第26話 ぱおーん
「ふ……鼻糞を使い切るまでもなかったな」
周囲では4人の勇者が伸びており、ピクリとも動かない。
鼻糞が勇者に全面勝利した歴史的瞬間である。
「さて、折角の検体だ。徹夜で改良した新魔法を試めさせて貰うとするか」
倒れている勇者達の髪を掴み、引き摺って一か所に集める。
今から俺がお化粧してやるから喜べ。
取り敢えず頭を剃って結界を張っておく。
これはまあ、ただのお約束だ。
男だから正直坊主にしたぐらいじゃどうって事もないだろうし。
本番はここからである。
俺はまず、勇者達の眉を剃り落とす。
「さて、それじゃあ」
カイーナの顔に指を突き、スッと横に動かす。
するとその軌跡が赤色に変化する。
これぞ俺の改良した魔法だ。
効果は指先の触れた範囲に結界を張るという物。
色付きで。
名付けて――『超絶油性ボールペン』だ!
効果は1ヵ月。
塗料や、ファンデーションなんかの粉系を弾くカウンター効果付き。
当然洗ったり、新陳代謝なんかでも落ちない。
命名はともかく結界な訳だしな。
だが俺は優しいので、マスクは付けられる様にしておいてやった。
しばらくは禿マスクで生活するがいい。
俺は顔の左半分に、王の文字を書く。
そして右半分には㐱の字を。
王と㐱が出会うとき、そこには珍が生まれるのだ!
「ふ、我に挑む者には‟珍”あるのみ!」
今の発言に特に意味はない。
何となくだ。
俺は勇者共の顔に、デカデカと真っ赤な珍を描いていく。
「まあ珍と言えば、こっちもだよな」
俺はカイーナのズボンに手をかけ、勢いよく引っ張り下ろした。
「あ、破けちまった。まいいか……」
勢いよくやり過ぎて思いっきりズボンとパンツが破けてしまったが、まあ誤差だ。
気にする必要はない。
「しかし、ちっせぇな」
カイーナのアソコはボーイだった。
それもシャイボーイ。
「こいつよくもこんな股間してて、女生徒にキザったらしくレディーなんて言えたもんだな」
股間のサイズで差別する気はないが、シャイボーイ如きがレディーとか言ってんじゃねぇと、ついつい思ってしまう。
「まあだが安心しろ、カイーナ。俺が大きく見えるようにしてやるからな」
股間にする落書きと言えばあれしかない。
そう、象さんである。
小さな鼻も、象さん印できっと大きく見える筈だ。
「立派な牙も生やして……パオーンって鳴き声もデカデカと入れといてやろう。これで一皮むけた男になったな、カイーナ。礼はいらんぞ」
俺は親指を立てて、爽やかにそう告げる。
ま、実際は剥けてないんですけどね。
「さて、じゃあ他の奴らも」
適当に残りの勇者達のズボンとパンツを引き千切る。
カイーナと一緒に、ラブツリーの裏に隠れていた2人のあそこは至って普通だった。
詰まらん奴らである。
だが――
「ごっつ!」
姿を隠していた長身の男のあそこはワールドクラスだった。
それを見て俺は思わず声を上げる。
アナコンダ。
もしくはリアル象さん。
ランク付けするなら、これは間違いなくSSSクラスだ。
「スゲーな、こいつ。銭湯でこんなのに遭遇したら確実にビビるわ」
ていうか、ズボン履いてた時は普通だったのにどうなってんだ?
魔法かなんかで違和感が出ない様にしてたんだろうか?
「ピンキリってのは、正にこういう事を言うんだろうな」
カイーナのボーイとアナコンダを見比べて、俺はうんうんと頷く。
世の中とは、げに残酷な物である。
「とはいえ、流石にここまでデカいと逆に不便な気もするな」
まあ所詮は他人事。
気にしても仕方がない。
俺は股間に象さんを描き、腹部にはデカ珍と書き込んでおいた。
これがカイーナだと嘘になるが、こいつの場合は看板に偽り無しである。
「ま、こいつらはこれでいいだろ」
ゲンブー家に俺を引き渡すとか。
少し気になる事を言ってはいたが、まあ聞き出す程でもないだろう。
ベヒモスん家がなんかして来る様なら、その時は正面から叩き潰してやればいいだけだしな。
「おっと、そうそう」
そのまま帰ろうとして、最初にドロップキックした女生徒の事を思い出す。
「仲間外れは良くないからな。つっても、流石に女子の股間に悪戯はあれだからそっちは見逃してやろう」
俺はフェミニストだからな。
という訳で、気絶している女生徒の頭を手早く丸める。
もう何度もやっているせいか、我ながらこの作業は手慣れたものだ。
そして眉毛を剃り、顏にデカデカと赤字で満と書き込む。
「女子に珍はついてないからな」
特別仕様である。
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