて来いよ」


拳に力を集中させる。


このまま――俺はリリスを殺す。


「ありがとう……ボッチ―」


――ま、ただ単に殺すだけじゃないけどな。


俺の回復は死んだ直後なら、蘇生が効く。

それで何とかできないかと、試てみるつもりだ。

ダメならその時はまた別の手を考えよう。


流石に、本気でリリスを殺すって選択肢はない。


「貴様本気か!?」


俺の殺気に、魔神帝が顔色を変える。

蘇生させるとはいえ、一度は殺す訳だからな。

その殺気は本物だ。

それを感じたためだろう。


「そろそろ子離れしたらどうだ?ダメ親父」


「き……貴様……」


心臓をぶち抜いて、苦しまない様に一撃で……


そう考えた所で、下から超高速で接近する存在に俺は気づく。

視線を下に向けると、小さな人影が此方に近づいて来るのが見えた。

一瞬、女王が目を覚ましてやって来たのかとも思ったが、違う。


人影は、俺のよく知る男の物だった。


「ビート!?」


高速で突っ込んで来たビートは、立ちふさがる様に俺と魔神帝との間に割り込んで来た。

そして叫ぶ――


「待ってくれ墓地君!リリスは魔神帝に操られているだけなんだ!!だから!!!」


――と。


うん、知ってる。

だから邪魔すんな。


ていうか、何でこいつリリスの事知ってんだ?

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