第17話 3分の1
理事長を脅して2日後の放課後、用意が出来たとの事で早速俺は講堂の様な場所に向かう。
俺の登場はサプライズなので、道中姿が見られない様に体を透明化しておいた。
気配も断っているので、何らかの特殊スキルなんなりを使っていない限りバレる事はないだろう。
楽し気に談笑しながら講堂に向かっている女生徒を見ながら思う。
この後酷い目に合うのにのん気な奴らだ、と。
ドMかな?
まあ知らないだけな訳だが。
知らぬが仏とは、正にこういう事を言うのだろう。
「ん?」
講堂に着いた俺は誰にも気づかれる事無く中に入り込み、壇上の袖に居た理事長の肩を叩いた。
「なんじゃ?」
俺の姿が見えていないせいか、理事長は不思議そうな顔で背後をキョロキョロと見回す。
賢者とか呼ばれてる癖に、本当に大した事のない爺だ。
「俺だ」
「ひぃっ……へぁ?あ!これは墓地様!」
姿を現してやると、理事長が腰を抜かしてその場に尻もちをついた。
周りの奴らもぎょっとした表情で俺の方を見る。
この場にいるのは全員、理事長室で呪いを施した奴らだ。
但し顔面をぶん殴った女は見当たらない。
呪いをかけていないので俺の行動を妨害する可能性があるから、今回の催しからは外されたのだろう。
「名簿を見せてくれ」
「はい、わかりました」
理事長が慌てて立ち上がり、テーブルに置いてあった紙束を持って来る。
俺はそれにざっと目を通す。
神の力で色々と弄られて強化されているので、一瞬で書いてある物が頭の中に入って来る。
「九十六人とか、学園の生徒のほぼ三分の一じゃねぇか」
この学園は20年に一度、勇者召喚のタイミングでのみ生徒を募集する。
そのため学生は全員同級生で――まあ同級生と言っても、15歳から18歳までと年齢は多少はばらつくが――その数は少なめの300名ちょっとしかいない。
学園全体の三分の一に嫌われるとか、やるな俺。
逆にワクワクして来た。
「今日一日で生徒の三分の一もぶっ飛ばせるとか、近年稀にみる一大イベントだぜ」
壇上の袖から覗く様に、ちらっと講堂内を見る。
講堂には綺麗に椅子――普通の学校で使うようなパイプ椅子ではなく、木でできたしっかりした物――が並べられており、その席の大半が既に埋まっていた。
「開始までは?」
「後5分程でございます」
現在席についているのは七十名強。
残り5分で、二十名が駆け込んで来るとは到底思えない。
「ボイコットする奴もいそうだな」
署名の中にはベヒモスの名もあるが、席についているのは奴の取り巻きだけで、本人の姿はない。
まあ4大家門や大貴族あたりになると、取り巻き連中を送るだけで、態々自分の足を運んだりはしないのだろう。
「しょうがないな。来なかった奴は直接俺が出向いて、個別レッスンしてやるとするか」
手間をかけさせられた分、きつめに。
「あの……墓地様、本当にやられるのですか?学園に通っているのは、その殆どが貴族の子女の方々です。彼女達に手を出せば……我々も墓地様もただでは済まないと申しましょうか……」
男の一人が、おどおどしながら俺に意見して来る。
確かこいつは俺の肩を掴んで来たカスだったな。
「報復してきたら全部返り討ちにするだけだ」
今の俺にはその力がある。
全く問題ない。
俺に協力した理事長達はどうなるかだって?
知るか。
別にこいつらは部下でも手下でもないからな。
俺が下す命令は、全てやった事に対する償いでしかないのだ。
なので態々保護してやる義理はない。
自分の身は勝手に自分で守れ。
「次に同じ事を聞いてきたら、裏切りって判断するぜ。死にたきゃいくらでも尋ねて来い」
「……」
俺の一言でその場の人間は口を噤む。
そして開始時間が訪れた。
そう、死刑執行の。




